今週は7週目に突入した「パラサイト 半地下の家族」、初登場した「ミッドサマー」の興収を分析したいと思います。
1.先週末のランキング
それでは、先週末のランキングを見てみましょう。
1位は「パラサイト 半地下の家族」。土日2日間で動員20万4000人、興収2億9400万円をあげ、累計では動員242万人、興収33億円となっており、韓国映画の歴代記録を「私の頭の中の消しゴム」以来15年ぶりに更新した。
2位は初登場「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」。土日2日間で動員14万3000人、興収1億9700万円をあげ、初日から4日間の累計では、動員26万9000人、興収3億6000万円をあげた。前作「スマホを落としただけなのに」(最終興収:19.6億円)とは動員比85%、興収比84%となっており、15億円程度の最終興収が予想される。
3位は「犬鳴村」。土日2日間で動員8万3000人、興収1億600万円をあげ、累計では動員67万5000人、興収8億6600万円を突破した。
4位は「ヲタクに恋は難しい」。累計では動員77万人、興収10億円を突破。
5位は「1917 命をかけた伝令」。累計興収は5億3000万円を突破。
6位は初登場「デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆」。初日から4日間で動員7万8400人、興収1億2800万円をあげた。
7位は初登場「ミッドサマー」。初日から4日間で動員7万7100人、興収1億1500万円をあげた。
8位は初登場「チャーリーズ・エンジェル」。初日から4日間で動員7万6600人、興収9990万円をあげた。
9位は初登場「スキャンダル」。初日から4日間で動員7万5200人、興収9870万円をあげた。
10位は「AI崩壊」。累計興収は8億8500万円を突破した。
2.興行チェック!「パラサイト 半地下の家族」
今週も1位にランクインした「パラサイト 半地下の家族」。
先週末は公開館数を34館増やし、300館規模にまで拡大され、これまで韓国映画で最高成績だった「私の頭の中の消しゴム」の30億円を超えて、累計興収が33億円を突破するなど勢いが止まることはない。
自分も先週末、再度映画館で鑑賞してきたが、規模が一番大きいスクリーンを充てても満席という盛況っぷりで、改めて評判の高さが拡まっていることを感じました。
「パラサイト 半地下の家族」(2回目)
— Taka (@otmovie20503) 2020年2月22日
アカデミー賞から2回目の週末でもなお、満席だった。しかも、劇場の中での一番大きいスクリーンで。上映館拡大してもなお、これはすごい。おかげで多種多様な感想が溢れてた… https://t.co/1klzPMPYqH
また、ポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホが昨年末に引き続き、再来日したことも話題となりました。
日本でのパラサイト現象、まだまだ勢いが止まることを知らない…そういった状況となっています。
3.興行チェック!「ミッドサマー」
今週、初登場7位にランクインしたのは「ミッドサマー」。
「ヘレディタリー/継承」がホラー映画としての完成度も高く、人々を恐怖の淵に追いやったアリ・アスター監督の新作ということもあって、日本公開が決まるや否や、公式のツイートが1万RT、トレンド入り(公開初日にもトレンド入りしている)、Twitter運営が公式でモーメント化し情報発信をするなど公開前から話題になっていた作品だ。
蓋を開けてみると100館規模での公開ながら7位と大健闘。24日までに動員7万7100人、興収1億1500万円を突破しており、「ヘレディタリー/継承」の最終興収1億3000万円に迫る結果を公開4日間で果たす快挙を成し遂げている。
そんな話題作「ミッドサマー」はR15+指定での公開となっているわけだが、これは"修正"つきのR15+指定での公開だ。残念なことにとあるシーンでボカシがかけられた上でな公開となった。
このことについては公開されるにあたり公式からも情報を発せられており、知っている方も多いと思うが、せっかくの映画を海外と同じ趣で見れないことに残念な声が挙がっているのも事実である。
では、なぜR18+指定ではなく、R15+指定での公開に踏み切ったのか。「ミッドサマー」と同じようなケースを踏み切った作品を取り上げて考えていくことにしよう。
