Takaのエンタメ街道

一生を映画に捧ぐと決めたTakaが主に映画・テレビ・音楽について書くブログです。

#2021年映画ベスト10 を考えてみる

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時は2021年、コロナから完全に逃げ切れることもなく、全ての物事において清々しくやりきった感覚もなく、年が過ぎようとしている今日この頃を過ごしている筆者であります…さあ、今年もやってきました。その年に見た映画のベストを(勝手に)発表する企画です。

今年観た新作映画は67本。昨年が43本だったので、かなり増やしましたね…大学生の金銭事情(パンフレットを作品で必ず購入していることも加味すれば)を考えればかなり頑張ったほうだと勝手に思っています。

ただ、今月末に観ようとしていた呪術廻戦やらキングスマンは残念ながら年内に見れず、おそらく個人的に好みでありそうな「プロミシング・ヤング・ウーマン」も観れず、さらにはここ最近さらに熱を帯びている「ドライブ・マイ・カー」も3時間の映画という億劫さを言い訳に年内に観れず…まあ、来年、観れる映画館を知っているので、1月までには同じく濱口竜介監督の「偶然と想像」とセットで観れるかな…とは計画中。あとは「スパイダーマン」の新作に世界中が熱狂の渦にある中で日本は年内に観れないのもなんか悔しいですよね…2021年の映画のベストの枠を空けたいくらいだわ、それくらいの作品でしょ?まあ、ということでここでは2021年12月31日現在のランキングとして出したいと思います。もしかしたら、先程挙げた見逃した作品を1月までに観て、ランキングを変えることもあるかもしれませんが、そこまで大きく変わらないはず…と願い、ランキング発表していくぞ。

 

 

1.勝手にあげたいで賞

今年も開催。個人的にこれ良かったと思うものに勝手にあげるこのコーナー。今回はこうなりました。

 

・ベスト・アクター

「すばらしき世界」役所広司

孤狼の血 LEVEL2」「空白」松坂桃李

孤狼の血 LEVEL2」鈴木亮平

浅草キッド柳楽優弥

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」ベネディクト・カンバーバッチ

役所広司鈴木亮平はもうその演技力は安定すぎて作品を食ってしまうような存在だと思ってますが、今回も見事だった。また、松坂桃李は2作品での演技が見事に対照的でありながら、芯がしっかりしている。柳楽優弥ビートたけし降臨芸も見事だったし(日本アカデミー賞には選考対象外なんだろうな…つくづくツイてない)、ベネディクト・カンバーバッチの圧力は物語にのめり込ませる魔力を放っていた。

・ベスト・サポート

「すばらしき世界」「あの頃。」仲野太賀

助演という角度で見ると、今年は仲野太賀の演技が光った年ではなかろうか?「すばらしき世界」、「あの頃。」と連続で銭湯シーンで演じてみせ、「あの頃。」では見事な土下座シーンを魅せた。個人的にはテレビドラマ「コントが始まる」を含めての勝手にあげたいで賞だ。

・ベスト・カメオ

「オールド」M・ナイト・シャマラン

「フリー・ガイ」「ドント・ルック・アップ」クリス・エヴァンス

何の役かは言うとネタバレになるので書けないが、このカメオ出演が面白かった!のはこの2人。「オールド」は監督本人が出て、実は…というメカニズムがいかに“映画”らしいといえる出演だったし、クリス・エヴァンスキャプテン・アメリカというイメージを利用した2作品へのカメオ出演は仕事を分かってらっしゃる…

・ベスト・ニューカマー

「キャラクター」Fukase

「ベイビーわるきゅーれ」阪元裕吾監督

「由宇子の天秤」春本雄二郎監督

SEKAI NO OWARIFukaseさんとは思えない、いや、あれはアーティストだからできる殺人鬼役だったのかな…という演技経験0とは思えない殺人鬼役を見事に演じたことを評価したいし、阪元裕吾監督と春本雄二郎監督は今後の活躍、価値観のアップデートに大いに期待できると思います。

・ベスト・コンビ

「ベイビーわるきゅーれ」ちさと&まひろ(高石あかり、伊澤彩織)

「ラストナイト・イン・ソーホー」エロイーズ&サンディ(トーマシン・マッケンジー、アニャ・テイラー=ジョイ)

今年はこの2作品のコンビが良かった。「ベイビーわるきゅーれ」のアクションはキレキレ/日常のゆるゆるさ、「ラストナイト・イン・ソーホー」の表裏一体さ、見事だった…「ベイビーわるきゅーれ」に関しては続編も決まったらしく、この二面性をまた味わえる日が来ると思うと待ち遠しいものもある。

 

・ベスト・アンサンブル

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

「ドント・ルック・アップ」

アンサンブル演技が見事だったのはNETFLIX映画のこの2作品。豪華キャストを起用しながら、全くその役者たちを無駄にしない、磨き上げられた演技を魅せる作品はこの賞をあげる…そういうことだ。

・ベスト・クリエイティブ

「花束みたいな恋をした」坂元裕二

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」庵野秀明鶴巻和哉中山勝一前田真宏

「イン・ザ・ハイツ」「Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!」「ミラベルと魔法だらけの家」リン=マニュエル・ミラン

クリエイティブを感じたのはこの3人。坂元裕二の脚本力にはやられる。しばらく脚本休止期間に入っていたが、「花束みたいな恋をした」と「大豆田とわ子と三人の元夫」を引っ提げて帰ってきた2021年は最高だったし(恋愛をベタベタしたかったのだろうか…)、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の完結編だからといって妥協をしないエポックメイキングは評価するべきだし、何といっても今年はミュージカル映画の大量生産だった年にリン=マニュエル・ミランダの名をここまで聞くことになろうとは…思ってもいなかったので、今年は勝手にリン=マニュエル・ミランダの年、そう呼びたいくらいでした。

・ベスト・リバイバル

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q EVANGELION:3.333」

「アレックス STRAIGHT CUT」

今年もリバイバル上映を9本ほど観させていただいたが、何よりエヴァの旧劇場版をスクリーンで観る体験をできたことはなかなか大きかったように思う。もちろん、エヴァQのIMAX上映もだ。ギャスパー・ノエの「アレックス」を時間軸を元のルートにした再編集版も現代に訴えかけるものは多かったように思う。

・ベスト・ソング

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「VOYAGER〜日付のない墓標」「One Last Kiss」 「Beautiful World (Da Capo Version)」

「キャラクター」「character」

シン・エヴァのラストに松任谷由実の「さよならジュピター」のテーマソングを流して完結するとは思わなかったし、さらには宇多田ヒカルの「Beautiful World」をバックに「終結」と出たときは新劇場版というシリーズの重みを感じてしまった。「Da Capo Version」はオリジナル版では表現できない年齢の重み、子の誕生、母の死を経験した宇多田ヒカルの歌声とメロディーだと思うと同時にエヴァの静かなる墓標の礎を築いたと思う。

また、「character」はYaffleのサウンドにRin音とずっと真夜中でいいのに。のACAねのリリックが共鳴する主題歌は近年の邦画主題歌の中でもかなりの出来だと勝手に思ってます。

・ベスト・サントラ

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

「イン・ザ・ハイツ」

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

鷺巣詩郎エヴァ音楽を評価できるのももうないだろうからここで評価をしておきたい。特にオープニングのあの壮大なメロディーはエヴァに新たな息吹を吹き込んだようにも思った。先ほども書いたようにリン=マニュエル・ミランダの年とも言える今年は「イン・ザ・ハイツ」のサントラで評価を。また、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のジョニー・グリーンウッドの音楽の力は作品の魅力を掻き立たせてくれたように思う。

・ベスト・オープニング

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

先ほども書いたように↓の曲が流れながらの荒廃した街をシンジ、アスカ、レイがそれぞれ歩くこのオープニングシーンは従来のエヴァの規模を超えるものを提示させる予感を与える良いオープニングだったと思う。

・ベスト・シーン

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」ゲンドウ補完計画/アスカとシンジの別れ

「フリー・ガイ」ガイvsデュード

「シン・エヴァ」からはゲンドウとアスカ、それぞれの独白を選出。やはり、作品としてゲンドウがここまで自身の過去について自らの口で話すような描写があったことに拍手したいし、アスカとあの場所で最後のシーンとするのはなんか救われた…って感じがした。「フリー・ガイ」に関してはディズニーに買収されたことを大いに活かし、皆が興奮したあのシーンを。

・ベスト・エンディング

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

るろうに剣心 最終章 The Beginning」

「アナザーラウンド」

「由宇子の天秤」

「シン・エヴァ」がエヴァを見事に終焉させたことにこの賞をあげるのはもちろんだが、実写版るろ剣の最後のあの画はもちろんのこと、あそこから第1作へと繋がる円環構造は日本の漫画実写映画がとうとうここまで辿り着いたという密かな勝利でもあった。

「アナザーラウンド」のマッツのダンスも最高だし、「由宇子の天秤」のラストの音楽が何も入らないエンドロールに考えるものもあった。

・ベスト・映画ニュース

「シン・仮面ライダー」制作決定!

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が100億円を突破!

 

今年は庵野秀明関連のニュース2つを。やはり、「シン・エヴァ」の公開から1ヶ月で監督の新作が仮面ライダーでしたとなったときは腰を抜かしそうになったし、再来年の公開に期待を膨らませる。もちろん、「シン・エヴァ」が100億を突破したのも嬉しいニュース。改めて作品の力を実感したものです。

・ベスト・トレイラー

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ」

 

マトリックス レザレクションズ」

 

今年はこの3作品を。「シン・エヴァ」は相変わらず作品のここを見せる/見せないの采配が上手いし、「G.I.ジョー」のアニメのオープニング風予告は映画館で観ようと思わせてくれた予告でした(じゃなかったら配信でいいや…とかなっていた)。マトリックスは正直、この予告を映画館で何回も観てるときがピークかもしれない…ていうか、インタラクティブ・トレーラーの仕様の方が本作より全然興奮してしまっている自分がいる…

・ベスト・パンフレット

「花束みたいな恋をした」

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

ガメラ3部作

映画を観た後のパンフレットに必要なことは自分で気づかなかったこと/分からなかったことの補完と後に観たときにその作品の状況を思い出すためにあると思う。その点ではこの3作品のパンフレットは良かったように思う。特に「花束みたいな恋をした」のカルチャー用語解説はかなり網羅されており、副読書としては完璧だ…とは思った。表紙も見事。

・ナイス宣伝賞

「アオラレ」アオってんじゃねぇ!

クソタイトルだとか言われているこの作品もラッセル・クロウ本人が「アオってんじゃねぇ!」と言わせたことは宣伝として面白がすぎるぜ…とは思った。おかげで作品観ましたから。宣伝効果はあった。

・名誉賞

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」庵野秀明

「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」ダニエル・クレイグ

エヴァの完結とダニエル・クレイグジェームズ・ボンドの卒業に餞を。お疲れさまです…

 

2.次点

さて、ランキングに行く前に惜しくもベスト10に入らなかった次点を10本。

KCIA 南山の部長たち

韓国の朴正煕大統領が暗殺された事件を描いたポリティカルサスペンス。イ・ビョンホンの闇深さが良く、まるで織田信長明智光秀による本能寺の変を見せられているような攻防で面白い…他の方もベスト10に入れてる人も多くて、その面白さを再認識。

・騙し絵の牙 

 

大泉洋に当て書きした小説を大泉洋主演で実写映画化した作品。宣伝は「あなたは騙される」というよくある話にしているが、出版業界の仁義なき戦い、策略を描いた作品。狭まる業界の中で何を仕掛けるかの面白さが良い。

唐人街探偵 東京MISSION

これをベスト!って言っている人、なかなかいないと思うんですけど、私はやられた…と思いました。娯楽作品の基礎を出来ずに応用に突っ走る作品もある中でこの作品は基礎の土台を固めに固め、日本の東京という舞台をフルパワーに活かし、事件を解決していくという「世界よ、娯楽はこうやるんだよ。」と見せつける様はやられた…名探偵コナンとかマジでこれ見て、改めてコナンでやるべきことを考えるべきなのでは?とも思った。

イン・ザ・ハイツ

リン=マニュエル・ミランダの年!ということで選んだのはこの作品。ワシントンハイツに暮らす人々の夢を描いたミュージカル。歌の力の凄さを感じた一作だ。

孤狼の血 LEVEL2

 

松坂桃李の狂犬ぶりが倍増する中で放たれる鈴木亮平の暴走。バイオレンスをマシマシに、物語は東映ヤクザものに韓国ノワールを混ぜ合わせ、新時代のヤクザ映画の誕生を高らかに宣言した。

サマー・オブ・ソウル (あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)

 

ウッドストックが開催された1969年の夏に行われたもうひとつの音楽フェスティバル「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」に焦点を当てたドキュメンタリー。1969年という時代の転換点に黒人カルチャーのフェスは何を残したのか。50年の時を経て蘇る映像は見事だった。

アナザーラウンド

「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論を証明するために酒を飲みまくる映画。そして、酒によって失うものを描いた映画。そして、マッツ・ミケルセンの気持ち良いダンスを見届ける映画でもある。

DUNE/デューン 砂の惑星

 

様々な作品に影響を与えた「砂の惑星」をドゥニ・ヴィルヌーヴが映像化した作品。その難題でさえもドゥニはまるで軽々と答えを出したかのように映像で魅せてくる。ただ、続編がどうなるかによっては評価が変わるかも…ってことで次点。

・エターナルズ

MCUで「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督がメガホンを取ると聞いて、恐る恐る観に行ったら、すごかった。人類の歴史にエターナルズは関わっており、そのエターナルズが人類の危機のために再び集結する。150分あってもその物語のボリュームが描ききれてないのもまだまだ物語を話す余剰があるのですね…

・パワー・オブ・ザ・ドッグ

ジェーン・カンピオン監督の久々の作品。全編を包み込む緊張感と嫌な微笑みが終始背後から感じる雰囲気が絶妙な一作。

 

