今週は初登場した「記憶にございません!」と「人間失格 太宰治と3人の女たち」の興行を見ていきます。
1.先週末のランキング
まずは、先週末のランキングを見てみましょう。
1位は初登場「記憶にございません!」。土日2日間で動員35万7000人、興収4億5800万円をあげ、初日から16日までの4日間の累計では動員64万6000人、興収8億1900万円をあげる大ヒットスタートとなった。
2位は「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」。土日2日間で動員20万2000人、興収2億4200万円をあげ、累計では動員89万人、興収11億円を突破した。
3位は「天気の子」。土日2日間で動員16万2000人、興収2億1200万円をあげた。
累計では、動員955万人、興収は127億円を突破し、「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」を抜いて、歴代興収ランキング18位となっている。
4位は初登場「人間失格 太宰治と3人の女たち」。土日2日間で動員12万3000人、興収1億6900万円をあげ、初日から4日間の累計では動員24万1000人、興収3億2600万円をあげる好スタートを切った。
5位は「ライオン・キング」。累計で動員441万人、興収62億円を突破。
6位は「劇場版おっさんずラブ −LOVE or DEAD−」。累計で動員150万人、興収20億円を突破。
7位は初登場「僕のワンダフル・ジャーニー」。初日からの4日間で動員12万7500人、興収1億6200万円をあげた。前作「僕のワンダフル・ライフ」(初週末2日間で動員13万9000人、興収1億6300万円/最終興収:9.15億円)並みのスタートとなった。
8位は「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 −永遠と自動手記人形−」。
9位は「ONE PIECE STAMPEDE」。累計で動員397万人、興収52億円を突破。
10位は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」。累計で動員65万人、興収9億270万円を突破した。
2.興行チェック!「記憶にございません!」
今週初登場1位にランクインしたのは「記憶にございません!」。
三谷幸喜監督最新作。中井貴一演じる記憶をなくした総理大臣が主人公の政界コメディだ。
三谷幸喜監督といえば、「THE 有頂天ホテル」の60億円という大ヒット以降日本のヒットメーカーとして力を発揮している一人であるが、映画は2015年の「ギャラクシー街道」以来4年ぶり。久々の映画監督作となった。
2015年の「ギャラクシー街道」は三谷監督作の中でも酷評ムードが目立ったのはもちろんのこと、三谷作品を観てきた今の40〜50代の世代の好みに合わなかったのか、13億円とコケてしまったわけだが*1、今作は蓋を開けてみれば、「清須会議」並みのヒットスタートとなった。
今作でも過去作同様、三谷監督自らフジテレビなどで宣伝に走った。
ここ最近のフジテレビ映画の好調は三谷幸喜監督の新作でも実を結んだ形となった。最終興収30億円以上に到達するかに注目だ。
3.興行チェック!「人間失格 太宰治と3人の女たち」
つづいて、初登場4位にランクインしたのが「人間失格 太宰治と3人の女たち」。
小説「人間失格」の誕生秘話を蜷川実花監督が手がけたオリジナル作品。太宰治を小栗旬が演じ、太宰を取り巻く3人の女性たちを宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみが演じた。
蜷川実花監督といえば、7月に「Diner ダイナー」が公開されていたが、今年2本目の新作となった。
「Diner ダイナー」をわずかに下回るスタートとなったが、10億円を超えるか否かといったところだろうか。
