さあ、2018年も今日で最後。2018年最後のこのコーナーは2018年を"興行収入"という視点から振り返ろうと思います。
1.日本の興行収入ランキングトップ10
まずは日本の興行収入を邦画、洋画別に見ていくことにしましょう。
ご覧のような結果になった。さあ、ここからは様々なトピックを引き合いにしながら、今年の映画界を見ていきたい。
2.今年の日本映画界を振り返ろう!
今年はフジテレビ映画が強し!
今年の邦画トップ10のうち8作品がテレビ局が製作に参加している作品だった(赤がフジテレビ、黄が日本テレビ、緑がテレビ朝日、青がテレビ東京)。
本数で言えば、日本テレビが強いと感じるが、注目すべきはフジテレビ。
ここ最近のフジドラマでも高視聴率を記録した「コード・ブルー」を映画化し、見事に洋邦合わせても今年トップを勝ち取った。ちなみにフジテレビ映画がトップに輝くのは2012年の「BRAVE HEARTS 海猿」以来となる*1。
そして、「万引き家族」。2013年の「そして父になる」以降是枝裕和作品を支えてきたのもフジテレビ。そして、今作でついにカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。それも相まって興行収入40億を突破する大ヒットとなった。
その他にも今年、フジテレビは「今夜、ロマンス劇場で」や「いぬやしき」、「累 -かさね-」、「人魚の眠る家」、「グリンチ」、そして現在大ヒットしている「ドラゴンボール超 ブロリー」とコンスタントにヒットを連発。評価の高い作品もいくつかあるなど数字でも質でもフジテレビはテレビ局映画の中でも抜き出た1年だった。
ちなみに来年は木村拓哉主演の「マスカレード・ホテル」、「テルマエ・ロマエ」の監督が描く「翔んで埼玉」、月9ドラマの映画化「コンフィデンスマンJP」、ワンピースの新作や三谷幸喜監督の新作など期待作が続々と公開される予定だ。
ついに来た!コナンで90億!!
今年のGWの映画界を掻っ攫っていったのは間違いなくコナン、安室さんであろう。
「名探偵コナン ゼロの執行人」は91.8億円を記録。
毎年、GW映画でもしっかりヒットするコナン映画。最近は63.3億(「純黒の悪夢」)→68.9億(「から紅の恋歌」)と毎年60億以上叩き出すシリーズになっていたが、ここに来て、さらなる数字、90億を叩き出したのだ。
毎年公開される映画で90億もの数字をあげるのはなかなか出来ない、いや、初めてのことだろう。
来年は怪盗キッドをメインにした「紺青の拳」が公開。果たしてコナン映画で100億円を稼ぎ出す未来はあるのか?
今年のアニメ映画、どう見る?
今年はアニメ映画が邦画は4本、洋画は3本ランクイン。
・邦画アニメ
まずはドラえもん。「STAND BY ME ドラえもん」を除けば毎年公開されてるドラえもんシリーズとして過去最高の成績を残した。
脚本に川村元気、ゲスト声優には大泉洋と長澤まさみ。主題歌には星野源と強力な布陣で挑み、それが実った形だ。
来年の「のび太の月面探査記」もどれだけヒットするかに注目だ。
続いて、ポケモン。昨年の「キミに決めた!」(35.5億)には劣ってしまったものの、30億を稼ぎ、20年以上経っても人気シリーズの一つとなっている。
来年は「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」が公開されることに加えて、ハリウッドでは「名探偵ピカチュウ」の実写版も公開。来年は映画界もポケモン一色になる?
そして、今年、東宝は細田守監督の新作「未来のミライ」が公開されるも、前作「バケモノの子」(58.5億)から大きく劣ってしまい、夏休み映画としては物足りない成績となってしまった。
来年は同時期に新海誠監督の新作「天気の子」が公開。こちらはしっかりとヒットしていただきたい。
その他にも日本アニメはクレヨンしんちゃんが昨年を超える18.3億、僕のヒーローアカデミアが15億の大ヒット。プリキュアが過去最高の11億円を稼ぎ出した。
そして、今年、日本アニメでも評価の高かった「ペンギン・ハイウェイ」と「若おかみは小学生!」はそれぞれ3.0億、2.3億という結果となった。
・洋画アニメ
まずは「リメンバー・ミー」と「インクレディブル・ファミリー」。それぞれ50億と48億を稼いだ。さすが、ディズニー/ピクサーブランドは健在である。
来年、ディズニーアニメは「アナと雪の女王2」、ピクサーは「トイ・ストーリー4」が公開。100億円を突破するか注目を集めたい。
続いて、「ボス・ベイビー」。「マダガスカル3」以降途絶えていたドリームワークスが久々の日本公開*2。蓋を開ければドリームワークスアニメ映画で最大のヒットとなった。
来年は「ヒックとドラゴン3」が公開される予定。この勢いでドリームワークスアニメが再び、日本で立て続けに公開となるのか、気になるところ。
漫画実写映画は銀魂の一人勝ち!