というわけで、以上、次点の10作品でした。

 

3.2021年映画ベスト10

さあ、お待たせしました。いよいよトップ10の発表。果たしてどんな作品をトップにしたのか…

ちなみに過去のトップ10の一覧はご覧の通り…

第10位

ドント・ルック・アップ

 

分断、格差、SNS、嘲笑…2021年の社会状況が生み出してしまった彗星衝突に揺れるディザスター映画。最後の最後までめちゃくちゃ笑えて、めちゃくちゃ笑えないアダム・マッケイ監督のシナリオはさらに磨きがかかり、レオナルド・ディカプリオの熱演が光る一作。

第9位

ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結

 

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」もどきを作り大失敗した前作から5年。じゃあ、作ったジェームズ・ガン本人を呼べば面白くなるのでは?という誰もが考えそうなことをワーナーが本気で実現させた結果、前作の何百倍も面白い傑作が誕生した。それぞれのキャラ設定、中心へと攻めるという分かりやすい舞台設定、怪獣の暴走、楽曲のセンス、R指定なのでお構いなしのグロ描写…スーサイド・スクワッドで描かなければならないことをジェームズ・ガンのセンスによって光らせた千載一遇の傑作が誕生した。

第8位

由宇子の天秤

 

女子高生のいじめ自殺事件のドキュメンタリーを担当する由宇子が父の学習塾で起きた事件によって様々な選択を迫られるドラマ。揺らぎ、答えの出ない正義に152分、由宇子も観客も心を頭を掻き回される。

第7位

空白

 

こちらも「由宇子の天秤」と同じく、事件から正義が揺らぐ一作(セットで観て欲しいレベル)。女子中学生の万引きを追いかけた先で起こる交通事故から起こる父親とスーパーの店長の激突、そして、誰も救われない正義の衝突が始まる。「ヒメアノ〜ル」の吉田恵輔監督による終始救われるかハラハラさせる物語に古田新太松坂桃李がぶつかり合う。松坂桃李に関しては「孤狼の血」と同じ役者ですか?という力も相まって本当に素晴らしい…

第6位

アイの歌声を聴かせて

近未来SFアニメ×青春冒険モノ×ミュージカル…吉浦康裕監督の十八番芸にディズニーへのオマージュを含めることで誰もが楽しめるアニメーションが完成した。土屋太鳳、福原遥の声優としての見事と言える一作である。だが、これが映画ファンの中で「ヒットしてない…」と話し草にされてしまう始末…これを機に吉浦康裕監督が評価…されるのだろうか?されて欲しいよね……

第5位

すばらしき世界

刑務所から出所した三上を待ち受ける社会の居づらさ…今年は先程も挙げた「由宇子の天秤」、「空白」など社会に差し伸べられない手、揺らぐ正義を描いた作品は多かったが、この作品のラスト、メッセージ性に敵うものはなかった。役所広司の芝居で作品の力を押し上げた悲喜劇。

第4位

最後の決闘裁判

 

ここまで筆圧の濃いハリウッド映画を久々に観た気がする…カルージュ、ル・グリ、カルージュの妻マルグリットの三者の視点で語られる羅生門スタイルで事件を描き、決闘裁判を観せることで見えてくる序盤とは違う苦み。リドリー・スコットの手腕、ニコール・ホロフセナー、ベン・アフレックマット・デイモンの脚本、マット・デイモンアダム・ドライバー、ジョディ・カマーの演技に唸らされる…同じくリドリー・スコット監督×アダム・ドライバーの「ハウス・オブ・グッチ」にも期待がかかる。

第3位

ラストナイト・イン・ソーホー

60年代への憧れを抱くエロイーズが60年代のサンディと出会うことで始まる楽園に潜む悪夢。トーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー=ジョイを主人公にした見事な映像美、話のミスリード、美術とカメラワークの素晴らしさ…エドガー・ライト監督作の過去作をあまりハマれなかった自分としてはこの作品の出来には監督が遥か先を行く成長を感じた。

第2位

花束みたいな恋をした

2015年から2020年までのカルチャー文脈を活かして描かれる恋の始点から終点。菅田将暉有村架純の恋に興奮したわけじゃない。カルチャーのくっつき、離れで恋を、人間模様を描いたことに猛烈に興奮をしたのだ。そして、何よりこの作品のおかげでAwesome City Clubが紅白出場まで上り詰め(インスパイアソングの普及もあるね…)、この作品のおかげかどうかは知らないが、天竺鼠をよくテレビで見かけるようになった(特に瀬下の体張り芸)。「大豆田とわ子と三人の元夫」といい、坂元裕二の脚本、「コントが始まる」といい、菅田将暉×有村架純の演技力の素晴らしさを改めて知った。

第1位

シン・エヴァンゲリオン劇場版

2021年、それは自分にとってはエヴァ終結を見届けたことが最大のトピックであり、それは同時にエヴァを含め、東京五輪の開閉会式問題、マトリックスの復活と平成、90年代(世紀末)カルチャーの落とし前でもあったのではないか?と感じる。そして、その落とし前、折り合いをつけるためにはエヴァQからは8年、TVシリーズからは四半世紀の時が必要であったということである。

 

ということでトップ10はこのようになりました。いかがでしょうか?

⑩ドント・ルック・アップ

⑨ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結

⑧由宇子の天秤

⑦空白

⑥アイの歌声を聴かせて

⑤すばらしき世界

④最後の決闘裁判

③ラストナイト・イン・ソーホー

②花束みたいな恋をした

①シン・エヴァンゲリオン劇場版

 

4.総評

ということで今年のベスト10を出したところで総括を。今年、映画を観てきて、一番感じたのは邦画の傑作が非常に多いことでした。メジャー、インディーズ問わずにここまで良作が誕生したのはないかもしれない。ベスト10に挙げてないだけでこれも入れたい!と思わせてくれる邦画が多かったことは役者、スタッフの今後のさらなる成長に期待したいな…と思わせてくれる一年でした。また、今年は音楽の力が強い一年でもあったのかな…と思いました。ベスト10に入れた「アイの歌声を聴かせて」はもちろん、次点の「イン・ザ・ハイツ」や「サマー・オブ・ソウル」、選出はしませんでしたが、「アメリカン・ユートピア」や「竜とそばかすの姫」も音楽、ミュージカル映画でした。また、今年公開はされなかったものの、スピルバーグが「ウエスト・サイド・ストーリー」を、レオス・カラックススパークルズで音楽映画を描いたのも印象的でした。様々なクリエイターが音楽の力をいつも以上に活かした年でもあったのかな…と思いました。

さて、来年はどんな映画に出会えるやら。個人的にはサム・ライミMCU参戦も期待したいし、ジュラシック・ワールドがどんな世界を見せてくれるか、スパイダーバースとアバターの続編もありますし、邦画では「大怪獣のあとしまつ」や「シン・ウルトラマン」といった特撮作品もあれば、新海誠湯浅政明の新作も公開予定だから楽しみではあります。来年はストリーミングの作品も観れるようにしていきたい…ってのも目標にしつつ、締めさせていただきます。

 

ここまで読んでくださってありがとうございました。それでは良いお年をお迎えください。

<週刊興行批評>いよいよ「名探偵コナン 緋色の弾丸」が公開!公開規模は鬼滅超え!?

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またまた1ヶ月も更新途絶えてしまいました。ですが、その分、記事3本同時更新です。

今回はいよいよ公開された「名探偵コナン 緋色の弾丸」の公開規模について書いていきます。

 

 

1.先週末のランキング

まずは、先週末のランキングを見てみましょう。

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1位は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」。土日2日間で動員16万1000人、興収2億6500万円をあげた。4月11日には新宿バルト9において、シリーズ初となる庵野秀明総監督ら監督陣と、碇シンジ役の緒方恵美によるによる舞台挨拶が行われ、全国328の劇場に同時中継された。累計では動員484万人、興収74.2億円を突破。

2位は「劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班」。土日2日間で動員6万7000人、興収9200万円をあげ、累計で動員32万7000人、興収4億3700万円をあげた。

3位は「モンスターハンター」。累計では動員64万人、興収7億円を突破している。

4位は「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」。累計は動員2869万人、興収396億円を突破。400億円突破まであと4億円足らずとなっている。

5位は「奥様は、取り扱い注意」。累計で動員68万1000人、興収8億6900万円を突破。

6位は「騙し絵の牙」。累計で動員28万7000人、興収3億7500万円を突破。

7位は「トムとジェリー」。累計で動員50万1600人、興収6億900万円を突破。

8位は「花束みたいな恋をした」。累計で動員265万人、興収35億円を突破。

9位は「映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!」。

10位は初登場21ブリッジ」。累計興収は2億8500万円を突破した。

ザ・スイッチ」は惜しくも圏外のスタートとなった。

 

2.いよいよ公開!「名探偵コナン 緋色の弾丸」

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さて、いよいよ「名探偵コナン 緋色の弾丸」の公開が開始した。本作は人気キャラクターの一人である赤井秀一ら赤井ファミリーを主軸にした作品である。元々は昨年の同時期に公開を予定していたが、コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言の影響による映画館の閉館が重なり、公開を延期。公開を1年延期して、満を辞しての公開となった。

公開を延期した分、宣伝にも力が入った。2月には赤井ファミリーに焦点を当てた「緋色の不在証明」を公開。こちらは3週間限定公開が好評により、公開延長。興収は10億円を超えた。

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さらには、公開初日からIMAX、4D、ドルビーシネマといった特殊上映も同時公開。


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4Dは過去作では公開から数ヶ月後の公開する形となっていたが、初日から上映。なお、IMAXとドルビーシネマは今回が初めてである。

・公開規模は「鬼滅の刃」「シン・エヴァ」超え?

さて、今回も「鬼滅の刃」、「シン・エヴァ」での調査と同様に東宝の上映劇場一覧に載せられてる劇場すべての初日の上映スケジュールを調べてみました。

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上映館数は鬼滅が365館、シン・エヴァが346館なのに対し、372館。上映回数も3日間で25000回以上の上映を展開。鬼滅が3日間で23500回以上だったので、それを上回っています(「シン・エヴァ」は緊急事態宣言の影響もあり、鬼滅の7割ほどしか上映できなかったので、コナンとの比較では初日で約1.5倍の上映量で上回る)。

ちなみに、3日間で100回以上上映する劇場は23館。

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一番上映回数が多いのはイオンシネマ港北ニュータウン。なんと、3日間で180回。しかも、初日は65回上映。初回の7時台の上映は全スクリーンをコナンに充てる暴挙とも言える状態に。それ以降、6〜7スクリーンをコナンに充て、深夜1時台の上映までつづくというもはやどれだけコナンを上映できるか競争に発展してる事態となった(しかも、港北ニュータウンIMAXや4Dなどの特殊上映が一切ない状態でここまでの体制を整えたのだからすごい)。

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なお、前作「紺青の拳」でも一番多いところは3日間で87回、「鬼滅の刃」でも一番多いところは3日間で124回でした。 それよりも多くやる劇場がいるという…

鬼滅の刃」以降、大作には各上映館が複数のスクリーンに跨る上映方式がより顕著になったイメージがあるが、本作においてはその力をより活かした形となった。今後もこういった形が増えていくのだろうが、こうした流れは他作品においてはなかなか上映が割けなくて迷惑とも言える状況であることも覚えておきたい。先々週末の新作が16本、先週末の新作が17本なのに対し、今週末は10本しか公開されないことからもコナンが来る前に上映をしようと考える流れがあり、コナンは毎年のように新作を出す流れからも今後この流れがより増えていくことも考えるとちょっとここらへんで抑えていただきたいものとも思うのである…

・興収はどうなる?

さて、シリーズでも最大規模の上映となる本作。近年ではGWに訪れる日本映画のビッグイベントとまで言える本シリーズの興行を見ることは重要なことである。

2019年に公開された前作「紺青の拳」は土日2日間で動員114万5000人、興収14億6400万円、初日からの3日間だと、動員145万8000人、興収18億8600万円という数字を叩き出した。

まずはこれを超えることはほぼ確実と考える。上映回数も多いことやこれまでのシリーズではなかったIMAXや4Dといった特殊上映の同時公開があり、これが上映回数の全体の1割を占めるなど興収において大いに貢献することが考えられるからだ。何よりファン層も強く、これを見越しての特殊上映限定の入場者特典を用意するまでだ。日本映画で初日からここまでの特殊上映をやるスタイルはなかったこともあり、東宝としても大いに自信を覗かせていると言っていいだろう。なので、前作のオープニング興収は超えるだろう。

ここで考えたいのは3日間の興収が20億円を超えるか否かである。決して無理ではない数字であり、前作を超えることを考えると、20億円台前半を叩き出せれば大成功と言える。鬼滅、シン・エヴァ、コナンと数字の感覚が麻痺してきそうだが、3日間で20億円稼ぎ出すだけでもすごいことだ。何せ、アナ雪2やパイレーツ・オブ・カリビアンでさえも、3日間で19億円がせいぜいだったからだ。

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最後に。先程、日本映画界のビッグイベントと書いたコナンシリーズではあるが、これまで100億円の壁はなかなか超えられなかった。本作で超えられるか。これは今週末と来週末の成績を見てからじゃないと分からないが(来週末はるろ剣が公開されるため、比率は見ておきたいもの)、充分に余地はある体制を持っているので、あとはGWにどこまで集客できるかだ。そう、集客できるかなのだ。今、「まん延防止等重点措置」が宮城、大阪、兵庫、東京、沖縄に発令されており、今後、埼玉、千葉、神奈川、愛知にも発令される。この措置は時短依頼を行える効果もある。あくまでも任意ではあるが、GWという繁盛期においては良くはないニュースであり、まだまだ鑑賞にハードルを持つ観客が出る可能性も否定できない。

