Takaのエンタメ街道

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<週刊興行批評>「パラサイト」の6週目での1位、「1917」の初登場から考える映画の"未来"

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今週は初登場した「1917 命をかけた伝令」、6週目に突入した「パラサイト 半地下の家族」という今年のアカデミー賞を席巻した作品の興収を分析したいと思います。

 

 

1.先週末のランキング

それでは、先週末のランキングを見てみましょう。

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1位は「パラサイト 半地下の家族」。土日2日間で動員25万9000人、興収3億7200万円をあげ、累計では動員が178万人を突破し、興収も25億円に迫っている。

2位は初登場1917 命をかけた伝令」。土日2日間で動員12万4000人、興収1億8100万円をあげ、初日から3日間の累計では動員17万8000人、興収2億5300万円を記録した。

3位は「犬鳴村」。累計で動員44万6000人、興収5億7800万円を突破した。

4位は「ヲタクに恋は難しい累計で動員55万8000人、興収7億3500万円を突破した。

5位は「AI崩壊」。累計で動員61万1000人、興収7億8600万円を突破。

6位は「アナと雪の女王2」。累計では動員103万人、興収132億円を突破し、歴代興収ランキング17位となった。

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7位は初登場グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜」。初日から3日間の累計では動員4万7400人、興収6100万円をあげた。

8位は「キャッツ」。累計興収は12億円を突破。

9位は「劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー/魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO」。

10位は「カイジ ファイナルゲーム」。累計で動員138万人、興収19億円を突破した。

2.興行チェック!「1917 命をかけた伝令」

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今週、初登場2位にランクインしたのは「1917 命をかけた伝令」。「アメリカン・ビューティー」や「007 スカイフォール」などで知られるサム・メンデス監督最新作。第92回アカデミー賞で撮影賞、視覚効果賞、録音賞の3部門を獲得したことや全編をワンカット風の映像で見せることでも話題の一作だ。

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近年の主な戦争映画との興収比較だが、「ダンケルク」の動員比53%、興収比48%のオープニングとなった。最終興収は7〜10億円あたりに落ち着くだろう。

宣伝では「全編ワンカット」と宣伝はしているものの、正しくはワンカット"風"。だとしても、ワンカットに見せるのは編集技術が進歩し、観客の目も肥えた現代においては至難の技とも言える。しかし、本作でアカデミー賞の撮影賞や視覚効果賞を受賞したことからもワンカットに見せる業がしっかりと評価されたのも納得だ。これからワンカットに見せる映画も増えてくるのかもしれない。編集の技術が進歩したということは裏を返せば、そうしたワンカットに見せる業ができる可能性を拡げてるとも言えるわけでもあるのだから。

3.興行チェック!「パラサイト 半地下の家族」

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今週、ついに1位に輝いた「パラサイト 半地下の家族」。第92回アカデミー賞で外国語映画としては初の作品賞、ポン・ジュノの監督賞と脚本賞、国際長編映画賞(旧名:外国語映画賞)の4部門を受賞したことは日本でも大きくニュースとして報じられた。

ちなみに日本で韓国映画が1位を獲得したのは韓国映画最大のヒットを記録した2005年の「私の頭の中の消しゴム」(累計興収:30.0億円)以来の快挙。「パラサイト」の累計興収も25億円に迫っており、韓国映画の最大のヒットを記録するのは時間の問題だろう。

また、アカデミー賞で作品賞を受賞した作品が1位に輝いたのは2007年の「ディパーテッド」以来。昨年の同時期に指摘したとおりアカデミー賞を受賞した作品が必ずしもヒットするわけではない。だが、昨年の「グリーンブック」の21.5億円につづき、「パラサイト」も20億円超えの大ヒットを記録した。何よりも「グリーンブック」は作品賞受賞直後の週末というタイミングと日本でもしっかりと評判が良かったからというのがあるが、「パラサイト」は6週目での1位。評判が徐々に広がっていったSNS、クチコミ時代のヒットの仕方を如実に表した結果となった。