4.今週の注目作
ブラッド・ピットが宇宙飛行士に扮し、トミー・リー・ジョーンズと父子役で共演した主演作。
広大な宇宙を舞台に、太陽系の彼方に消えた父の謎を追う姿を描く。地球外生命体の探求に人生をささげ、宇宙で活躍する父の姿を見て育ったロイは、自身も宇宙で働く仕事を選ぶ。しかし、その父は地球外生命体の探索に旅立ってから16年後、地球から43億キロ離れた太陽系の彼方で行方不明となってしまう。時が流れ、エリート宇宙飛行士として活躍するロイに、軍上層部から「君の父親は生きている」という驚くべき事実がもたらされる。さらに、尊敬する父が太陽系を滅ぼしかねない「リマ計画」にかかわっているという。危険な実験を抱えたまま姿を消した父を捜すため、ロイも宇宙へと旅立つが……。
ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズのほかリブ・タイラー、ルース・ネッガ、ドナルド・サザーランドが共演。監督は「エヴァの告白」のジェームズ・グレイ。
「アイネクライネナハトムジーク」(9月20日公開)
ベストセラー作家・伊坂幸太郎による小説を、三浦春馬と多部未華子の共演、「愛がなんだ」の今泉力哉監督のメガホンで映画化した恋愛群像劇。
仙台駅前で街頭アンケートを集めていた会社員の佐藤は、ふとしたきっかけでアンケートに応えてくれた女性・紗季と出会い、付き合うようになる。そして10年後、佐藤は意を決して紗季にプロポーズするが……。佐藤と紗季を中心に、美人の同級生・由美と結婚し幸せな家庭を築いている佐藤の親友・一真や、妻子に逃げられて途方にくれる佐藤の上司・藤間、由美の友人で声しか知らない男に恋する美容師の美奈子など周囲の人々を交えながら、不器用でも愛すべき人々のめぐり合いの連鎖を10年の歳月にわたって描き出す。
映画の中でもキーとなる主題歌「小さな夜」と劇中音楽を、シンガーソングライターの斉藤和義が担当した。
「HELLO WORLD」(9月20日公開)
人気アニメ「ソードアート・オンライン」シリーズの伊藤智彦監督が、近未来の京都を舞台に描いたオリジナルのSF青春ラブストーリー。
2027年、京都。内気な男子高校生・直実の前に、10年後の自分だという人物・ナオミが現れる。ナオミによると、直実はクラスメイトの瑠璃と結ばれるが、その後彼女は事故で命を落としてしまうのだという。直実は瑠璃を救うため、大人になった自分自身とバディを組んで未来を変えようと奔走する。しかしその中で、瑠璃に迫る運命やナオミの真の目的、そしてこの現実世界に隠された秘密を知り……。
「君の膵臓をたべたい」の北村匠海が主人公・直実の声で声優に初挑戦。10年後からやって来たナオミの声を松坂桃李、ヒロイン・瑠璃の声を浜辺美波がそれぞれ演じる。「正解するカド」の野崎まどが脚本、「けいおん!」の堀口悠紀子がキャラクターデザインを担当。
2011年の韓国映画「ブラインド」を日本でリメイクし、吉岡里帆が視力を失った元警察官役を演じるサスペンススリラー。
警察学校の卒業式の夜、自らの過失で弟を事故死させてしまった浜中なつめ。自身も失明し警察官の道を諦めた彼女は、事故から3年経った現在も弟の死を乗り越えられずにいた。そんなある日、車の接触事故に遭遇したなつめは、車中から助けを求める少女の声が聞こえてくることに気づき、誘拐事件の可能性を訴える。視覚以外の感覚から感じ取った“目撃”情報を警察に提示するなつめだったが、警察は目の見えない彼女を目撃者と認めず捜査を打ち切ってしまう。なつめは少女を救うべく奔走し、事故現場で車に接触したスケボー少年を探し出す。やがて女子高生失踪が関連づけられ、連続誘拐事件の存在が判明。なつめは事件の闇へと切り込んでいくうちに、弟の死とも向き合うことになる。
監督は「重力ピエロ」「リトル・フォレスト」の森淳一。
「アナベル 死霊博物館」(9月20日公開)
「死霊館」シリーズに登場した呪いの人形アナベルが巻き起こす恐怖を描くホラー映画「アナベル」シリーズの3作目。