ただ、こうした効果を観客や映画館側がどう判断するかの余地は大いに残っているため、この勢いでいけば、100億を突破するような気は自分はする。

まずは今週末の数字を見届けたいところだ。感染者が良い感じに収まってくれたら良いのだが…

3.今週末の注目作 

名探偵コナン 緋色の弾丸」(4月16日公開)

青山剛昌の人気コミックをアニメ化した大ヒットシリーズ「名探偵コナン」の劇場版24作目。世界最大のスポーツの祭典「WSG」と、世界初の「真空超伝導リニア」の開発という2つのキーワードを軸に、前代未聞の事件に挑む江戸川コナンの活躍を描く。FBI捜査官・赤井秀一が、シリーズ20作目「純黒の悪夢」以来に劇場版に登場。さらに、赤井の弟でプロ棋士の羽田秀吉、女子高生探偵の妹・世良真純、3人の母親で“領域外の妹”と名乗る謎の女性メアリーも登場し、“赤井ファミリー”が集結する。

4年に一度開かれる世界最大のスポーツの祭典「WSG ワールド・スポーツ・ゲームス」が東京で開催され、その開会式にあわせ、最高時速1000キロを誇る世界初の「真空超電導リニア」を開発することが発表された。しかし、世界の注目を集める中、名だたる大会スポンサーが集うパーティ会場で突如事件が発生し、企業のトップが次々と拉致されてしまう。そして、その裏には事件を監視する赤井秀一と、彼の指令を待つFBIの姿があった。江戸川コナンは、今回の事件と、15年前にアメリカのボストンで起きた「WSG連続拉致事件」との関連性を疑うが……。

戦場のメリークリスマス 4K修復版」(4月16日公開)

大島渚監督が、第2次世界大戦中のジャワの日本軍捕虜収容所を舞台に、極限状況に置かれた人間たちの相克を描いた異色のヒューマンドラマ。日本軍のエリート士官ヨノイと連合軍捕虜セリアズ少佐の愛情めいた関係を中心に、日本軍人と西洋人捕虜との関係が興味深く描かれる。デビッド・ボウイ坂本龍一ビートたけしといった国内外の異色スターたちが共演。坂本の音楽も高い評価を獲得し、テーマ曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」は誰もが知る名曲となった。デジタル素材に修復した「4K修復版」でリバイバル公開。

AVA/エヴァ」(4月16日公開) (PG12)

ゼロ・ダーク・サーティ」「女神の見えざる手」のジェシカ・チャステインが組織に刃向かう暗殺者を演じたアクション。

完璧な容姿と知性、圧倒的な戦闘能力を持つ暗殺者エヴァ。彼女は完璧に任務をこなしながらも常に「なぜ標的たちは殺されるのだろうか」と自問自答を繰り返していた。ある日、エヴァは極秘の潜入任務に臨むが、組織から事前に与えられていた情報の誤りから、エヴァの正体に気づいた敵との銃撃戦へと突入してしまう。なんとか生き延びたエヴァは、自分を陥れようとしている存在を疑い、次第に組織に対して激しい不信感を抱くようになる。組織にとって危険因子となった彼女を始末しようとする殺し屋サイモンの魔の手がエヴァに迫っていた。

エヴァ役をジェシカ・チャステインが演じるほか、ジョン・マルコビッチコリン・ファレルらが脇を固める。監督は、チャステインがアカデミー助演女優賞にノミネートされた「ヘルプ 心がつなぐストーリー」のテイト・テイラー

約束の宇宙」(4月16日公開)

007 カジノ・ロワイヤル」「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」のエヴァ・グリーンが主演を務め、シングルマザーの宇宙飛行士と幼い娘の愛と絆を描いたドラマ。

欧州宇宙機関ESA)で日々訓練に励むフランス人宇宙飛行士サラ。物理学者の夫と離婚し7歳の娘ステラと2人で暮らす彼女は、「Proxima(プロキシマ)」と名付けられたミッションのクルーに選ばれる。長年の夢が実現し喜ぶサラだったが、宇宙へ旅立てば娘と約1年もの間、離れ離れになってしまう。過酷な訓練の合間に、サラはステラと「打ち上げ前に一緒にロケットを見る」という約束を交わすが……。

共演に「クラッシュ」のマット・ディロン、「ありがとう、トニ・エルドマン」のサンドラ・フラー。「博士と私の危険な関係」のアリス・ウィンクールが監督・脚本を手がけ、坂本龍一が音楽を担当。

ガメラ3 邪神覚醒 4K HDR」(4月16日公開)

大映による特撮怪獣映画「大怪獣ガメラ」を復活させた「平成ガメラ」3部作の第3作。「ガメラが人類の敵だったら」というテーマのもと、ガメラとギャオスの戦闘による被害で両親を失った少女を主人公に、人口が密集する大都会に怪獣が出現することによる災害を真正面から描いた。

ガメラとギャオスの戦闘で両親を失ったことでガメラを憎んでいる少女・比良坂綾奈は、ある洞窟で謎の生物を発見し、「イリス」と名付けてかわいがっていた。一方、東京に2匹のギャオスが飛来し、ガメラがこれを撃退するものの甚大な被害が出たことから、政府はギャオス以上にガメラを危険視するようになる。やがて、綾奈のかわいがっていたイリスがギャオスの変異体であることが判明し……。監督は平成ガメラ3部作ですべてでメガホンをとった金子修介特技監督も同様に前2作から引き続き樋口真嗣が務め、当時の最新技術を駆使し、日常の風景が奪われていく惨事を徹底した描写で描いた。

ガメラ55周年記念プロジェクト」の一環として、4Dデジタル復元した「4K HDR版」が全国のドルビーシネマで期間限定上映。

ラブ&モンスターズ」(4月14日NETFLIXにて配信)

メイズ・ランナー』シリーズなどのディラン・オブライエンが主演を務める、アクションアドベンチャー。モンスターの出現によって荒廃した世界を舞台に、離れ離れになっていた高校時代の恋人と再会しようと旅に出る青年を描く。メガホンを取るのは『ファイブ・ウォリアーズ』などのマイケル・マシューズ。ドラマシリーズ「Marvel アイアン・フィスト」などのジェシカ・ヘンウィック、ドラマシリーズ「ウォーキング・デッド」などのマイケル・ルーカーらが出演する。

彼女」(4月15日NETFLIXにて配信)

「さよなら歌舞伎町」「ここは退屈迎えに来て」の廣木隆一監督が、中村珍の漫画「羣青」を原作に、行き場を失った2人の女性の逃避行を描いたロードムービー

裕福な家庭に生まれ育ち、何不自由ない生活を送ってきた永澤レイ。自由気ままに生きているように見える彼女だったが、実は同性愛者であることを家族に言えず生きづらさを感じていた。そんな彼女のもとにある日、高校時代に思いを寄せていた篠田七恵から連絡が来る。10年ぶりの再会に喜ぶレイだったが、夫からのDVで全身あざだらけになった七恵の姿に愕然とする。人生に絶望し死を口にする七恵を救うため、レイは彼女の夫を殺害。自分のために殺人を犯したレイに疎ましさと恐ろしさを感じる七恵と、すべてを受け入れるレイ。行くあてのない2人は、一緒に逃避行の旅に出るが……。

レイを「ノルウェイの森」の水原希子、七恵をロックバンド「ゲスの極み乙女。」のドラマーで女優としても活動するさとうほなみが演じる。

 

4.今回の更新

今週は3回分の記事を同時更新しました。ひとつは「シン・エヴァ」の興収、もうひとつは「モンスターハンター」の日本興収と「ゴジラvsコング」の世界興収について書いております。よろしければご覧ください。 

 

 

 

というわけで、今回は以上。閲覧ありがとうございました。

<週刊興行批評>日本ではモンハン、世界ではゴジラとコングによる獣祭り!だが、結果は…

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またまた1ヶ月も更新途絶えてしまいました。ですが、その分、記事3本同時更新です。

今回は「モンスターハンター」の日本の興収と「ゴジラvsコング」の世界興収を見ていきます。また、「ゴジラvsコング」の劇場/配信の並行公開から見えることとは…?

 

 

1.3月第4週のランキング

まずは、3月第4週のランキングを見てみましょう。

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1位は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」。土日2日間で動員33万人、興収5億2800万円をあげ、3週連続で首位を獲得した。3月27日からは入場者プレゼントを配布、翌28日には24年ぶりとなる舞台挨拶を全国334劇場へ配信するなどのイベントも行われ、累計では動員396万人、興収60.7億円を突破。最終興収53億円を記録した前作「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」を超え、シリーズ最高記録を更新している。

2位は初登場モンスターハンター」。土日2日間で動員16万2000人、興収2億5600万円をあげ、初日から3日間の累計では動員23万人、興収3億6000万円をあげる好スタートを切った。

3位は「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」。土日2日間で動員11万2000人、興収1億7000万円をあげた。入場者特典やドルビーシネマの上映開始、Blu-rayの発売から「終演迫る」の告知も相まって、先週の7位から再浮上。累計では動員2830万人、興収390億円を突破。

4位は初登場騙し絵の牙」。土日2日間で動員8万8000人、興収1億2000万円をあげ、初日から3日間で動員11万9000人、興収1億5900万円をあげた。

5位は「奥様は、取り扱い注意」。累計で動員49万4100人、興収6億3600万円を突破。

6位は初登場ガールズ&パンツァー 最終章 第3話」。

7位は「トムとジェリー」。累計で動員32万7100人、興収4億500万円を突破。

8位は「映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!」。

9位は「花束みたいな恋をした」。

10位は「ブレイブ -群青戦記-」。累計で動員48万7400人、興収6億2200万円を突破。

ノマドランド」は初日から3日間で動員3万9500人、興収5400万円をあげるも、惜しくも圏外のスタートとなった。

 

2.4月第1週のランキング

まずは、4月第1週のランキングを見てみましょう。

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1位は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」。土日2日間で動員19万6000人、興収3億2100万円をあげ、累計では動員451万人、興収68.9億円を突破した

2位は「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」。土日2日間で動員15万3000人、興収2億3700万円をあげ、前週比は、動員で37%増、興収で39%増という驚きの数値に。累計では動員2857万人、興収394億円を突破した。

3位は「モンスターハンター」。土日2日間で動員10万3000人、興収1億6200万円をあげ、累計では動員50万人、興収7億円を突破している。

4位は初登場劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班」。土日2日間で動員10万人、興収1億3800万円をあげた。ドラマファンの女性を中心に集客し、公開から3日間の累計で動員14万3000人、興収1億9300万円をあげるスタートを切った。

5位は「奥様は、取り扱い注意」。累計で動員68万1000人、興収8億6900万円を突破。

6位は「騙し絵の牙」。累計で動員28万7000人、興収3億7500万円を突破。

7位は「トムとジェリー」。累計で動員50万1600人、興収6億900万円を突破。

8位は「映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!」。

9位は「花束みたいな恋をした」。累計で動員265万人、興収35億円を突破。

10位は「ガールズ&パンツァー 最終章 第3話」。累計興収は2億8500万円を突破した。

 

3.興収チェック!「モンスターハンター

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初週末で2位にランクインしたのは「モンスターハンター」。2004年の第1作発売以降シリーズ累計6500万本を売り上げるカプコンの大ヒットゲームシリーズを同じくカプコンの人気ゲームを原作に大ヒットを記録した「バイオハザード」シリーズの主演ミラ・ジョヴォヴィッチ&監督ポール・W・S・アンダーソンがハリウッドで実写映画化したアクションアドベンチャー

本来は昨年の9月4日に日米同時公開予定だったが、コロナ禍で延期。アメリカでは今年の4月23日に公開を予定していたが、昨年の12月18日に前倒しし、公開を済ませていた。これは既に上映規模を持ち直していた中国でのヒットを見越しての公開という意味が含まれており(しかし、とあるシーンの差別的描写により炎上問題を引き起こすわけだが…)、日本ではゲームの新作である「モンスターハンターライズ」を同日に発売することにより、ゲームと映画の相乗効果を期待して、3月26日の公開を決めた。

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過去のミラ・ジョヴォヴィッチポール・W・S・アンダーソンの作品と比較しても実写モンハンは下回った結果となった。過去作の評判が響いたのか、IMAXや4Dといった特殊上映が「シン・エヴァ」に回した結果なのか、同日発売の「モンスターハンターライズ」との相乗効果を宣伝側が期待したが、ゲームファンはゲームに集中し、思ってるより下回った結果なのか、原因は複合的だろう。

本作はハリウッド製作作品ながら(忠実に言うとドイツと中国の力が大きい)、東宝が製作参加しており、力を入れていたが、日本でも、期待された中国でも当たらず、世界興収は製作費である6000万ドルの6割程度しか稼げておらず、コロナ禍や先述した炎上問題もあるとはいえ、興収の観点から言えば期待を下回ったと解釈するほかないだろう。

 

4.興収チェック!「ゴジラvsコング」

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さて、日本が「モンスターハンター」が公開される最中に世界では「ゴジラvsコング」の公開が始まった。

こちらもハリウッド作品ながら、東宝が製作参加した作品であり、2014年の「GODZILLA ゴジラ」、2017年の「キングコング:髑髏島の巨神」、2019年の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」につづくモンスターバースの第4作目となる。

こちらもコロナ禍前は昨年の11月に公開予定だったが、延期。最終的には配給のワーナーによる定額制映像配信サービスの「HBO Max」での1ヶ月限定の見放題配信との並行公開に踏み切った。

公開はアメリカに先行して、中国やインド・香港など世界38市場で公開され、海外オープニング興行成績が1億2310万ドルを記録し、コロナ禍以降最高だった「TENET テネット」の5300万ドルの倍以上を稼ぎだした。

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アメリカでも映画館が再び順次再開されていることもあり、3000館とコロナ禍で最大規模であり、公開されてから5日間で4850万ドル。こちらもコロナ禍以降では最高。「HBO Max」での視聴数もサービス以来最高を記録しており、Win-Winな結果となった。

これはもちろん、こうした映画を映画館の大画面で観たい、このシーンを繰り返し観たいから見放題配信で観るなり、一人一人がそれぞれの場所で観るという多彩な視聴方法が功を奏した結果でもあるだろう。

ワーナーはこの結果から劇場での想定以上の反響によって、劇場と配信での並行公開から劇場優先にする方針に変換する噂があるなどまだ手探りではあるものの、劇場と配信がWin-Winになることに向けては良いニュースであったように思う。

さて、今後のハリウッド映画はサマーシーズンに向けて、昨年を取り返すように作品を用意している。だが、これらの作品の多くが配信サービスでの並行公開が予定されており、劇場にどれだけの効果を与えるか、今年は正念場といったところ。

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なお、「ゴジラvsコング」は日本では5月14日に劇場のみでの公開となっている。思う存分、劇場で楽しもう…と書いておこう。

 

5.今回の更新

今週は3回分の記事を同時更新しました。ひとつは「シン・エヴァ」の興収、もうひとつは「名探偵コナン 緋色の弾丸」の公開規模について書いております。よろしければご覧ください。 

 

 

というわけで、今回は以上。閲覧ありがとうございました。

<週刊興行批評>シン・エヴァが1週間で30億、1ヶ月で70億稼ぐのは必然なのか?