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評判は聞いても近くでやってないというのもあったかもしれない。しかし、週を追うごとに公開館数を増やしていった。それがアカデミー賞受賞直後となった先週末、一気に86館増やした。それに呼応するようにこの一週間の興収の伸びも跳ね上がった。

公開初週のブログでも書いたが、今観て欲しい作品である。それが見事にアカデミー賞の作品賞受賞、受賞直後の週末ランキング1位に現れたことは今後の日本映画界に良い効果が現れることを願っている。

受賞直後のTwitterには「日本映画」というワードがトレンド入りした。そこには日本映画に対する不満などが多く書かれていた。

「AI崩壊」について語ったときに話したことが自分が思う今の日本映画に対する不満になるのですが、

それに加えていろんな映画を観客が観る環境をもっと整備しなきゃいけないのかなとも思います。

 

「1917」のようなワンカットのように見せる編集や撮影の高さ、「パラサイト」のような話やセットの作り込みの上手さ…そのような技術を今からすぐに日本映画に求めるなんてことはしないし、今すぐにアカデミー賞を狙えるような作品を作れとも言いません。日本映画にも素晴らしい才能を持つクリエイターはいるし、そういう人がちゃんと評価され伸び伸びとする世界であれば、きっと"未来"は開かれるはずです。

色々と書いていきましたが、最後にこれだけ言わせてください。ネット上では吸血鬼に噛まれた高校生が同性を好きになるという設定の映画が「差別的だ」と炎上しています。これについては個人的に色々な思いがありますが、それを含めて今、取り巻く日本の娯楽の様々な問題について自分は「娯楽は商品を作る前に社会を作り、取り込むことを自覚するべきである」と思います。日本の娯楽が"未来"を切り開いてくれることを強く願って締めさせていただきます。

4.今週の注目作

スキャンダル」(2月21日公開)

2016年にアメリカで実際に起こった女性キャスターへのセクハラ騒動をシャーリーズ・セロンニコール・キッドマンマーゴット・ロビーの豪華共演で映画化。

アメリカで視聴率ナンバーワンを誇るテレビ局FOXニュースの元・人気キャスターのグレッチェン・カールソンが、CEOのロジャー・エイルズを提訴した。人気キャスターによるテレビ界の帝王へのスキャンダラスなニュースに、全世界のメディア界に激震が走った。FOXニュースの看板番組を担当するキャスターのメーガン・ケリーは、自身がその地位に上り詰めるまでの過去を思い返し、平静ではいられなくなっていた。そんな中、メインキャスターの座のチャンスを虎視眈々と狙う若手のケイラに、ロジャーと直接対面するチャンスがめぐってくるが……。

ケリー役をシャーリーズ・セロン、カールソン役をニコール・キッドマン、ケイラ役をマーゴット・ロビーが、ロジャー・エイルズ役をジョン・リスゴーが演じる。監督は「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」のジェイ・ローチ、脚本は「マネー・ショート 華麗なる大逆転」でアカデミー賞を受賞したチャールズ・ランドルフシャーリーズ・セロンの特殊メイクを、「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」でアカデミー賞を受賞したカズ・ヒロ(辻一弘)が担当し、今作でもアカデミー賞のメイクアップ&スタイリング賞を受賞した。

ミッドサマー」(2月21日公開) (R15+)

長編デビュー作「ヘレディタリー 継承」が高い評価を集めたアリ・アスター監督の第2作。

不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。

ダニー役を「ファイティング・ファミリー」のフローレンス・ピューが演じるほか、「トランスフォーマー ロストエイジ」のジャック・レイナー、「パターソン」のウィリアム・ジャクソン・ハーパー、「レヴェナント 蘇えりし者」のウィル・ポールターらが顔をそろえる。

スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」(2月21日公開)