それは2018年に日本公開されたギレルモ・デル・トロ監督作で第90回アカデミー賞で作品賞など4部門を受賞した「シェイプ・オブ・ウォーター」だ。
この作品は↓のような感じで一箇所モザイクをかけてR18+指定からR15+指定に引き下げて劇場公開に踏み切った経緯がある(DVD版ではモザイクは消されてR18+指定となっている)。
つまり、どういうことか?R15+指定ではSEXシーンの際に腰を上下に動かすショットが明確に写ったり、全裸になっていたりすると引っかかってしまう。「ミッドサマー」もこのケースに引っかかっており、二箇所の修正を余儀なくされたのです。
特に本作においては終盤へ向けての重要シーンの一つだけにモザイクをかけるなという声は強いふうに感じます。
しかし、上述した公開前の期待の高まりやR18+指定になることにより宣伝や公開規模の縮小が余儀なくされることから修正してまでR15+指定の公開に踏み切るのはやむを得なかったように思えます。実際問題、現在公開されている劇場の半分がTOHOシネマズと単館でというよりはシネコンでかけていることが多いこと*1を考えるとR15+指定にしてまで公開する意義はあり、その結果が100館規模ながらも初登場7位に現れているように思います。
自分が観た回もかなり混雑していて、学生も多かったんです。確かにモザイクはないほうが良い。でも、たくさんの人に劇場で観て欲しいとなるとこの判断はしょうがないと自分は捉えています。R18+指定にして公開拡大が一向にメドが立たなくなる未来が出るよりかはマシだと思います。あの2箇所にモザイクがあっても(映倫の判断に頭抱えた配給会社の顔が思い浮かぶ…)。
祝祭を観に来ました。金曜日の昼だけど、かなりの混雑っぷり(学生が多し…)。 pic.twitter.com/mZrYeyK9qk
— Taka (@otmovie20503) 2020年2月21日
そして、R18+指定で観たい方に朗報。3/6にTOHOシネマズ六本木とTOHOシネマズ梅田の2ヶ所で18:30からの1回限りのR18+指定版での公開が決定。しかも、本編が20分追加されたディレクターズ・カット版での上映だ。2/27よりリクエスト上映サービスの「ドリパス」を使ってのチケット販売が開始されるのでチェックしてみては?
まあ、そうなるといずれかBlu-rayでお目にかかる日も来るのかな?
あと、最後に。「ミッドサマー」に修正はかけられていますが、2箇所ともエロ関連でグロ描写は全く修正されていません。普通のR15+指定にあるようなグロ描写よりもグロいと感じる可能性があります。その点は注意して鑑賞を勧めたいと思います。とりあえず、「ミッドサマー」、想像以上に盛り上がりそうです。
4.今週の注目作
「初恋」(2月28日公開) (PG12)
三池崇史監督が窪田正孝を主演にメガホンを取った自身初の恋愛映画。
天涯孤独の身で類まれな才能を持つ天才ボクサーの葛城レオは、試合でまさかのKO負けを喫し病院へとかつぎこまれた。医師から自分の余命がわずかであるという事実を突きつけられ、自暴自棄になりながら歌舞伎町の街を歩くレオの目に男に追われる少女モニカの姿が飛び込んでくる。ただごとではない様子からレオが反射的にパンチを食らわせた男は、ヤクザと裏で手を組む悪徳刑事・大伴だった。モニカは親の虐待から逃れるため歌舞伎町に流れ着き、ヤクザにとらわれていたという。レオは彼女を救うことを決意するが、その選択はレオがヤクザと大伴から追われる身となることを意味していた。
レオ役を窪田正孝、大伴役を大森南朋、モニカ役をオーディションで選ばれた新人の小西桜子がそれぞれ演じるほか、内野聖陽、染谷将太、ベッキー、村上淳、滝藤賢一、ベンガル、塩見三省らが顔をそろえる。
「レ・ミゼラブル」(2月28日公開)
ビクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」で知られ、現在は犯罪多発地区の一部となっているパリ郊外のモンフェルメイユを舞台に、現代社会が抱えている闇をリアルに描いたドラマ。
モンフェルメイユ出身で現在もその地に暮らすラジ・リの初長編監督作品で、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。第92回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートもされた。