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またまた1ヶ月も更新途絶えてしまいました。ですが、その分、記事3本同時更新です。

今回は「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の興収について振り返りながら、その興収と過去の宣伝展開から考える15年の軌跡を書いていきます。

 

 

1.3月第2週のランキング

まずは、3月第2週のランキングを見てみましょう。

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1位は初登場シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」。土日2日間で動員76万1000人、興収11億7700万円をあげ、初日から7日間の累計では動員219万人、興収33億円を突破。最終興収53億円を記録したシリーズ前作「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」との7日間の比較で動員133.6%、興収145.1%となる大ヒットスタートを切った。

2位は初登場ブレイブ -群青戦記-」。土日2日間で動員11万1000人、興収1億4300万円をあげ、初日からの3日間で動員15万6700人、興収2億300万円をあげた。

3位は「花束みたいな恋をした」。土日2日間で動員8万9000人、興収1億1800万円をあげ、累計で動員220万人、興収29億円を突破。

4位は「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」。累計で動員2800万人、興収386億円を突破。

5位は「名探偵コナン 緋色の不在証明」。累計で動員74万人、興収10億円を突破。

6位は「太陽は動かない」。累計で動員22万4600人、興収3億100万円を突破。

7位は「ラーヤと龍の王国」。累計で動員12万2100人、興収1億5300万円を突破。

8位は「ライアー×ライアー」。累計興収は6億8700万円を突破。

9位は初登場映画 しまじろう しまじろうと そらとぶふね」。

10位は「映画 えんとつ町のプペル」。累計で動員171万人、興収23億6000万円を突破した。

 

2.3月第3週のランキング

まずは、3月第3週のランキングを見てみましょう。

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1位は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」。土日2日間で2位以下を大きく引き離す動員42万3000人、興収6億7900万円をあげ、累計では動員322万人、興収49億円を突破した。

2位は初登場奥様は、取り扱い注意」。土日2日間で動員16万6000人、興収2億2000万円をあげ、TVドラマファンの女性を中心に集客し、初日から3日間の累計では動員22万人、興収2億9600万円をあげるヒットスタートを切った。

3位は初登場トムとジェリー」。土日2日間で動員11万9000人、興収1億5100万円をあげ、初日からの3日間で動員15万3400人、興収1億9300万円をあげた。

4位は初登場映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!」。土日2日間で動員9万6000人、興収1億1500万円をあげた。

5位は「ブレイブ -群青戦記-」。累計で動員36万1000人、興収4億6400万円を突破。

6位は「花束みたいな恋をした」。累計で動員240万人、興収32億円を突破。

7位は「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」。累計で動員2812万人、興収387億円を突破。

8位は「名探偵コナン 緋色の不在証明」。累計で動員80万人、興収11億円を突破。

9位は「ラーヤと龍の王国」。累計で動員17万7300人、興収2億2100万円を突破。

10位は初登場ミナリ」。初日からの3日間で動員3万3100人、興収4500万円をあげた。

 

3.興収チェック!「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

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初週末から1位にランクインしたのは「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。2007年から始まった「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ全4部作、ならびに25年に渡って続いた「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの完結編。

前回、初日の成績が観客動員数53万9623人、興収8億277万4200円という平日の月曜日が初日としては異例のメガヒットスタートを切ったことを取り上げたが、そこから初の週末を迎えた土日2日間で動員76万882人、興収11億7744万5400円を記録。初日から7日間の成績は動員219万4533人、興収33億3842万2400円を記録し、前作「Q」と比較して、動員133.6%、興収145.1%となる大ヒットスタートを切った。

全4作、実に13年以上の月日を要した「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの完結に相応しいスタートを切ったのではないだろうか。

次の週末は動員42万3398人、興収6億7939万200円。累計では動員322万2873人、興収49億3499万6800円を記録。これだけでも充分に大ヒットと言える数字ではあるが、近年の50〜100億円クラスのメガヒット作品と比較するとそれらに匹敵出来るかは難しいと読むデータもある。

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こちらは1週目と2週目の累計興収と週末興収の落差を示したものだ。%が高ければ、落差は低いという計算だ。つまり、「シン・エヴァ」は2度目の週末には半分近く下がってるという計算になる。やはり、多くの人が1週目に来たというのも分かるだろう。だが、あくまでもエヴァシリーズの最高興収は「Q」の53億円である。エヴァの大団円を締め括るには申し分ない数字であることは確かで、最終興収も今後、GWの兼ね合いも考えると「シン・ゴジラ」並みの80億円台に収まるというのが個人的見解だ。

4.「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が1週間で30億円、1ヶ月で70億円稼ぐのは必然なのか?

さて、今回のタイトルにもある通り、初週の1週間で30億円、1ヶ月で70億円という数字を「エヴァ」シリーズとして見たときにこれだけ稼ぐことは何ら不思議ではない、必然だと受け取れる人は何人いるだろうか。個人的には東宝東映という日本の2トップとも言える配給会社が担当に加わり、旧劇とも言える2作品や「序」は20億円前後、「破」でも40億円、「Q」で50億円を稼いだエヴァの完結編を迎えるに当たってはこの数字は熱気を浴びる感覚からしたら驚くことではない。しかし、エヴァらしいと言えばらしいと言える従来の邦画やアニメーションでは挑戦し得ない攻めた(実験的)描写が含まれている点を考えたり、新劇場版が始まった当初のことを考えたら1週間が経過した時点で30億円を稼ぐことはかなりの驚きを持つことも自分としては事実である。

改めて考えると、エヴァは日本のコンテンツを変えた作品でもある。さて、新劇場版では何を変えたのか。個人的には映画館でアニメを観ることがもはやあたりまえが一番にあると考える。

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上の図は青の棒グラフが10億円を稼ぎ出した邦画のうちアニメ映画が占める比率、オレンジの折れ線グラフがその年に公開された60分以上のアニメ映画の本数を新劇場版が始まる前の2年前にあたる2005年から昨年の2020年のグラフである。10億円のアニメ映画の比率こそ年によってまちまちであるが、アニメ映画の本数を見ると15年の間で1.6倍に増えている。もちろん、新海誠監督作やジブリなどもこの間に上映されており、エヴァだけのおかげではない。しかし、この15年の間にアニメのリブートなどを劇場版でやろうとする動きや連作で劇場版をやることの可能性を見せたのはエヴァのおかげであるだろう。

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改めて、製作発表当時の庵野総監督による所信表明を見てみよう。「本来アニメーションを支えるファン層であるべき中高生のアニメ離れが加速していく中、彼らに向けた作品が必要だと感じます。現状のアニメーションの役に少しでも立ちたいと考え、再びこのタイトル作品に触れることを決心しました。」と書かれている。新劇場版が作られた15年を振り返ってみると、エヴァというアニメが一般層に普及していく光景を、アニメを観るということがもはや何ら恥ずかしいものではなくなり、経済が動く事例を多々出せるほどのコンテンツ力になったのではなかろうかと感じる。TVシリーズをリアルタイムで見た人たちが立派に経済を動かす側(マーケティングをする側)になったこともあるが、衣食住に対するコラボを展開したことは大きいだろう。

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そこには自社のみで制作を展開してきたカラーがしっかりと版権管理していたことが功を奏しているとも思います。エヴァのような制作展開は作品の手法、宣伝手法ともにまだまだ一般化になるレベルには到達してないにはせよ、自社の配給、インディーズの配給会社(クロックワークス)にお手伝いした「序」や「破」の頃から東宝東映という日本の二大配給会社を自社とともに配給にしたこの15年の軌跡というものは日本映画史の中でしっかりと語り継がなければならないことであり、こうした手法がさらに日本で産んでくれないかなという夢を自分は抱いている。だからこそ、この興収はこの軌跡を辿ってきた末においては必然なのである。

さて、「シン・エヴァ」でエヴァンゲリオンシリーズを完結させた庵野秀明監督。監督自身はここで息抜きをしていない。旧劇場版がエロスや実写、アニメの新たなる方向性への探究心から「ラブ&ポップ」、既存の声優の囚われない「彼氏彼女の事情」などを製作したように、新劇場版には彼自身の創作のルーツとも言える特撮愛の還元が始まるのではないだろうか(「シン・エヴァ」も正しくその愛が溢れたシーンがある)。「シン・ゴジラ」を成功させた東宝は同じコンビである樋口真嗣監督による「シン・ウルトラマン」(庵野は脚本を担当)を公開(元々初夏公開だったが、公開延期中)、東映は「シン・仮面ライダー」を2023年公開に向けて監督として庵野を起用し製作を進めている。庵野秀明が日本の映像史に名を刻む監督となることになる瞬間をまだまだ我々は向き合うことになりそうだ。そして、「シン・エヴァ」がどこまで稼ぐのかを見守っていきたいところだ。

 

5.今回の更新

今週は3回分の記事を同時更新しました。ひとつは「モンスターハンター」の日本興収と「ゴジラvsコング」の世界興収、もうひとつは「名探偵コナン 緋色の弾丸」の公開規模について書いております。よろしければご覧ください。 

 

 

というわけで、今回は以上。閲覧ありがとうございました。

<週刊興行批評>「ラーヤと龍の王国」の劇場/配信の並行公開の是非、シン・エヴァは初日8億スタート!!

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今週は「太陽は動かない」、「ラーヤと龍の王国」の2作品を取り上げ、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の初日の興収の情報が出たため、そちらについても取り上げたいと思います。

 

 

1.先週末のランキング

まずは、先週末のランキングを見てみましょう。

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1位は「花束みたいな恋をした」。土日2日間で動員11万4000人、興収1億5600万円をあげ、前週比は動員、興収ともに-11.2%と腰の強い興行を続けている。累計では動員196万人、興収26億円を突破した。

2位は「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」。土日2日間で動員9万7000人、興収1億6300万円をあげ、公開から21週目を迎えてもなお、興収では前週比+4.5%、1位の『花束〜』を上回るという怪物ぶりを見せている。累計では動員2787万人、興収384億円を突破しており、400億円突破まであと16億円足らずである。

3位は初登場太陽は動かない」。土日2日間で動員7万9000人、興収1億900万円をあげ、初日からの3日間で動員10万7400人、興収1億4500万円をあげた。

4位は「名探偵コナン 緋色の不在証明」。累計で動員65万1500人、興収9億1600万円を突破。

5位は「ライアー×ライアー」。累計興収は5億8400万円を突破。

6位は初登場ラーヤと龍の王国」。初日からの3日間で動員5万5400人、興収7000万円をあげた。

7位は「劇場版ポケットモンスター ココ」。累計で動員147万人、興収17億円を突破。

8位は「樹海村」。累計興収は6億400万円を突破。

9位は「映画 えんとつ町のプペル」。累計で動員168万人、興収23億円を突破した。

10位は初登場ARIA The CREPUSCOLO」。

 

2.興収チェック!「太陽は動かない」

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先週末初登場3位にランクインしたのは「太陽は動かない」。「怒り」「悪人」などで知られる吉田修一のスパイアクション小説を藤原竜也竹内涼真出演、羽住英一郎監督で映画化。当初は昨年5月15日に公開予定だったが、新型コロナウイルスで公開延期をしており、ようやくの公開となった。

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藤原竜也出演作品で興収比較してみたが、「Dinner ダイナー」に対して動員比60%、興収比57%と少々物足りない結果に。最終興収も5〜7億円程度となるだろう。

 

3.興収チェック!「ラーヤと龍の王国」

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先週末初登場6位にランクインしたのは「ラーヤと龍の王国」。龍の王国を舞台に少女の戦いと成長を描くディズニーの長編アニメーション。

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ディズニー作品の興収比較をしてみたが、「モアナと伝説の海」との動員比9.7%、興収比9.8%、コロナ禍の影響を受けた「2分の1の魔法」との動員比35%、興収比33%とディズニー作品としてはかなり低調なスタートとなっている。この勢いだと、最終興収も2〜3億円あたりとなりそうだ。

というのも、本作はディズニーの配信サービスである「Disney+」でプレミアアクセスとして追加料金を設けた上での同時公開をしていたためであり、公開館数も従来のディズニー作品よりも規模を縮小して行われていることが原因である。大手シネコンチェーンではイオンシネマは全館で上映しているのに対し、TOHOシネマズは本作においては全館で公開をしていないという異例の公開形態となった。

2010年代のディズニー無双が一転し、2020年代に入り、日本にもDisney+の普及が始まり、コロナウイルスによる公開延期を余儀なくされたことから劇場公開予定だった「ムーラン」や「ソウルフル・ワールド」は配信に移行した。そして、今回、日本のメジャー洋画としては初めて、劇場と配信での並行公開が始まった。配信でどれだけ視聴されているかは不明だが、それ相応の再生数は記録してるだろう。ただ、ディズニー側も通常の劇場公開の映画に比べると宣伝の力もそこまで発揮をしていないのも事実であり、まだ手探り状態であることは明らかだ。劇場側としてもディズニーの新作を配信と並行公開されることを危惧してる側面もあり、双方が納得するまでにはまだ時間は要しそうだ。ただ、本作のオープニング興収だけを読み取ると、本来なら、ディズニーの新たな物語を大きく向かい入れたいところなのに、この数字は物足りなさすぎるのではないだろうか?と思う節がある。本作がディズニー、はたまたハリウッド作品の日本公開にどう影響を受けるか。配信という選択肢の利点が増えてきた今、避けて通れない事態である。良い方向性に向くことを期待したいところだ。

ただ、まず、日本はDisney+をアメリカと同様の仕様(ラインナップの多様さ、4K、5.1chサラウンド配信など)に持っていくことから始めないとさらに遅れを取ることになると考える。

 

4.「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の初日は8億円スタート!!