志賀晃の同名ミステリー小説を映画化し、北川景子主演でヒットしたサスペンス「スマホを落としただけなのに」の続編。中田秀夫監督が再びメガホンを取り、前作に登場した千葉雄大演じるトラウマを抱えた刑事・加賀谷を主人公に、あの連続殺人事件から数カ月後の新たな事件が描かれる。

長い黒髪の女性ばかりが狙われた連続殺人事件の解決から数カ月後。同じ現場から新たな身元不明の死体が発見された。捜査にあたる刑事・加賀谷は、かつて自分が逮捕した連続殺人鬼・浦野のもとへと向かう。獄中にいる浦野が口にしたのは、浦野が師と仰ぐ「M」というダークウェブ上に存在する謎の人物だった。一方その頃、加賀谷の恋人である美乃里に謎の男の影が迫っていた。

前作に引き続き浦野役を成田凌が演じ、「乃木坂46」の白石麻衣が新たなヒロインの美乃里に扮するほか、鈴木拡樹、井浦新らが共演。前作の主役カップルを演じた北川景子田中圭も特別出演。

チャーリーズ・エンジェル」(2月21日公開)

1976~81年にテレビドラマとして人気を博し、2000年にはキャメロン・ディアスドリュー・バリモアルーシー・リューという人気女優が集結した映画版も大ヒットを記録した「チャーリーズ・エンジェル」をスタッフ&キャストを一新して再映画化。「トワイライト」シリーズなどで人気のクリステン・スチュワート、「アラジン」のジャスミン役でブレイクしたナオミ・スコット、イギリスの新星エラ・バリンスカが新たなエンジェルたちを演じる。

国際機密企業チャーリー・タウンゼント社の女性エージェント組織=通称「チャーリーズ・エンジェル」のサビーナ、エレーナ、ジェーンのもとに、「新開発のエネルギーが兵器化される」という情報がもたらされ、それを阻止すべく3人は命を懸けた戦いに挑む。

ピッチ・パーフェクト」のエリザベス・バンクスが監督を務め、自らも出演。姿を見せないチャーリーに代わり、エンジェルたちに指令を出すボスレー役を務める。

Red」(2月21日公開) (R15+)

直木賞作家の島田理生による、センセーショナルな内容が話題を呼んだ小説「Red」を、夏帆妻夫木聡の共演、「幼な子われらに生まれ」「繕い裁つ人」の三島有紀子監督のメガホンで映画化。

誰もがうらやむ夫とかわいい娘を持ち、恵まれた日々を送っているはずの村主塔子だったが、どこか行き場のない思いも抱えていた。そんなある日、塔子は10年ぶりにかつて愛した男・鞍田秋彦と再会。塔子の気持ちを少しずつほどいていく鞍田だったが、彼にはある秘密があった。

主人公の塔子を夏帆、塔子がかつて愛した男・鞍田を妻夫木聡が演じるほか、塔子に好意を抱く職場の同僚・小鷹淳役で柄本佑、塔子の夫・村主真役で間宮祥太朗が共演する。

デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆」(2月21日公開)

人気アニメ「デジモン」シリーズの20周年を記念して製作された劇場版。

1999年放送のテレビシリーズから始まった、八神太一&アグモンら“選ばれし子どもたち”とパートナーデジモンたちの成長と絆を描いた「デジモンアドベンチャー」シリーズの劇場版で、大学生になった太一たちが、再び起こった世界の異変に立ち向かう。また、2000年放送のテレビシリーズ第2作「デジモンアドベンチャー02」の“選ばれし子どもたち”である本宮大輔らも成長した姿で登場する。太一とアグモンたちが出会い、デジタルワールドを冒険した夏から10年以上がたった2010年。世界中の“選ばれし子どもたち”の周囲で、ある事件が起こり始める。その原因が「エオスモン」と呼ばれるデジモンにあることを知った太一たちは、エオスモンとの戦いに身を投じるが、その中でアグモンたちの“進化”に異変が起こる。

名もなき生涯」(2月21日公開)