超常現象研究家ウォーレン夫妻の家に、強烈な呪いを持つ人形アナベルが運び込まれ、地下の“博物館”に厳重に封印される。ある日、夫妻が仕事で家を空けることになり、娘のジュディはシッターとしてやって来た年上の少女メアリーやダニエラと3人で一夜を過ごすことに。ところが、ダニエラが勝手に博物館へ入り込み、アナベルの封印を解いてしまう。アナベルは同じく博物館に封印されていた数々の悪霊たちを呼び覚まし、少女たちに襲いかかる。
「gifted ギフテッド」「キャプテン・マーベル」などで注目の子役マッケンナ・グレイスがジュディ役で主演を務め、「死霊館」シリーズでおなじみのウォーレン夫妻をパトリック・ウィルソンとベラ・ファーミガが引き続き演じる。「死霊館」「インシディアス」シリーズのジェームズ・ワン製作のもと、「IT イット “それ”が見えたら、終わり。」の脚本家ゲイリー・ドーベルマンが監督・脚本を手がけた。
「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」(9月20日公開)
生まれたときからウェブサイトやSNSが存在する“ジェネレーションZ世代”のティーンたちのリアルな葛藤や恋、家族との関係を描き、全米で評判を集めた青春ドラマ。
中学校生活最後の1週間を迎えたケイラは、“クラスで最も無口な子”に選ばれてしまう。待ち受ける高校生活に不安を抱える彼女は、SNSを駆使して不器用な自分を変えようとするが、なかなか上手くいかない。高校生活が始まる前に、憧れの男の子や人気者の女の子たちに近付こうと奮闘するケイラだったが……。
「怪盗グルーのミニオン危機一発」で主要キャラクター・アグネスの声を務めたエルシー・フィッシャーが主演を務め、第76回ゴールデングローブ賞の主演女優賞(コメディ/ミュージカル部門)にノミネートされた。YouTuber出身という異色の経歴を持つ人気コメディアンで、「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」などで俳優としても活躍するボー・バーナムが自身の経験をもとに脚本を執筆し、メガホンをとった。
日本人初のノーベル文学賞作家・川端康成の作品群をモチーフに、前田敦子と高良健吾が主演を務めて描いた青春群像ファンタジー。川端が幼児期から旧制茨木中学校(現・府立茨木高等学校)を卒業するまで暮らした大阪府茨木市が市制70周年記念事業として全面協力し、少年時代をもとにした「十六歳の日記」をはじめとするさまざまな川端作品の要素がちりばめられている。
簡素な木造アパートで小学生の息子と2人で暮らすシングルマザーの雪子。ある日、高校時代の同級生の訃報が届いた雪子は通夜の席に足を運ぶ。高校卒業から10年、久しぶりに顔を合わせた雪子と同級生たち。雪子たちが参列したその通夜は、これまで誰も体験したことのない奇想天外なお通夜だった。
前田敦子、高良健吾のほか、白洲迅、有馬稲子、尾上寛之、中西美帆、奥野瑛太、佐藤都輝子、樋井明日香らが顔をそろえる。閉館した銀座シネパトスを題材にした「インターミッション」で初メガホンをとった映画評論家・樋口尚文の監督第2作。
「帰ってきたムッソリーニ」(9月20日公開)
映画化もされたドイツのベストセラー小説「帰ってきたヒトラー」をベースに、舞台をイタリアに置き換え、現代によみがえった独裁者ムッソリーニが巻き起こすドタバタを描いたブラックコメディ。
現代のローマに突如よみがえったムッソリーニ。その姿を偶然にカメラに収めた売れない映像作家は、一発逆転をかけてムッソリーニのドキュメンタリー作品の制作を思い立ち、2人でイタリア全土の撮影旅行がスタートする。そっくりさんだと思った若者がスマホを向け、戸惑いながらも撮影に応じた写真がネットで拡散し、テレビ出演でのカリスマ的な演説が人々のハートをつかむなど、ムッソリーニの人気は絶大なものとなっていく。そしてムッソリーニはふたたび国を征服する野望を抱くが……。