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さて、今週月曜日、3月8日、ついに公開が始まった「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。2007年から始まった「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ全4部作、ならびに25年に渡って続いた「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの完結編とあって公開前から大きな話題となっていた。度重なる延期によって、ファンの期待値もさらに挙げていたことだろう。公開日発表が公開から僅か10日前、初日が平日の月曜日と異例の興行形態で客入りはどの程度のものかと期待していたが、蓋を開ければ、初日だけで観客動員数53万9623人、興収8億277万4200円というスタートを切った。

これは前作「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」(動員44万3408人、興収6億4838万3550円)の動員比121.7%、興収比123.8%である。

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また、これがどれほどのスタートなのか。近年のメガヒット作品の初日興収と比較してみよう。同じく庵野秀明総監督の「シン・ゴジラ」の動員比354.9%、興収比381.1%、新海誠監督の「天気の子」の動員比164%、興収比174.9%と80〜100億円クラスの作品の初日興収を上回っているのだ。流石に「鬼滅の刃」に比べると動員比59.2%、興収比63.3%と下回るものの、「シン・エヴァ」以外はすべて金曜日公開での成績である。多くの人が勤勉に勤しむ平日の月曜日を初日としたときの成績としては「鬼滅の刃」並みの数字を叩き出したという解釈をするほうが良いだろう。まさか、個人的にもここまでの数字を叩き出すとは思いもしなかった(前回の予想で初日5億、1週間で15〜20億円と予想したのが恥ずかしくなるくらいには)。

鬼滅の刃」並みの数字と表現したが、熱気でもそれに匹敵する、あるいはそれを上回ると解釈することも出来る。鬼滅は原作もあり、既にオチを知って鑑賞することも出来た。しかし、本作はこれまでと同様、情報をほとんど出すこともなく、しかもシリーズ最終作としてどういう結末を迎えるかを観客は何も知らずに鑑賞をする。もはや、初日に観にいくことが一種のイベントと化していたのだ。そして、Twitter上ではファンはネタバレに気をつけながら感想を呟くユーザーが多数いた(初日のトレンドに「ネタバレ」が入るほどに)。

鬼滅の刃」とあまり比較して語るのも良くないのでここまでとするが、とにかく「シン・エヴァ」が前作「Q」の50億円を上回ることはほぼ確実であり、100億円突破も夢じゃないと考えている。むしろ、本作を観た身としてはそれくらい稼がないと製作費の回収が難しいんじゃないかというくらいには詰め込まれているからだ(エンドロールがハリウッド作品並みに長かったこともありますし)。

既に20億円を突破しているという情報も入っており、おそらく初めての週末を迎える今週末も平日を耐えてきた初めての方や初日を見て平日は勤勉し再び観に行くリピーターの方の両方で多くの観客が押し寄せることは予想できる。興収も30億円は突破できるのではないかと予想する。

ここまで来るとすごいことになってきましたね。来週はさらにエヴァの宣伝手法、ブランド化していったことを踏まえながら、週末興収を見ていこうと思います。

 

5.今週末の注目作

ブレイブ 群青戦記」(3月12日公開) (PG12)

集英社週刊ヤングジャンプ」で連載された笠原真樹原作の人気コミック「群青戦記」を、「踊る大捜査線」シリーズの本広克行監督が実写映画化。新田真剣佑が単独初主演を飾るほか、三浦春馬松山ケンイチら実力派キャストが集う。

スポーツ名門校で弓道部に所属する西野蒼は目立つことが苦手で、弓道場で練習に打ち込むばかりの日々を送っていた。幼なじみの瀬野遥は、そんな蒼のことを心配している。ある日、1本の雷が校庭に落ちた直後、突如として校庭の向こうに城が出現、校内には刀を持った野武士たちがなだれ込んでくる。全校生徒がパニックに陥る中、歴史マニアの蒼は、学校がまるごと戦国時代、しかも“桶狭間の戦い”の直前にタイムスリップしてしまったことに気づく。織田信長の軍勢に友人たちを連れ去られた蒼は、後に徳川家康となって天下統一を果たす松平元康と手を組み、野球部やアメフト部の選抜メンバーたちと共に立ち上がるが……。

主人公を導く松平元康(後の徳川家康)を三浦春馬、彼らの前に立ちはだかる織田信長松山ケンイチがそれぞれ演じる。

ビバリウム」(3月12日公開) (R15+)

不動産屋に紹介された住宅地から抜け出せなくなったカップルの運命を描いたサスペンススリラー。

新居を探すトムとジェマのカップルは、ふと足を踏み入れた不動産屋で、全く同じ家が建ち並ぶ住宅地「Yonder」を紹介される。内見を終えて帰ろうとすると、すぐ近くにいたはずの不動産屋の姿が見当たらない。2人で帰路につこうと車を走らせるが、周囲の景色は一向に変わらない。住宅地から抜け出せなくなり戸惑う彼らのもとに、段ボール箱が届く。中には誰の子かわからない赤ん坊が入っており、2人は訳も分からないまま世話をすることに。追い詰められた2人の精神は次第に崩壊していき……。

ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグと「グリーンルーム」のイモージェン・プーツが主人公カップルを演じる。プーツは第52回シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。

フィールズ・グッド・マン」(3月12日公開)

 

アメリカのアンダーグラウンドコミック界の人気アーティスト、マット・フューリーが生み出したキャラクターがたどることとなった数奇な運命と現在のアメリカ社会を、アニメーションを織り交ぜて描いたドキュメンタリー。

カルト的な人気を博したマット・フューリーの漫画「Boy’s Club」。主人公ペペが放った「feels good man(気持ちいいぜ)」のセリフとともにネットミームとして改変されたペペが、マットの意思とは裏腹に掲示板やSNSで一人歩きしてしまう。2016年アメリカ大統領選時には、匿名掲示板でオルタナ右翼たちが人種差別的なイメージとともにペペを拡散し、ADL(名誉毀損防止同盟)からヘイトシンボルとして認定。さらにペペの乱用は加速し、トランプ大統領の誕生に一役買うまでになってしまう。この事態にマットはペペのイメージ奪還に乗り出す。

すくってごらん」(3月12日公開)

エリート銀行マンが左遷先で出会った金魚すくいを通じて成長していく姿を描いた、大谷紀子の同名人気コミックを実写映画化。これが映画初主演となる歌舞伎俳優の尾上松也と「ももいろクローバーZ」の百田夏菜子が共演する。

些細なことにより左遷され、東京本社から片田舎の町へやってきた大手メガバンクのエリート銀行マン・香芝誠。荒んだ気持ちを抱えていた香芝は、左遷初日に金魚すくいの店を営む美女・吉乃と運命的な出会いを果たし、彼女に一目ぼれをする。生来のネガティブな性格と左遷のショックから心を閉ざし、仕事だけを生きがいに生きていくことを心に決めていた香芝だったが、吉乃のことがなかなか頭から離れず、なんとか彼女と仲良くなろうとするが……。

監督は「ボクは坊さん。」「ラスト・ホールド!」の真壁幸紀。ヒロインの吉乃を演じる百田夏菜子が、役名の生駒吉乃として主題歌を歌っている。

奥様は、取り扱い注意」(3月19日公開)

綾瀬はるか西島秀俊が元特殊工作員と公安エリートの夫婦を演じた人気ドラマの劇場版。

特殊工作員だった過去を持つ専業主婦の伊佐山菜美と、現役の公安警察であることを隠しながら菜美を監視するやさしい夫・伊佐山勇輝。半年前、ある出来事により菜美は記憶喪失になってしまい、2人は桜井久実と裕司に名前を変えて、小さな地方都市で新しい生活を始めていた。2人が新生活を送る珠海市では、新エネルギー源「メタンハイドレード」の発掘をめぐり、開発反対派と推進派の争いが激化していた。そんな中、新エネルギー源開発の裏でロシアと結託した国家レベルの陰謀が潜んでいる事実を公安が突き止める。勇輝が公安の協力者になるか特殊工作員だった妻を殺すかの選択を迫られる中、菜美は大きな事件へと巻き込まれていく。

菜美役を綾瀬はるか、勇輝役を西島秀俊が演じるほか、岡田健史、前田敦子鈴木浩介小日向文世らが脇を固める。監督は「カイジ ファイナルゲーム」の佐藤東弥

ミナリ」(3月19日公開)

1980年代のアメリカ南部を舞台に、韓国出身の移民一家が理不尽な運命に翻弄されながらもたくましく生きる姿を描いた家族映画。2020年・第36回サンダンス映画祭でグランプリと観客賞をダブル受賞した。

農業での成功を目指し、家族を連れてアーカンソー州の高原に移住して来た韓国系移民ジェイコブ。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを目にした妻モニカは不安を抱くが、しっかり者の長女アンと心臓を患う好奇心旺盛な弟デビッドは、新天地に希望を見いだす。やがて毒舌で破天荒な祖母スンジャも加わり、デビッドと奇妙な絆で結ばれていく。しかし、農業が思うように上手くいかず追い詰められた一家に、思わぬ事態が降りかかり……。

父ジェイコブを「バーニング 劇場版」のスティーブン・ユァン、母モニカを「海にかかる霧」のハン・イェリ、祖母スンジャを「ハウスメイド」のユン・ヨジョンが演じた。韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョンが監督・脚本を手がけた。 

トムとジェリー」(3月19日公開)

多才だがお調子者でドジなネコのトムと、見た目はかわいらしいがずる賢く容赦ないネズミのジェリーが繰り広げるドタバタを描き、1940年の誕生から80周年を迎えた「トムとジェリー」を実写映画化。アニメーションで描かれるトムとジェリーが実写映像に融合し、クロエ・グレース・モレッツをはじめとした俳優陣と共演する。

ニューヨークの高級ホテルに引っ越してきたジェリーと、そんなジェリーを相変わらず追いかけるトム。新人ホテルスタッフのケイラが働くそのホテルでは、世界が注目するセレブカップルのウェディングパーティが行われようとしていたが、トムとジェリーのせいで台無しになってしまう。汚名返上のためタッグを組むことになったトムとジェリーが、世界一素敵なウェディングパーティを開こうと奮闘する。

ケイラ役のクロエ・グレース・モレッツほか、「アントマン」シリーズのマイケル・ペーニャ、「デッドプール2」のロブ・ディレイニー、「ハングオーバー!」シリーズのケン・チョンらが共演。「ファンタスティック・フォー 超能力ユニット」のティム・ストーリーがメガホンをとった。

まともじゃないのは君も一緒」(3月19日公開)

婚前特急」の監督・前田弘二と脚本・高田亮が再タッグを組み、成田凌と清原果耶がダブル主演を務めた恋愛ドラマ。人とのコミュニケーションが苦手で、数学ひと筋で生きてきた予備校講師の大野。今の生活に不満はないが、このままずっと1人でいることに漠然とした不安を抱えている。世間知らずで「普通」が何かわからない彼は、女の子とデートをしてもどこかピントがずれているような空気を感じる。教え子の香住は、そんな大野を「普通じゃない」と指摘してくれる唯一の相手だ。恋愛経験はないが恋愛雑学だけは豊富な香住に、「普通」を教えてほしいと頼み込む大野だったが……。

映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!」(3月20日公開)

人気アニメ「プリキュア」劇場版シリーズの通算29作目。「思いやり」と「絆」をテーマに2020年2月~21年2月に放送されたシリーズ17作目「ヒーリングっど♥プリキュア」の劇場版。

のどかたちが身に着ける「ゆめペンダント」の力で心の中に思い描いた夢を映し出す「ゆめアール」体験が流行している東京。みんなの夢があふれる街で、のどかたちは不思議な力をもった少女カグヤと出会う。そこへ夢を狙う謎の敵が現れて……。

プリキュア」シリーズ4作目「Yes!プリキュア5」と、その続編でシリーズ5作目「Yes!プリキュアGoGo!」のプリキュアたちも登場し、「ヒーリングっど・プリキュア」のプリキュアたちと共闘する。短編アニメ「映画トロピカル~ジュ!プリキュア プチ とびこめ!コラボ・ダンスパーティ!」が同時上映。

 

というわけで、今週は以上。閲覧ありがとうございました。

<週刊興行批評>10日前に公開日発表をしたシン・エヴァ、緊急事態宣言下で公開された邦画の効果ありか?