今年も数多くの漫画の実写映画が製作されたが、邦画のランキングで漫画原作の映画は銀魂2とDESTINYだけだ。
DESTINYに関しては昨年公開ではあるが、今年公開の括りで言うと、銀魂2の一人勝ちという状態だ。
↑今年の漫画実写邦画の興収を一覧にしてみた。
今年はヒットの数字と云える10億円に到達した作品は3作品だけだった。
ちなみにFilmarksの評価数字も併せて載せてみたが、必ずしも評価が低いから興収が低いというのも言い難い作品がいくつかある。
今年は銀魂2が一人勝ちしたが、来年は「キングダム」や「賭ケグルイ」、「ザ・ファブル」、「東京喰種2」あたりに注目したい。
「カメラを止めるな!」はジャパニーズドリームを示した!
今年の映画を挙げる中で「カメラを止めるな!」は避けて通れない。
公開館数わずか2館からスタートし、高評価の嵐に7月にはアスミック・エースとの共同配給が発表され、8月には大手シネコンでも上映される運びとなった。
さらに、作品だけに留まらず、上田慎一郎監督の過去作公開や俳優たちはゴールデンタイムのドラマに出演*3と正しくアメリカンドリームならぬジャパニーズドリームを築き上げてしまった。
ジャニーズ映画はどうなのか?
今年は何かと不祥事も多かったジャニーズ事務所。映画界ではどうだろうか?
先ほど言及したように山下智久主演、有岡大貴出演の「コード・ブルー」は今年最大、堂本剛出演の「銀魂2」が36億円と大ヒット。
木村拓哉×二宮和也共演でも話題になった「検察側の罪人」は29.0億円とこちらも大ヒット。
TOKIOの長瀬智也主演「空飛ぶタイヤ」は16.7億円、櫻井翔主演の「ラプラスの魔女」が13.8億円、岡田准一主演の「散り椿」が7.9億円、今年デビューしたKing & Princeの平野紫耀主演の「ういらぶ。」が7.8億円とヒットした。
映画界においてはジャニーズ映画はまだまだ健在といった感じか?
邦画は10億円の壁を越えるのが難しかった1年
ヒットの基準とも云えるのが10億円。10億を突破した作品は毎年発表される日本映画製作者連盟の興収10億円以上番組に名を連ねることができる。
今年は注目作でも10億円を突破した作品は多くはなかった。
先ほど上げた漫画実写化作品のほかにも大根仁監督の「SUNNY 強い気持ち・強い愛」が9.1億円、長澤まさみ×高橋一生の「嘘を愛する女」が9.0億円、東映ヤクザ映画の復活を彷彿とさせた「孤狼の血」は6.7億円と実写邦画はメガヒットを産み出すものもあれば、苦戦を強いられる作品も少なくはなかった。
洋画はシリーズ物強し…?
邦画、洋画それぞれのトップ10の数字を足すと洋画が上回った今年(邦画471.6億、洋画514億)。
洋画はシリーズ物が強い。
まず、ジュラシックシリーズの新作「ジュラシック・ワールド 炎の王国」が80.6億円と洋画の中では今年No.1。
スター・ウォーズに関してはこのあとたっぷりと。
トム・クルーズの代表的シリーズ「ミッション:インポッシブル」の新作は45.7億円。
スパイ映画の新たなシリーズとも云える「キングスマン」の新作が20.0億円と前作(9.8億円)の倍のヒットを稼ぎ出した。
「オーシャンズ」シリーズは面子を一掃し、「オーシャンズ8」が公開。こちらは15.7億円となった。
一掃したといえば「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」。こちらも10.5億と前作(11億)とほぼ変わらないヒットとなった。
が、どんなシリーズ物でもヒットするわけではない。
前作は15.5億を稼いだ「パシフィック・リム」だったが、続編「アップライジング」は7.4億円だった。
前作がその年のベスト映画に挙げる人も多かった一方、本作はそれに続くことは出来なかったようだ。
日本でもスター・ウォーズ疲れは起きている?