EXILE TAKAHIRO、市原隼人、岡田義徳がそれぞれ織田信長を演じ、自分こそが本物だと主張する3人の信長と、あだ討ちに燃える元今川軍の侍たちとの攻防を描いたオリジナルの時代劇エンタテインメント。
永禄13年、かつて主君である今川義元を討たれたことへの復讐に燃える蒲原氏徳ら元今川軍の侍たちが、金ヶ崎の戦いに敗れて逃走中の織田信長を捕らえることに成功する。しかし、彼らが捕らえた信長は3人もいた。万が一、影武者の首を討ち取ってしまっては、今川家は笑いものになってしまう。蒲原らはあの手この手で本物をあぶりだそうとするが、3人の信長たちも本物を守るため「我こそが信長だ」と猛アピール。3人の信長と元今川軍の侍たちは、翻弄し、翻弄される謀略合戦を繰り広げる。
映画監督のほか小説家としても活躍する新鋭ふくだももこ監督が、かつて自身が手がけた短編映画「父の結婚」を長編化。妻を亡くした父親が再婚するまでの親子の日々を描いた原作短編映画から、舞台を離島に移し、エピソードやキャラクターを追加して家族の絆とそれに向き合う主人公の心境をより深く描き出した。
銀座のコスメショップで働く橙花は、母の三回忌に実家のある離島へ帰るが、そこでなぜか父・青治が母の服を着て生活している姿を目撃する。驚く娘を意に介さず、青治は「この人と家族になる」と居候の男性・和生を紹介する。
テレビドラマ版「この世界の片隅に」やauのCMなどで注目を集める松本穂香が主人公の橙花に扮し、長編映画で初主演を飾った。父・青治役は原作短編映画でも同じ役どころを演じた板尾創路、青治のパートナーでお調子者の居候・和生を「在日ファンク」のボーカルで個性派俳優としても活躍する浜野謙太が演じる。
ボーカルダンスユニット「M!LK」として活動するかたわら、映画「ソロモンの偽証」や「ホットギミック」などで若手俳優としても活躍する板垣瑞生が主演を務め、仁科裕貴の同名小説を映画化。
浪人生の相葉孝司は幼い頃に病で母親を亡くしたことから、「世の中にはがんばっても無駄なことがある」と、あきらめグセのついた無気力な毎日を送っていた。ある日の12時15分、孝司は自分以外のすべてのものが突然静止するという不思議な現象に遭遇する。周囲が静止する中、孝司は自分と同じように動くことができる少女・篠宮時音と出会う。2人は毎日12時15分に1時間だけ訪れる不思議なこの時間を「ロスタイム」と名付け、2人だけの時間を楽しむようになっていくが、この「ロスタイム」には、ある秘密が隠されていた。
主人公の孝司役を板垣瑞生、時音役を本作が映画デビュー作となる吉柳咲良、不思議なの現象の真実を知る医師・浅見一生役を竹内涼真がそれぞれ演じる。監督は「チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」の河合勇人。
「乱反射」(9月21日公開)
第63回日本推理作家協会賞を受賞し、第141回直木賞候補にもなった貫井徳郎の同名小説を、「舟を編む」の石井裕也監督のメガホンで映像化。メ~テレ開局55周年記念ドラマとして製作され、2018年9月にテレビ朝日系列で放送されたテレビドラマを、劇場版ディレクターズカットとして劇場公開。妻夫木聡と井上真央が主演を務め、責任の所在が曖昧な現代日本社会の縮図を描く。
幸せな家庭を営んでいた新聞記者の加山聡と妻の光恵は、ある日、公園の木が倒れる事故で最愛の息子・翔太を失ってしまう。被害者でもある聡は、新聞記者として息子の死の真相を突き止めようとするが、出会う人の誰もが謝罪せず、責任を認めず、他人のせいにする。自分の責任を認めない人たちのなかで、聡の怒りと悲しみの矛先は、次第に自分自身に向けざるを得なくなってくる。
妻夫木聡が主人公の聡、井上真央が妻の光恵を演じるほか、萩原聖人、北村有起哉、光石研、三浦貴大、筒井真理子、田山涼成、鶴見辰吾ら豪華キャストが集結。
というわけで、今週は以上。閲覧ありがとうございました。