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お久しぶりです。5ヶ月も間が空いてしまいました。私情でブログの更新ペースを途絶える形となりました。毎週あるべき(自分のルーティンとしていた)このコーナーも今週から再開できそうです。

さて、まずそもそも前回は「鬼滅の刃」が初登場1位にランクインしたところで更新を途絶えてしまいました。そして、ご存知のように「鬼滅の刃」は日本の歴代興収で1位を取ってしまいました…まさかとは思いましたが、取ったという事実に変わりありません。他にも「STAND BY ME ドラえもん2」が前作の反動からか30億円近くしか稼げなかったり、「新解釈・三國志」は福田雄一監督のネームバリューが健在であることを示し、「ワンダーウーマン 1984」はアメリカでは配信サービスとの並行公開も展開されました。「えんとつ町のプペル」の宣伝展開に関しては少々疑問の声が挙がったり、「銀魂 THE FINAL」の入場者特典には相変わらずの作品の力に笑わされたりもしました。また、2度目の緊急事態宣言が1月から発出されたことにより、「ザ・スイッチ」、「シン・エヴァ」、「ザ・ファブル」の続編、「ドラえもん」の新作、「キネマの神様」などが相次いで延期をする事態となり、作品不足、夜8時までの時短営業に追い込まれた形となりました(閉館ではなく時短であることに止まらない安心はありますが、補償がないとかあったり)。これがここ5ヶ月のざっくりとした興行の展開です。あと、リバイバル上映に出会す回数も増えたとかありましたね(これもまた違う機会に書いていければ良いかな…と思います)。

さて、今回は5週連続1位の「花束みたいな恋をした」といよいよあと2日後に公開される「シン・エヴァンゲリオン劇場版」について書いていきます。

 

 

1.先週末のランキング

まずは、先週末のランキングを見てみましょう。

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1位は「花束みたいな恋をした」。土日2日間で動員12万8000人、興収1億7600万円をあげ、前週比は動員で-4.2%、興収で-6.5%と、変わらず落ちの少ない興行となっており、累計では動員167万人、興収22億円を突破した。

2位は「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」。土日2日間で動員10万人、興収1億5600万円をあげ、前週比は動員で+5.5%、興収で+3.3%と公開から20週目を迎えたとは思えない驚きの数値となっており、累計では動員2768万人、興収381億円を突破。

3位は「名探偵コナン 緋色の不在証明」。累計では動員51万人、興収7億3800万円を突破した。

4位は「ライアー×ライアー」。累計興収は4億3100万円を突破。

5位は「銀魂 THE FINAL」。累計で動員125万人、興収17億円を突破。

6位は「樹海村」。累計興収は5億4200万円を突破。

7位は「映画 えんとつ町のプペル」。累計で動員163万人、興収22億円を突破。

8位は「ファーストラヴ」。累計興収は4億8500万円を突破。

9位は「劇場版ポケットモンスター ココ」。累計で動員144万人、興収16億円を突破。

10位は「すばらしき世界」。累計で動員29万人、興収3億9100万円を突破。

 

2.興収チェック!「花束みたいな恋をした」

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先週末1位に輝いたのが「花束みたいな恋をした」。先週末を含めて5週連続での1位となった。「東京ラブストーリー」や「カルテット」などを手がけてきた坂元裕二によるオリジナル脚本を菅田将暉有村架純の主演で映画化した作品。

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5週連続で1位を獲得した本作は週末興収の落ちが少なく、累計興収は20億円を突破した。なお、本作の配給をしているのは東京テアトルリトルモアという東宝などのメジャー配給ではない小中規模の映画会社である。こうした小中規模の配給会社の作品が20億円を突破したのは2018年の「万引き家族」(ギャガ)と「カメラを止めるな!」(アスミック・エース/ENBUゼミナール)以来となる。

本作でも劇中歌やストーリーの要素の一つまでをも担うことになったAwesome City Clubはインスパイアソング「勿忘」がストリーミングサービスなどで話題となり、「CDTV ライブ!ライブ!」や「ミュージックステーション」にそれぞれ初出演を果たすなど世に知れ渡ることになったりとちょっとした社会現象も生み出すほどにヒットを記録している。

ここまでのヒットを記録したのは純粋に作品の素晴らしさ、面白さ(筆者も観たが、今年ベスト級です…)でのクチコミヒットもあるが、緊急事態宣言によって、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」や「ザ・ファブル 第2章」といった競合作が延期をしたことも要因として挙げられる。競合作がない状況で本作が大ヒットし、映画館としても上映スクリーンの座席数をさらに多いところに移すなどの対応も見られ、緊急事態宣言下でありながらも興収20億を記録するヒットを生み出したのはこうした要因があってこそだと思う。もちろん、菅田将暉有村架純両名のネームバリューあってこそでもある。この勢いも今週末までだと思われる。というのも、今週末を潜り抜けるとついにあの作品の公開が始まるからである。

 

3.「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の公開日が3月8日に決定!

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この一報が流れたときは驚かれた方も多かったのではないだろうか。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの最終章にして、「エヴァンゲリオン」シリーズの最終作とも言われている「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の公開日が3月8日に決定したのだ。

本作は元々2020年6月27日の公開を予定していたが、1度目の緊急事態宣言により、4月に延期を発表。10月に2021年1月23日の公開を発表したが、2度目の緊急事態宣言により、公開9日前にして公開延期を発表していた。そして、現在の公開日に落ち着いたわけでありますが、今回の一報で驚く点が2つありました。

1つ目が公開日から10日前に発表をした点。現在の公開日を発表したのが2月26日(金)。これは公開日10日前という急転直下での発表だ。普段なら、宣伝の兼ね合いや公開劇場の準備などを考えて、2〜3ヶ月くらいはあるものなのだが、公開劇場の準備がギリギリできる10日前の発表はファンにとっては心の準備も儘ならない状態に陥ったのではないだろうか。

2つ目が公開初日が月曜日だという点。映画の公開日は金曜日か土曜日であることが通例だが、本作は月曜日を選択。というのも、実はこの3月8日というのは緊急事態宣言が全国的に解除される予定日であったからだ。その日に選択をして、全国的に朝から晩まで上映しようという配給側の目論見があったのだろう。もちろん、こうした大作が月曜日で祝日でもない平日を公開初日にすることなど異例中の異例だ。ただ、この目論見は1都3県の緊急事態宣言の延長によって少々潰れたところもある。

本作を再延期しても(あるいはそんな宣言明けてすぐに公開しなくても)良いじゃないかという声もあるだろうが、本来その週末に公開される予定だった東宝配給のドラえもんの新作が延期され春休みの目玉がなかったこと、映画館側も鬼滅の威力が尽きてきてラインナップの強力さがなくなってきたことも考えると早く上映したい、これ以上の延期はよろしくないという考えも分からなくはない。そして、何よりも本作の公開日決定の公式アナウンスには「継続的に各劇場にて有効な感染対策がなされていること、さらに感染リスクを軽減する新たな鑑賞マナーの定着」と書かれており、劇場や観客自身の感染対策(映画館がクラスターになった実例が報告されていないこと)への評価もなされており、これならば、公開しても大丈夫だろう、たとえ緊急事態宣言が再延長されても問題はないだろうということもあったのではないのだろうか。個人的にはそれらに加えて、緊急事態宣言下でも映画館側は作品の供給を続けてきており、花束みたいな恋をしたや鬼滅の刃が引き続き大ヒットしたことも評価したのではないのだろうかと考える。

という異例の公開日発表により、いよいよ公開が迫ってしまった本作(エヴァの宣伝展開の素晴らしさはまた後日書いていきたい)。ここからはどういった上映規模になるのか、はたまたどういった興収を叩き出すのかを考えていきたい。

シン・エヴァの公開規模は鬼滅並み?

今回も鬼滅の刃での調査と同様に東宝の上映劇場一覧に載せられてる劇場すべての初日の上映スケジュールを調べてみました。

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本作の上映館数は346館。鬼滅が365館でしたので少し少ない状況です。初日の上映回数も5722回。鬼滅に比べると7割くらいといったところ*1。これは前述したように緊急事態宣言によって、鬼滅では42回と爆走したTOHOシネマズ新宿も本作は半分の21回での上映となるようにレイトショーまでの上映が首都圏に関しては出来ないということや上映時間が155分と長めなため、頑張っても1スクリーンで4回程度しか回せないという理由が挙げられる。

だが、本作では、IMAX上映に加えて、4D上映も同時公開を始めたり、朝7時の初回上映をする劇場が鬼滅の刃(83館)より増えている(96館)という好都合も働いている面もある。さらには複数のスクリーンに跨っての上映を敢行する劇場がほとんどで、公開スタイルは「鬼滅の刃」の成功例を活かした形となっている。これらが上手く活用できれば…良い結果が生まれるのか?

「シン・エヴァ」の初週の興収は?

さて、エヴァシリーズ初となる東宝配給*2によりここまでの規模での上映が行えること、「ヱヴァQ」での波乱、「シン・ゴジラ」のメガヒット、エヴァのブランド化によって認知の拡大がされていること、数年前から劇場の予告などで大々的に告知がされていること、そして、何より「エヴァンゲリオン」シリーズがついに完結を迎えるということもあり、大ヒットが見込めるのは間違いない。

ちなみに前3作と「シン・ゴジラ」のデータがこちら。

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こうしたデータを元に自分自身も予想をしたいが、これに限っては予測不能だ。というのも、先ほど挙げたように初日が土曜日といった週末ではなく、月曜日という平日であることでどのように興収発表されるかが分からないところだ。金曜日から開始された予約状況の熱気を見る限りは初日で5億円はいきそうであり、1週間で15〜20億円という記録を出すと予想する。初日と初週末にどう記録していくかにまずは注目であり、興行通信社や配給はデータを公表していったほうが良いと思う。最終的には「Q」超えを目指していきたいが、こればかりはコロナと競合作のぶつかり合いを見ていくしかないだろう。

さて、ファンが待ちに待ち望んだ(来てほしくない現実を願った)作品の到来、異例の興行形態が幕を開ける。次回(来週)は初日のデータが出れば、そちらを書いていこうかと。本格的に書くのは再来週だと思います。とりあえず、自分は初日と2日目で4回、既に予約して臨む姿勢だ。

 

4.今週末の注目作

太陽は動かない」(3月5日公開)

「怒り」「悪人」などで知られる吉田修一のスパイアクション小説「太陽は動かない」「森は知っている」を藤原竜也主演で映画化。

謎の秘密組織AN通信。この組織に属するエージェントは心臓に爆弾が埋め込まれ、24時間ごとに死の危険が迫まるという。エージェントの鷹野は相棒の田岡とともに、死の危険を抱えながら「全人類の未来を決める次世代エネルギー」の極秘情報をめぐって、各国のエージェントたちとの命がけの頭脳戦を繰り広げる。

鷹野役の藤原竜也、田岡役の竹内涼真のほか、ハン・ヒョジュ、ピョン・ヨハン、佐藤浩市市原隼人南沙良、日向亘、加藤清史郎らが脇を固める。監督は「海猿」「暗殺教室」「MOZU」など数多くのヒットシリーズを手がける羽住英一郎

ラーヤと龍の王国」(3月5日公開)

龍の王国を舞台に少女の戦いと成長を描くディズニーの長編アニメーション。

聖なる龍たちに守られた王国。人びとが平和に暮らすその王国を邪悪な悪魔が襲った。龍たちは自らを犠牲に王国を守ったが、残された人びとは信じる心を失っていった。500年の時が経ち、王国をふたたび魔物が襲う。聖なる龍の力が宿るという「龍の石」の守護者一族の娘ラーヤは、王国に平和を取り戻すため、姿を消した最後の龍の力をよみがえらせる旅に出る。

監督はアカデミー長編アニメーション賞を受賞したディズニーアニメ「ベイマックス」のドン・ホールと、実写映画「ブラインドスポッティング」のカルロス・ロペス・エストラーダ。劇場公開と同時にDisney+でも配信(追加料金が必要なプレミアアクセスで公開)。

キンキーブーツ」(3月5日公開)

実話を元にしたイギリスの同名映画を、ハーベイ・ファイアスタインの脚本とシンディ・ローパーの作詞・作曲で舞台化し、ブロードウェイでも上演されてトニー賞を受賞したミュージカル。日本でも小池徹平三浦春馬の主演で上演された大ヒットミュージカルのオリジナル版の模様を映像に収め、スクリーン上映。

自分の意思に反して、倒産しそうな靴工場の跡継ぎとなったチャーリーは経営困難に苦しんでいた。そんな中、チャーリーは外見も振る舞いも違うドラァグクィーンのローラと仲間たちに出会う。そんな2人には思いがけない共通点があった。

ニューヨーク・ブロードウェイの傑作舞台を映画館で上映する「松竹ブロードウェイシネマ」シリーズの1作。

サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス」(3月5日公開) (PG12)

自らを土星生まれと語り、フリージャズのカテゴリーに括りきれないアバンギャルドな作品を数多く発表した作曲家サン・ラーが脚本、音楽、主演を務めたSF映画

地球から姿を消した大宇宙議会・銀河間領域の大使サン・ラーは、音楽を燃料に大宇宙を航行していた。ついに地球と異なる理想の惑星を発見し、地球に戻ったサン・ラーはジャズのソウル・パワーによる同位体瞬間移動を用いて、アメリカにいる黒人のブラザーたちの移送を計画する。しかし、その技術を盗もうとするNASAアメリカ航空宇宙局)の魔の手が迫っていた。

1974年に製作された81分のオリジナル版を2021年に日本初公開。

野球少女」(3月5日公開)

韓国ドラマ「梨泰院クラス」で注目を集めたイ・ジュヨンが主演を務め、プロ野球選手を目指す女子高生の奮闘を描いた青春スポーツ映画。

豪速球とボールの回転力が強みの女子高生チュ・スインは、高校卒業後はプロ野球選手の道へ進むべく練習に励んでいた。しかし女性というだけで正当な評価をされず、プロテストすら受けられない。さらに、友人や家族からも反対されてしまう。そんな折、プロ野球選手の夢に破れた新人コーチのチェ・ジンテが赴任してきたことで、彼女の運命は大きく動き出す。