昨年から荒れに荒れているのがSWシリーズ。
昨年公開された「最後のジェダイ」は75億とこちらは大ヒットと云えるが、問題はその半年後に公開された「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」。
個人的にも調べていく上で意外に思ったのだが、興行収入が20.6億円とSWにしてはかなり物寂しい数字になってしまった。
日本でもスター・ウォーズ疲れは起きていたのだ。
来年には3部作最終章エピソード9が公開。それ以降もシリーズを拡げていくというが、ディズニーとルーカスフィルムはもっと慎重にSWワールドを扱っていただきたいところだ。
音楽映画が強かった一年♪
今年も音楽映画が強かった。
まず、ヒュー・ジャックマン主演の「グレイテスト・ショーマン」が52億円。
そして、クイーンを題材にした「ボヘミアン・ラプソディ」は67億円で現在も大ヒット上映中。さらなる躍進を見せることは間違いない。
音楽映画は大画面、大音響の映画館には持ってこいのジャンル。
さらには歌うことができる上映会を開催しやすい利点があるなどヒットしやすい傾向にあり、特に近年、それがさらに顕著したということだ。
来年は現在公開中のアリーがどれだけの数字を稼ぐのか。アナ雪2も公開予定で、こちらも配給会社の策次第では色んな上映方式を楽しめることが出来そうだ。
どんどん強くなってる!ヒーロー映画!!
今年もヒーロー映画が数多く公開されたが、今年はしっかりとヒットした作品が多かった。
まず、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」。こちらは37.3億円とMCU最大のヒットとなった。
他にもMCUでは「ブラックパンサー」が14.6億円、「アントマン&ワスプ」が11.8億円と徐々にMCUブランドが浸透してきている。
そして、スパイダーマンシリーズからは「ヴェノム」が公開。21.5億円の大ヒット。
さらにはR指定ヒーローデッドプールの新作も公開され、17.4億円とヒットした。
来年はMCUはキャプテン・マーベル、アベンジャーズ4やスパイダーマンの新作、DCからはアクアマンにシャザム!、ジョーカーを主役にした映画が公開される。
MCUとは関係ないものの、スパイダーマンのアニメ映画が公開され(現在、全世界大ヒット中)、X-MENの新作も公開。
日本公開が未定だが、へルボーイの新作やX-MENのスピンオフも公開予定だ。
来年はディズニーのFOX買収でヒーローたちの境遇がどうなるのかにも注目を集めたい。
洋画もヒットする時代へ!
日本の映画業界は「邦高洋低」と云われたり、洋画はヒットするために宣伝や本編への芸能人起用だったりと何かと批判される案件も多い。
が、ここに来て、洋画もしっかりとヒットすることを示し始めた。
まずはスピルバーグ新作の「レディ・プレイヤー1」は24.1億円。ちなみに同じくスピルバーグ作品の「ペンタゴン・ペーパーズ」は6.2億円。
ディズニーでは「プーと大人になった僕」が24億円。
ワーナーでは「MEG ザ・モンスター」が14.2億円とステイサム久々の大ヒット。ディザスター映画「ジオストーム」は12億円。
ソニーでは凶暴だと話題になった「ピーターラビット」が10.6億円。
SNS上で話題になった映画もヒットしている。「クワイエット・プレイス」は7.7億円、「search/サーチ」が1.7億円と公開規模からするとヒットである。
また、アカデミー賞作品では「シェイプ・オブ・ウォーター」は7.6億円、「スリー・ビルボード」は3.4億円と近年のアカデミー作品賞受賞作の中ではヒットした年であった(オスカー前に公開をしたFOXには評価したい)。
SNS上で話題になった映画がしっかりとヒット出来る時代になったことの表れではないだろうか。
3.世界はどうなのか?
では、ここで世界の興行収入を見ていくとしよう。
10本中6本がアメコミ映画。10本中4本がディズニー映画という結果になった。
ちなみにハリウッドがあるアメリカは「ブラックパンサー」が1位となっている。
4.来年はどうなるのか?
さあ、平成から切り替わる2019年。
来年も様々な映画が公開される。
早速、来週には紅白出場も話題の人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン」の劇場版が公開。
同じく紅白出場の「刀剣乱舞」が来月公開。
そして、ディズニーは「メリー・ポピンズ」の続編、「ダンボ」・「アラジン」・「ライオン・キング」の実写化が待機。
さらには東宝がハリウッドとタッグを組み、「名探偵ピカチュウ」とゴジラの新作を公開。
夏休みには「メン・イン・ブラック」や今年話題となった「おっさんズラブ」、スパイダーマン、イルミネーションの「ペット2」が公開。
さらに、秋にはペニーワイズでお馴染み「IT」の続編、冬にはターミネーターとSWの新作が公開予定。
公開時期は未定ながらも話題のアニメ「ユーリ!!! on ICE」、ワイスピのデッカード(ステイサム)とホッブス(ロック様)を主人公にした映画、チャーリーズ・エンジェルのリブート、ソニックの実写化、ジュマンジの続編、ミュージカルのキャッツも公開予定だ。
個人的にはタランティーノの新作も気になるところだ。
来年も素敵な映画に出会えますように。今年もありがとうございました。
<追記>
先日、日本映画製作者連盟から2018年の日本年間興行収入が発表されました。
あれから「ボヘミアン・ラプソディ」は年間No.1、100億突破という大台を達成。
興行収入10億円以上の作品が邦画31本(2017年:38本)、洋画23本(2017年:24本)でした。