ツリー・オブ・ライフ」「シン・レッド・ライン」の巨匠テレンス・マリックが、第2次世界大戦時のオーストリアで、ヒトラーへの忠誠を拒み信念に殉じた実在の農夫の物語を映画化したヒューマンドラマ。

第2次世界大戦下のオーストリア。山と谷に囲まれた美しい村で、妻フランチスカと3人の娘と暮らしていたフランツは、激化する戦争へと狩り出されるが、ヒトラーへの忠誠を拒んだことで収監される。裁判を待つフランツをフランチスカは手紙で励ますが、彼女自身もまた、裏切り者の妻として村人たちから酷い仕打ちを受けていた。

ナチスに加担するよりも自らの信念に殉じ、後に列福されたフランツを「イングロリアス・バスターズ」「マルクス・エンゲルス」のアウグスト・ディール、妻フランチスカを「エゴン・シーレ 死と乙女」のバレリー・パフナーが演じた。また、2019年2月に他界した名優ブルーノ・ガンツが判事役を務めている。

スウィング・キッズ」(2月21日公開) (PG12)

K-POPグループ「EXO」のD.O.が主演を務め、タップダンスチームが人種やイデオロギーを超えてダンスで絆を深めていく姿を描いた韓国映画。日本でもリメイクされた大ヒット作「サニー 永遠の仲間たち」のカン・ヒョンチョル監督作で、ビートルズデビッド・ボウイ、スウィングジャズのスタンダードナンバーであるベニー・グッドマンの「シング・シング・シング」など名曲の数々が物語を彩る。

1951年、巨済島捕虜収容所に新しく赴任してきた所長は、対外的イメージアップのために戦争捕虜でダンスチームを結成するプロジェクトを計画する。収容所一番のトラブルメイカーであるロ・ギス、4カ国語を駆使する通訳者ヤン・パンネ、行方不明になった妻を捜す民間人捕虜のカン・ビョンサム、ダンスの実力を持ちながら栄養失調の中国人捕虜シャオパン、前職はブロードウェイタップダンサーの黒人下士官ジャクソンが集まり「スウィング・キッズ」が結成された。そんな寄せ集めダンスチームにある公演の話が舞い込む。

D.O.がロ・ギス役を演じるほか、ブロードウェイミュージカルの最優秀ダンサーに授与される「アステア賞」の受賞者であるジャレッド・グライムスがジャクソン役を演じる。

ダンサー そして私たちは踊った」(2月21日公開) (PG12)

ジョージアの国立舞踏団を舞台に若きダンサーたちが織り成すドラマを描き、第92回アカデミー賞国際長編映画(外国語映画)部門のスウェーデン代表に選出された作品。

ジョージアの国立舞踊団で、ダンスパートナーのマリとともに幼少期からトレーニングを積んできたメラブ。カリスマ的な魅力を持つ新星イラクリの登場により、彼の世界は大きく動き出す。メラブの中に芽生えたライバル心は、やがて抗えない欲望へと変化していく。

ジョージアスウェーデン人の新鋭レバン・アキンがメガホンをとった。

COMPLY+-ANCE コンプライアンス」(2月21日公開)

俳優のほか「齊藤工」名義で映画監督としても活動している斎藤工が、企画・原案・撮影・脚本・監督ほかを務めた映画。

加速する自主規制の波に対する忖度やコンプライアンス問題に一石を投じようと製作された一作で、日本における表現の限界に挑戦。規制もないのに少しでも問題が起こらないよう、あらゆる表現が控えめになってしまう日本の今のコンプライアンスにアンチテーゼを投げかける。

カメラを止めるな!」のヒロイン役で注目された秋山ゆずきを主演に、お笑いコンビ「アルコ&ピース」の平子祐希、「ラバーガール」の大水洋介、齊藤監督の前作「blank13」にも出演した曇天三男坊らが脇を固める。

 

というわけで、今週は以上。閲覧ありがとうございました。