主人公を支えるコーチを「僕の中のあいつ」のイ・ジュニョク、母親を「無垢なる証人」のヨム・ヘランが演じる。

ARIA The CREPUSCOLO」(3月5日公開)

 

2005年から放送された人気テレビアニメ「ARIA」シリーズの劇場版。原作者・天野こずえが描き下ろしたコミックをもとに、テレビ版の監督を務めた佐藤順一が総監督・脚本を手がけた。

水の星アクアの観光都ネオ・ヴェネツィア。水先案内店「オレンジぷらねっと」で修行の日々を送るウンディーネ(水先案内人)のアーニャには、気掛かりなことがあった。それは、先輩のアリスとアテナが、互いに多忙なためずっと会えていないこと。そのせいで元気がないアテナに対し、アリスはなぜか会うのを避けている様子だった。友人のアイやあずさにも協力してもらい、先輩たちが会える方法を探すアーニャだったが……。

キャストにはアリス役の広橋涼、アーニャ役の茅野愛衣らおなじみの声優陣に加え、アテナ役で佐藤利奈、劇場版オリジナルキャラクターのアレッタ役で安野希世乃が新たに参加。

レイダース 失われたアーク《聖櫃》4Kリマスター版4DX」(3月5日公開)

インディ・ジョーンズ」シリーズの記念すべき第1作で、「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカスと「ジョーズ」「未知との遭遇」のスティーブン・スピルバーグが初タッグを組み、1981年に製作した冒険活劇。主演ハリソン・フォードの代表作のひとつとして広く知られ、以降もシリーズ作品が大ヒットを重ねた映画史に残る名作アクションアドベンチャー

第2次世界大戦前夜の1936年を舞台に、旧約聖書に記されている十戒が刻まれた石板が収められ、神秘の力を宿しているという契約の箱(=聖櫃)を巡って、ナチスドイツとアメリカの考古学者インディ・ジョーンズハリソン・フォード)が争奪戦を展開する。

原案はルーカスとフィリップ・カウフマン。脚本は「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」のローレンス・カスダン。1981年の初公開から40周年を記念して2021年、体感型上映システム「4DX」で4Kリマスター版を上映。

星の王子ニューヨークへ行く 2」(3月5日Amazon プライム・ビデオにて配信)

1988年に公開された「星の王子 ニューヨークへ行く」がエディ・マーフィらオリジナルキャストが再結集して描かれる33年ぶりの続編。

緑豊かな王国ザムンダを舞台に、新たに戴冠した国王アキームと、彼の親友であるセミが、アフリカからニューヨーク・クイーンズを目指し、全く新しい陽気な冒険を繰り広げることになる。

アキーム役のエディ・マーフィセミ役のアーセニオ・ホールの他、父親ジャファ役のジェームズ・アール・ジョーンズ、執事オーハ役のポール・ベイツ、クイーン・リサ役のシャリー・ヘッドリー、クレオマクダウェル役のジョン・エイモス、モーリス役のルーイ・ アンダーソンや、前作に登場したお馴染みの床屋の店員など、オリジナルキャストが再結集し、人気ラッパーのリック・ロス、「ビール・ストリートの恋人たち」のキキ・レイン、「ブレイド」シリーズのウェズリー・スナイプス、「ゴーストバスターズ」のレスリー・ジョーンズ、「コップ・アウト ~刑事した奴ら~」のトレイシー・モーガン、「ホワイト・ボイス」のジャーメイン・ファウラー、エディ・マーフィーの実娘・女優のベラ・マーフィーなど新キャストも参加している。監督はエディが出演した「ルディ・レイ・ムーア」のクレイグ・ブリュワー

シン・エヴァンゲリオン劇場版」(3月8日公開)

庵野秀明監督による大ヒットアニメ「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの完結編。

1995~96年に放送されて社会現象を巻き起こしたテレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を再構築し、4部作で新たな物語を描く「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ。2007年に公開された第1作「エヴァンゲリオン新劇場版:序」、09年の第2作「エヴァンゲリオン新劇場版:破」、12年の第3作「エヴァンゲリオン新劇場版:Q」に続く今作は、庵野総監督の下、テレビシリーズから新劇場版までシリーズに深く携わってきた鶴巻和哉と、新劇場版シリーズで副監督など務めてきた中山勝一が監督を担当し、新たな結末が描かれる。テーマソングは、これまでの新劇場版シリーズも担当した宇多田ヒカルが引き続き手がけた。

 

というわけで、今週は以上。閲覧ありがとうございました。

*1:鬼滅の初日は7960回。鬼滅と重なる劇場では1956回少ない。

*2:なお、本作は東宝東映・カラーの共同配給だ。東宝東映がタッグを組むのも史上初のこと。映画史に刻まれる事件が実は起こっている。

#2020年映画ベスト10 を考えてみる

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時は、2020年。この1年、世界はコロナで一変。それはもちろん、映画を鑑賞するという行為においても同じだ。期待していた映画の公開延期、席を空けた鑑賞とマスクの常時着用、飲食の規制とこれまでの映画館鑑賞とは離れていく様、配信映画の躍進と公開延期作の配信移行による賛否両論の加熱論争…etc。2020年が映画においてもここまで冷たく、でも劇的に変わっていくとは思わなかった。この激動の年を生き抜き、映画を追ってきた、そんな年のベスト10、当ブログに載せたいと思う。

今年観た新作映画は43本。昨年よりは少し減った感じですかね…↓からベスト10を決めていきます。

 

 

1.勝手にあげたいで賞

さて、せっかくブログに書くのだから、なんか勝手にあげる賞を作ってもいいんじゃないかということで「勝手にあげたいで賞」なるものを作成。まあ、とりあえず見てってくださいな。

・ベスト・アクター

「透明人間」エリザベス・モス

「ミッドナイトスワン」草彅剛

「スパイの妻」「おらおらでひとりいぐも」蒼井優

「私をくいとめて」のん

よく、ベスト・ガイ、ベスト・ガールと区分けされがちですが、勝手にあげるので、もはやそんな性別に分けなくて良くね?ということでアクター(俳優)で一括りで。

まず、エリザベス・モスは恐怖を現し、復讐を果たしていく演技は映画の面白さを上げさせた。草彅剛(ご結婚おめでとうございます…)に関してはトランスジェンダーという役所を成し遂げ、演技の幅を広げると同時に日本においてトランスジェンダーの存在認知にも成功させたのではないだろうか(映画きっかけで良き方向に向くことを願うばかり…)。蒼井優の今年の2作品での演技はもはや名女優の看板を背負ってもおかしくない領域。「スパイの妻」に関しては最初から最後まで昭和の名女優そのものでお見事!のんの妄想相手と話すあの演技、すなわちひとり芝居に関しても褒めたほうがいいに決まってる。ということで以上の4人に勝手にあげます。

・ベスト・サポート

「1917 命をかけた伝令」コリン・ファースベネディクト・カンバーバッチ

「シカゴ7裁判」ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マーク・ライランスマイケル・キートン

この2作品に関してはそこまで情報を知らずに見たので、あれ?あの俳優出てるの!?という驚きとそこからの良い演技してんな…という納得で。こういう助役があることで映画はより引き立つのです。

・ベスト・アンサンブル

「パラサイト 半地下の家族」

「初恋」

「シカゴ7裁判」

ベスト・アクターで一括りにしてもそれは個人でしか評価できない。映画は演技の総合体で面白いと思うときもある。ベスト・アンサンブルはそれで勝手にあげます。

「パラサイト」のキム家とパク家の関係性、「初恋」のヤクザと警察と主人公のボクサーのぶつかり合い、「シカゴ7裁判」の裁判の掛け合い…どれも非常に良かった。

・ベスト・ニューカマー

ジョジョ・ラビット」ローマン・グリフィス・デイヴィス、トーマシン・マッケンジー、アーチー・イェーツ

「はちどり」キム・ボラ監督

「ミッドナイトスワン」服部樹咲

新人賞、今年はこの3人に。「ジョジョ〜」の主人公とユダヤ人の少女エルサ、親友ヨーキーの子供の成長を感じる演技、キム・ボラ監督は長編初監督、服部樹咲は初出演でここまでの表現力を魅せたことに大きな期待を込めて勝手にあげます。

・ベスト・コンビ

「フォードvsフェラーリ」キャロル・シェルビー(マット・デイモン)&ケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)

「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」エイミー(ケイトリン・ディーヴァー)&モリー(ビーニー・フェルドスタイン)

「TENET テネット」名も無き男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)&ニール(ロバート・パティンソン)

「燃ゆる女の肖像」マリアンヌ(ノエミ・メルラン)&エロイーズ(アデル・エネル)

今年は非常にブロマンス映画やシスターフッド映画に出会う機会がとても多かったように感じます。「フォード〜」のマット・デイモンクリスチャン・ベールの友情、「ブックスマート」の冴えない2人の駆け抜ける一夜、「TENET」の時間や世界と戦う中で明かされる運命、「燃ゆる女〜」の芽生えていく愛…どれも非常に素敵な仲を見せてくれたように思います。

・ベスト・ディレクター

「パラサイト 半地下の家族」ポン・ジュノ監督

「TENET テネット」クリストファー・ノーラン監督

ポン・ジュノ監督のモチーフの捉えることのうまさはオスカーでも監督賞を獲るまでに評価され、ノーラン監督はもはやハリウッドにおいて、ここまでオリジナリティで世界をアッと驚かせることを証明していることのある種の恐ろしさ…そこを評価し、勝手にあげます。

・ベスト・リバイバル

AKIRA IMAX版」

ガメラ 大怪獣空中決戦 4K HDR」(ドルビーシネマ)

今年はコロナの関係で新作映画の延期が相次いだことにより、リバイバル上映の規模が大きな作品が多かったのも印象的。そんな中でもこの2作品は特に印象に残ってます。「AKIRA」は何より2020年を舞台にしたことにより現実とリンクさせて鑑賞してしまったこと、「ガメラ〜」はドルビーシネマで鑑賞できることの幸福さを感じました。やはり、映画館で観る映画の興奮ってものは大事にしていきたい…と感じた一年でした。

・ベスト・ソング

「パラサイト 半地下の家族」「Soju One Glass」

「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」「Bitter Sweet Symphony」

「TENET テネット」「The Plan」

「おらおらでひとりいぐも」「賑やかな日々」

「私をくいとめて」「君は天然色

君は天然色

君は天然色

  • 大滝 詠一
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

選びすぎだろうか…いや、これ以上は絞れん。「パラサイト」のエンディングであの音楽で締められるあの感覚、「ジョン〜」のエンディングで流れるザ・ヴァーヴのあの曲でそっと押される清々しさ、「TENET」のトラヴィス・スコット×ルドウィグ・ゴランソンタッグの曲は鬼リピしたし、「おらおら〜」のハナレグミは作品とマッチしてたし、「私をくいとめて」の大瀧詠一の使い方もお見事だった。

・ベスト・サントラ

「パラサイト 半地下の家族」

「TENET テネット」

印象的なサントラはこの2つ。どちらも映画の興奮をさらに上げさせてくれたと思います。思わずライブラリに入れてしまいました。あと、サントラではないけど、「ブックスマート」のSpotifyの公式プレイリストはとても有能だと思いましたね…

・ベスト・オープニング

ジョジョ・ラビット」

レ・ミゼラブル

ジョジョ〜」のビートルズの「抱きしめたい」をBGMに「ハイル、ヒトラー!」というオープニングは良かったし、ラジ・リ監督版のレミゼ(こう説明しないといけないの大変ですけどもしょうがない…)は2018年のワールドカップで優勝し歓喜に沸くフランスを写したこのオープニングも良かった。エンディングを思うとまた色々と感じることがあったり…

・ベスト・シーン

「パラサイト 半地下の家族」パク家の家政婦・ムングァンをなんとかしてパク家から離れさせるシーン、チャパグリ作るシーン

「1917 命をかけた伝令」攻撃中止を告げるためにウィルが戦地を走り抜けていくシーン

ワンダーウーマン 1984」ダイアナが真実の投げ縄を使って人々に説くシーン

「パラサイト」のこの2つのシーンは構図が完璧と言えるし、「1917」は音楽やこれまでのシーンと相まって、ウィルのことを自然と応援している自分がいたことに感動し、「ワンダーウーマン」は2020年にこのシーンを公開できて良かった…と思った。

・ベスト・エンディング

「パラサイト 半地下の家族」

ジョジョ・ラビット」

レ・ミゼラブル

「透明人間」

「mid90s ミッドナインティーズ」

「燃ゆる女の肖像」

「パラサイト」のモールス信号、「ジョジョ〜」の平和の祈念を込めたデヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」をBGMにして踊る2人、レミゼの少年のあの眼差し、透明人間の見事なオチ、「mid90s」の青春タイムカプセル、「燃ゆる女の肖像」のヴィヴァルディの「「四季」協奏曲第2番 ト短調 RV 315「夏」」の猛烈な響き…6作品も選んだけど、どれも良くてだな…絞れません。

・ベスト・フード

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」エッグサンド

今年、本当に美味そうだったの、これ。食べたい(自分で作れ)…「パラサイト」のチャパグリも良いよね。

・ベスト・映画ニュース

「パラサイト 半地下の家族」がアカデミー賞で外国語映画として初の作品賞を受賞!

鬼滅の刃 無限列車編」が「千と千尋の神隠し」の興行収入を超え歴代No.1に!