パリ郊外に位置するモンフェルメイユの警察署。地方出身のステファンが犯罪防止班に新しく加わることとなった。知的で自制心のあるステファンは、未成年に対して粗暴な言動をとる気性の荒いクリス、警官である自分の力を信じて疑わないグワダとともにパトロールを開始する。そんな中、ステファンたちは複数のグループが緊張関係にあることを察知するが、イッサという名の少年が引き起こした些細な出来事から、事態は取り返しのつかない大きな騒動へと発展してしまう。
「黒い司法 0%からの奇跡」(2月28日公開)
冤罪の死刑囚たちのために奮闘する弁護士ブライアン・スティーブンソンの実話を、「クリード チャンプを継ぐ男」「ブラックパンサー」のマイケル・B・ジョーダン主演で映画化したヒューマンドラマ。
黒人への差別が根強い1980年代の米アラバマ州。犯してもいない罪で死刑宣告された黒人の被告人ウォルターを助けるため、新人弁護士のブライアンが立ち上がるが、仕組まれた証言や白人の陪審員たち、証人や弁護士たちへの脅迫など、数々の困難に直面する。
監督は「ショート・ターム」「ガラスの城の約束」のデスティン・ダニエル・クレットン。主人公の弁護士ブライアンをマイケル・B・ジョーダンが演じるほか、ブライアンが救おうとする被告人ウォルター役をオスカー俳優のジェイミー・フォックス、ブライアンとともに法律事務所で働くエバ役を、クレットン監督とは3度目のタッグとなるブリー・ラーソンが担当した。
「スケアリーストーリーズ 怖い本」(2月28日公開)
「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞を受賞したギレルモ・デル・トロが企画・製作を手がけ、恐ろしい内容や挿絵のために全米で学校図書館に置くことに対する論争が巻き起こった児童書シリーズを映画化。
ハロウィンの夜、町外れにある屋敷に忍び込んだ子どもたちが一冊の本を見つける。その本には数々の恐ろしい話がつづられており、本を持ち帰った次の日から、子どもがひとりまたひとりと消えていく。さらに、その「怖い本」には、毎夜ひとりでに新たな物語が追加されていき……。
原作は1981年に第1作が発表されたアルビン・シュワルツによるベストセラー児童書 「スケアリーストーリーズ 怖い本」 シリーズ。「ジェーン・ドウの解剖」「トロール・ハンター」のアンドレ・ウーブレダル監督がメガホンをとった。
「野性の呼び声」(2月28日公開)
ハリソン・フォードが主演を務め、アメリカの文豪ジャック・ロンドンが1903年に発表し、過去にも映画化されたことのある名作冒険小説を新たに映画化。
地上最後の秘境アラスカで地図にない土地を目指し、ひとり旅する男ソーントンが、犬ぞりの先導犬としてアラスカにやってきた犬のバックと出会う。やがてソーントンとバックの間には友情が生まれ、かけがえのない相棒となっていく。
「スター・ウォーズ」シリーズなどで数々のカリスマ的ヒーローを演じてきたハリソン・フォードが、主人公ソーントンに扮した。監督は「リロ&スティッチ」「ヒックとドラゴン」といったアニメーション映画で言葉の壁を越えた友情を描いてきたクリス・サンダース。
「架空OL日記」(2月28日公開)
お笑い芸人のバカリズムが主演や脚本を務め、2017年に放送された連続ドラマの劇場版。原作は、バカリズムが06年から3年間、銀行勤めのOLのフリをしてネット上につづり、働く女性の心理や日常がリアルに描かれていると話題を集めたブログを書籍化した「架空OL日記」。
憂鬱な月曜日の朝、銀行員OLの“私”は、眠気に耐えながらもメイクし、家を出る。満員電車に揺られ、職場の最寄り駅で仲良しの同期マキと合流。職場社に着つくと、後輩のサエや入社8年目の小峰、10年目の酒木も加わり、いつものように更衣室で就業前のおしゃべりに花を咲かせ……。
“私”をバカリズム自ら演じるほか、マキ役の夏帆をはじめ、同僚OL役の臼田あさ美、佐藤玲、山田真歩、三浦透子がドラマ版から続投。「新聞記者」のシム・ウンギョンや坂井真紀、志田未来、石橋菜津美が劇場版の新キャストとして加わった。
「地獄の黙示録 ファイナル・カット」(2月28日公開) (PG12)
「ゴッドファーザー」のフランシス・フォード・コッポラ監督が1979年に発表し、カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞したほか、膨大な製作費や過酷な撮影環境、CGなしの壮大なスケールの映像など、数々の伝説を残した戦争映画の傑作「地獄の黙示録」を、コッポラ監督自身が望むかたちに再編集した最終版。79年のオリジナル版より30分長く、2001年に発表された特別完全版より20分短いバージョンとなり、新たにデジタル修復も施された。
ベトナム戦争が激化する1960年代末。アメリカ陸軍のウィラード大尉は、軍上層部から特殊な任務を与えられる。それは、カンボジア奥地のジャングルで軍規を無視して自らの王国を築いているという、カーツ大佐を暗殺するというものだった。ウィラードは部下を連れてヌン川をさかのぼり、カンボジアの奥地へと踏み込んでいくが、その過程で戦争がもたらす狂気と異様な光景を目の当たりにする。
出演はマーロン・ブランド、マーティン・シーン、ロバート・デュバル、ローレンス・フィッシュバーン、ハリソン・フォード、デニス・ホッパーほか。
「エスケープ・ルーム」(2月28日公開)
体験型エンタテインメントとして人気を集めている「脱出ゲーム」を題材に描いたシチュエーションスリラー。
謎の送り主からの招待状に応じて賞金1万ドルの懸かった体験型脱出ゲームに参加することになった、内気な理系女子大生ゾーイ、冴えないフリーターのベン、元陸軍兵士のアマンダ、裕福な投資家ジェイソン、中年のトラック運転手マイケル、ゲーム愛好家のダニー。6人がシカゴの高層ビルに集まると、外界から隔絶された部屋に閉じ込められ、何の前触れもなく突然ゲームがスタートする。姿の見えないゲームマスターの仕かけた命懸けのゲームに翻弄される6人は、死に物狂いでゲームを進めていくうち、それぞれが過去に大惨事に遭い、その場で唯一の生存者だったという共通した過去を持っていることが明らかになる。
監督は「インシディアス」シリーズ第4作の「インシディアス 最後の鍵」を手がけたアダム・ロビテル。
「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」(2月28日公開)
初監督作「凱里ブルース」で注目を集めた中国の新世代監督ビー・ガンの第2作。
自分の過去をめぐって迷宮のような世界をさまようことになる男の旅路を描いた。途中に3Dのワンシークエンスショットが入るという演出があり、物語の中盤で主人公が映画館に入り、現実と記憶と夢が交錯する世界に入り込むと同時に、観客も3Dメガネを装着し、その世界を追体験することができる。
父の死をきっかけに、何年も距離を置いていた故郷の凱里へ戻ったルオ・ホンウは、そこで幼なじみである白猫の死を思い起こす。そして同時に、ルオの心をずっと捉えて離れることのなった、ある女性のイメージが付きまとう。香港の有名女優と同じワン・チーウェンと名乗った彼女の面影を追い、ルオは現実と記憶と夢が交わるミステリアスな旅に出る。
「劇場版 SHIROBAKO」(2月29日公開)
アニメーション業界の日常や実情、実態を描いて話題を集めたテレビアニメ「SHIROBAKO」の完全新作劇場版。監督は「ガールズ&パンツァー」などの人気作を手がける水島努。
いつか必ず一緒にアニメーション作品を作ろうと約束した、上山高校アニメーション同好会の5人。卒業後、アニメ制作会社「武蔵野アニメーション」の制作進行として働く宮森あおいをはじめ、アニメーター、声優、3Dクリエイター、脚本家など、5人はそれぞれの場所や役割でアニメーション制作に携わり、「第三飛行少女隊」で夢に一歩近づくことができた。アニメーションの世界に自分たちの居場所を見つけ、少しだけ成長した5人の前に、新たな苦悩や試練が立ちはだかる。
「娘は戦場で生まれた」(2月29日公開)
内戦の続くシリアでスマホで映像を撮り始めた女学生がやがて母となり、娘のために生きた証を残そうとカメラを回し続ける姿を捉え、カンヌ国際映画祭など各国の映画祭で高い評価を得たドキュメンタリー。
ジャーナリストに憧れる学生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホで映像を撮り始める。やがて医師を目指す若者ハムザと出会い、夫婦となった2人の間に、新しい命が誕生する。多くの命が失われる中で生まれた娘に、平和への願いをこめて「空」を意味するサマと名づけたワアド。その願いとは裏腹に内戦は激化し、都市は破壊され、ハムザの病院は街で最後の医療機関となる。明日をも知れぬ身で母となったワアドは、家族や愛する人のために生きた証を映像として残そうと決意する。
というわけで、今週は以上。閲覧ありがとうございました。
*1:最近のR18+指定で代表的だった「ハウス・ジャック・ビルト」は30館程度だった(こちらはTOHOシネマズなどの国内でも規模が大きいシネコンチェーンでは一切かけられていない)