ディズニー、「ムーラン」、「ソウルフル・ワールド」の劇場公開見送り

ワーナー、「ワンダーウーマン 1984」以降劇場/配信の並行公開を実施

映画ニュースにも賞を。「パラサイト」のオスカーの快挙も今年なんて随分遠い出来事にも思えてきますが、やはりあの快挙はアメリカ映画の賞で外国映画でも受賞できるんだという希望が明確になったのはとても大きいと思います。 「鬼滅の刃」が歴代1位になる日が来るとは…ある意味、このコロナ禍で劇場の空きを埋めたこと、自粛中に認知を増やしたことがあっての快挙でもあるように思えます。後半の2つのニュースは今後の映画界を見守る上でも重要なトピック。メジャー映画でも自社の配信サービスの手を借りなければならないほどもう映画館を救うにはそれしかない状況にあるってのは堪えますね…

・ベスト・トレイラー

「TENET テネット」

ザ・バットマン

 

モンスターハンター

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

今年公開された予告から5作品。「TENET」のフォートナイトでの予告解禁イベントの斬新さ、「ザ・バットマン」はわずかな撮影ながらもここまで興奮する予告を公開したこと、「モンスターハンター」の「英雄の証」を流すだけで興奮を覚える不思議さは評価したいし、「シン・エヴァ」はもはや楽しみでしかない(事前告知なしで劇場で予告解禁するイベント性はすごく良い)。

・ベスト・パンフレット

「ミッドサマー」

「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」

「TENET テネット」

「ミッドサマー」、「ブックスマート」の他にも「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」、「マティアス&マキシム」と今年は大島依提亜がデザインするパンフレットはどれも良かった。「ブックスマート」がモリーとエイミーで選べる表紙だったり、現代コメディ映画の相関図と各大学を卒業したキャラを網羅したMCU(Movie Campus Universe)は読み物として抜群だった。

「TENET」は物理学視点からの解説は鑑賞後には持ってこいな内容でベスト解説。

・ナイス宣伝賞

「アングスト/不安」犬の安否を伝える宣伝

 

「パラサイト 半地下の家族」 アカデミー賞受賞時のトランプ大統領による発言に対しての配給会社・NEONの対応

今年の素晴らしい宣伝をしたところにも勝手に賞を。まずは日本から「アングスト」。あの「ギャスパー・ノエ監督が60回以上観た」という宣伝文句などでただならぬ狂気を放っていた本作で犬が無事と敢えてネタバレするというのはナイス宣伝。結構犬猫が殺されないか心配する人っているのでそこの声を上手く拾って面白かったです。そして、海外からは「パラサイト」。アカデミー賞の快挙にも関わらず、トランプ大統領韓国映画が受賞したことに怒りを覚え、「『風と共に去りぬ』にしよう。」と発言。これに対してアメリカでの配給を請け負っていたNEONが「そうね。彼は字が読めないから。」と皮肉混じりの引用RTを行ったことは大きな話題となった。その気概にあっぱれということで賞を。

2.次点

さて、ここからはランキング…といきたいところですが、まずは次点を。今年は本当に傑作が多くて…ってなわけで惜しくもトップ10には入らなかったものの、次点として挙げたい作品を10作品。順不同でまずはお届け。リンクは自分のfilmarksのレビューです。宜しければご覧ください。

初恋

三池崇史監督の久々の傑作ではないだろうか。ガンで余命わずかと宣告されたボクサーがある出会いをきっかけにヤクザとの抗争に巻き込まれていく濃密な一夜を描いた作品。人生一度きりならこんな一夜も悪くないと走り抜けていく様、タイトルや俳優、はたまたヤクザ映画として観てもことごとく良い意味で裏切られるこの映画は非常に面白かった。

ジョン・F・ドノヴァンの死と生

グザヴィエ・ドラン監督作。人気俳優、ジョン・F・ドノヴァンと11歳の少年ルパートは手紙で交流しているのだが、ジョンは若くして死んでしまう。そこには何が…?今年は俳優の若くしての訃報が相次いで届き、そのたびにこの映画を思い出していました。映画に関しては誰もが持つ孤独と秘密を文通を通して描かれていき、ラストは2000年代と2010年代の時代の寛容さを現してるように感じた。次作「マティアス&マキシム」を前に私小説的作品を出せたのはなかなか良い。

はちどり

1994年の韓国を舞台にして描かれる14歳の思春期と韓国の社会背景…じっくりと反芻していく展開と1994年と2020年が橋で繋がること。キム・ボラ監督がこれで長編映画初監督作品と聴いて、これからが期待できると感じた一作。

mid90s ミッドナインティーズ

アメリカ・ロサンゼルスの90年代を生きた少年少女たちを描いた作品。90年代が好きってのもあるが、物語が90年代ノスタルジーとしてすごく青春の刹那をうまく捉えてるなと感心しました。本当、今年はスケボーに乗ってみたいと思うことが多かった1年に思えます。

・スパイの妻

黒沢清監督がヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞したことでも話題となった一作。監督のホラー的演出が見事に戦争へと向かう日本の恐ろしさをも描いているという面白さ…蒼井優高橋一生東出昌大の演技が良い。東出昌大の今年の出演作を見てると下手に自粛しろとは個人的に言えなかったかな…

・おらおらでひとりいぐも

 

歳をとることをこんなにファンタジックに描くこともできる…これまでの生涯の重みもまだ生きていけるその希望もすべてをまとめて今ここ、地球で生きていけるとミニマムだけど、壮大に描かれた面白い一作。田中裕子がもう日本のおばあちゃん代表でいける歳になってきてるのかな…とも(彼女、まだ65歳ですけどね)。

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒

「KUBO」などを生み出しているスタジオライカの新作。ストップモーションアニメとしてのクオリティはもちろんのこと、物語も分かりやすく冒険譚を仕掛けており、本当はもっとたくさんの人が見て欲しいな…なんて思ったりも。

・バクラウ 地図から消された村

カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品。予告からカンヌで…?なんて思っても観ればとても納得する一作。格差を血と暴力で描かれていく怪作…拡大公開するなりしたほうがいいっすよ。

・燃ゆる女の肖像

2人の心の距離が徐々に縮まっていく様はただひたすらに美しい。そしてその美しさがエンディングのヴィヴァルディの「「四季」協奏曲第2番 ト短調 RV 315「夏」」でどう展開していくのか。たまらなかった…

・Mank/マンク

デヴィッド・フィンチャー監督の最新作。父・ジャックの脚本もあって描かれるのは「市民ケーン」が作られていく過程を脚本のハーマン・マンキウィッツの視点を通して作られた作品。1930年代ハリウッドの光影が白黒を通して描かれていく。劇中に現代の世論を作り上げていく過程にも見えたシーンがあったのが現代とのトンネルは続いたままなんだな…と。2010年代がフィンチャーの「ソーシャル・ネットワーク」で始まったとするならば、2020年代は本作を持ってして始まるのかな…と。NETFLIX映画のさらなる加速、映画の宝箱の無限大さ。

 

というわけで、以上、次点の10作品でした。

 

3.2020年映画ベスト10

お待たせしました。いよいよトップ10の発表。果たしてどんな作品をトップにしたのか…

ちなみに過去のトップ10の一覧はご覧の通り…

第10位

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY

DCユニバース最大の収穫、ハーレイ・クインの躍進がヴィラン映画とガールズチーム映画で傑作を生み出した。ジョーカーが病みきった今はハーレイ・クインしか勝たん。ここ数年のアメコミ映画の総括的一本。

第9位

私をくいとめて

のんの一人芝居が光る一作。おひとりさまが何ら不思議ではない現代において、人との距離感をどう掴めばいいのか葛藤する様…今年、人との距離感について色々と考えたこともあり、余計にいい作品だと思えた作品。

第8位

ブックスマート 卒業前夜のスマートデビュー

 

これは青春映画の新時代の到来である。スクールカーストも人種も性別ももうここまで来てるんだと感じるとともに目まぐるしい卒業前夜を駆け巡る2人の青春冒険が最高な映画。この友情があるからこそ、この一夜はより強固なものになっていく…

第7位

シカゴ7裁判

人種差別についてこれまで以上に考えた2020年に放り込まれた一作。あの猿ぐつわに言葉を失い、ラストシーンに目頭が熱くなる。2時間で裁判を描き切るアーロン・ソーキンの脚本力はやはり素晴らしいとしか言えない。

第6位

レ・ミゼラブル

あのレミゼの舞台で描かれる移民と貧困という現代問題…やがて怒りは暴動を生み出し、若者たちは将来そっちのけでその怒りを増幅させ、取り返しのつかない領域に持っていく。誰がそうさせたのか、もはや自業自得や因果応報では済まない正義がこの世にたくさん存在することに絶望感を抱かずにいられない一作。

第5位

透明人間

2020年に透明人間を描くことはこれまで描いていたことは絶対に出来ないという課題がある中でDV、モラハラに襲われる彼女の恐怖と復讐を描くことで現代において恐怖を描くこととは?という課題すらクリアしていくスリラー映画の大傑作。そして、ラストに提示されるのは「The Invisible "Man"」であることへの疑問…お見事。

第4位

1917 命をかけた伝令

映画を鑑賞することで得られる体験の一つに時代を体感することができるというのがある。本作はそれを突き詰めてカットほぼなしで描かれていく。そう、戦争を生き抜くということはリテイクもカットも許されない一度きりの物語だからだ。編集力も見事な一作。

第3位

ジョジョ・ラビット

タイカ・ワイティティ監督がヒトラーをイマジナリーフレンドにすることで描かれる愛と平和への祈念。ユダヤ人少女と出会うことで始まるジョジョの成長。ラストのあのダンスこそが愛であり、平和であり、最強なのだ。

第2位

TENET テネット

クリストファー・ノーラン監督が仕掛ける時間軸の再解釈。時間を巻き戻す行為にちゃんとその地まで逆行することの過酷さを足した。もはやタイムトラベル映画は下手に作れなくなった。もう、ハリウッドはノーラン監督の脳内に教条(テネット)するしかないのか?コロナ禍でなかなか見られなかったハリウッドメジャー映画であるということも加点ポイント。

第1位

パラサイト 半地下の家族

もう、今年は年明けからこの映画がずっと1位でした。ていうか、自分の中で「パラサイト基準」というのが出来上がっており、どんな映画を観ても、ここのリズムがな…ここの描写は…なんて考えてるうちにパラサイトを上回るものは現れなかった。この映画、格差社会というテーマをここまでのエンターテイメントに落とし込んだ一級品であると同時に無駄のないリズムと描写が展開されていく。この世が解決できない問題があの家の中にずっと蝕むこと…世は残酷でしかない。

 

ということでトップ10はこのようになりました。いかがでしょうか?

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRD OF PREY

⑨私をくいとめて

⑧ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

⑦シカゴ7裁判

レ・ミゼラブル

⑤透明人間

④1917 命をかけた伝令

ジョジョ・ラビット

②TENET テネット

①パラサイト 半地下の家族

 

4.総評と来年の映画

ということで今年のベスト10を出したところで総括を。今年はコロナ禍で4月〜6月あたりはまともに映画を観に行けず仕舞いで、配信映画の躍進にもまだまだ乗り切れてないところもあったり(配信だとこれを観ようと出かける行為がなくなるので後回しになりやすい性格が災いを生んじゃう…)と色々なことがあった1年でしたが、今年を振り返るに当たって、2020年の映画は個人的に2つあったと思うんです。

1つ目は女性の活躍や性・国籍の多様性を描いた映画が多かったこと。ベスト10にも複数、女性が主人公だったり、活躍する映画を入れてますが、これはLGBTだったり、地位向上が映画にも現れてきた証拠でもあるように感じます。もはや、増えたとかそんなこと言わなくても良い時代がすぐそこに来てるのかなとも。これからのクリエイティブに期待したいところ。

2つ目は子供たちが活躍する映画がとても多かったこと。ジョジョ・ラビット、レミゼ、ブックスマートやmid90s、ベストには入れなかったものの「アルプススタンドのはしの方」も子供たち(若者たち)が主人公の映画でしょう。2020年はZ世代という言葉も多く聞かれたように若者たちの力がより強くなってきたのではないか?という一年でした。それは映画でも現されたと思います。

この2つは2020年の映画を観てきたうえでとても感じた一年でした。2019年は時代の変容さにもう明るいだけじゃ生きていけないことについて思った一年だったのですが、まさに2020年がその通りになってしまって。映画は総じて警告を発していたんだなって改めて思いもしましたが、今年に関してはその落ち込みからまだこの世にはやれることはあると闘う希望がたくさんあふれた作品に実は出会えた一年じゃないかなと自分は思っています。

さて、来年の映画は年明けから早々に「新感染半島」が公開、その後は「シン・エヴァ」というビッグイベントが待ち受けており、坂元裕二脚本の「花束みたいな恋をした」や「ノマドランド」も気になるところ。さらにはるろ剣やシン・ウルトラマン細田守監督や湯浅政明監督×野木亜紀子脚本、ウェス・アンダーソン監督の新作、「孤狼の血ll」、「ゴジラVSキングコング」の大型ビッグマッチ、アメコミ映画もMCUはディズニー+にも作品展開を始め、DCもジェームズ・ガン監督のスースクがいよいよ公開。配信勢もNetflixからはゼンデイヤ×ジョン・デヴィッド・ワシントンやザック・スナイダー監督の新作、Amazonからは「あの夜、マイアミで」も楽しみだし、Apple TV+のルッソ兄弟×トムホの新作も楽しみ。あとはHBO Maxが日本に来るのか(ザック版ジャスティスリーグが待機中)とか2020年公開延期勢も控えていたりと現状では空白の2020年を埋めるべく新作が待機している状態だ。そのうちのどれだけが来年に出会えるのかはまだまだ不安な世の中ではあるが、来年の今頃にはこれまでの盛り上がりを映画としては取り戻して欲しいと願うばかりだ。

 

最後に。当ブログは興行を語る「週刊興行批評」を展開しておりましたが、この数ヶ月更新が途絶えてしまったことをお詫びします。なかなか私的に忙しく、書く時間がなかったです。そうしてるうちに鬼滅が歴代トップまで登り詰めてしまい…書くべきだったな。年が開ければ書けるように整えますので来年もよろしくお願いします。ここまで読んでくださってありがとうございました。それでは良いお年をお迎えください。