Takaのエンタメ街道

一生を映画に捧ぐと決めたTakaが主に映画・テレビ・音楽について書くブログです。

#2020年映画ベスト10 を考えてみる

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時は、2020年。この1年、世界はコロナで一変。それはもちろん、映画を鑑賞するという行為においても同じだ。期待していた映画の公開延期、席を空けた鑑賞とマスクの常時着用、飲食の規制とこれまでの映画館鑑賞とは離れていく様、配信映画の躍進と公開延期作の配信移行による賛否両論の加熱論争…etc。2020年が映画においてもここまで冷たく、でも劇的に変わっていくとは思わなかった。この激動の年を生き抜き、映画を追ってきた、そんな年のベスト10、当ブログに載せたいと思う。

今年観た新作映画は43本。昨年よりは少し減った感じですかね…↓からベスト10を決めていきます。

 

 

1.勝手にあげたいで賞

さて、せっかくブログに書くのだから、なんか勝手にあげる賞を作ってもいいんじゃないかということで「勝手にあげたいで賞」なるものを作成。まあ、とりあえず見てってくださいな。

・ベスト・アクター

「透明人間」エリザベス・モス

「ミッドナイトスワン」草彅剛

「スパイの妻」「おらおらでひとりいぐも」蒼井優

「私をくいとめて」のん

よく、ベスト・ガイ、ベスト・ガールと区分けされがちですが、勝手にあげるので、もはやそんな性別に分けなくて良くね?ということでアクター(俳優)で一括りで。

まず、エリザベス・モスは恐怖を現し、復讐を果たしていく演技は映画の面白さを上げさせた。草彅剛(ご結婚おめでとうございます…)に関してはトランスジェンダーという役所を成し遂げ、演技の幅を広げると同時に日本においてトランスジェンダーの存在認知にも成功させたのではないだろうか(映画きっかけで良き方向に向くことを願うばかり…)。蒼井優の今年の2作品での演技はもはや名女優の看板を背負ってもおかしくない領域。「スパイの妻」に関しては最初から最後まで昭和の名女優そのものでお見事!のんの妄想相手と話すあの演技、すなわちひとり芝居に関しても褒めたほうがいいに決まってる。ということで以上の4人に勝手にあげます。

・ベスト・サポート

「1917 命をかけた伝令」コリン・ファースベネディクト・カンバーバッチ

「シカゴ7裁判」ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マーク・ライランスマイケル・キートン

この2作品に関してはそこまで情報を知らずに見たので、あれ?あの俳優出てるの!?という驚きとそこからの良い演技してんな…という納得で。こういう助役があることで映画はより引き立つのです。

・ベスト・アンサンブル

「パラサイト 半地下の家族」

「初恋」

「シカゴ7裁判」

ベスト・アクターで一括りにしてもそれは個人でしか評価できない。映画は演技の総合体で面白いと思うときもある。ベスト・アンサンブルはそれで勝手にあげます。

「パラサイト」のキム家とパク家の関係性、「初恋」のヤクザと警察と主人公のボクサーのぶつかり合い、「シカゴ7裁判」の裁判の掛け合い…どれも非常に良かった。

・ベスト・ニューカマー

ジョジョ・ラビット」ローマン・グリフィス・デイヴィス、トーマシン・マッケンジー、アーチー・イェーツ

「はちどり」キム・ボラ監督

「ミッドナイトスワン」服部樹咲

新人賞、今年はこの3人に。「ジョジョ〜」の主人公とユダヤ人の少女エルサ、親友ヨーキーの子供の成長を感じる演技、キム・ボラ監督は長編初監督、服部樹咲は初出演でここまでの表現力を魅せたことに大きな期待を込めて勝手にあげます。

・ベスト・コンビ

「フォードvsフェラーリ」キャロル・シェルビー(マット・デイモン)&ケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)

「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」エイミー(ケイトリン・ディーヴァー)&モリー(ビーニー・フェルドスタイン)

「TENET テネット」名も無き男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)&ニール(ロバート・パティンソン)

「燃ゆる女の肖像」マリアンヌ(ノエミ・メルラン)&エロイーズ(アデル・エネル)

今年は非常にブロマンス映画やシスターフッド映画に出会う機会がとても多かったように感じます。「フォード〜」のマット・デイモンクリスチャン・ベールの友情、「ブックスマート」の冴えない2人の駆け抜ける一夜、「TENET」の時間や世界と戦う中で明かされる運命、「燃ゆる女〜」の芽生えていく愛…どれも非常に素敵な仲を見せてくれたように思います。

・ベスト・ディレクター

「パラサイト 半地下の家族」ポン・ジュノ監督

「TENET テネット」クリストファー・ノーラン監督

ポン・ジュノ監督のモチーフの捉えることのうまさはオスカーでも監督賞を獲るまでに評価され、ノーラン監督はもはやハリウッドにおいて、ここまでオリジナリティで世界をアッと驚かせることを証明していることのある種の恐ろしさ…そこを評価し、勝手にあげます。

・ベスト・リバイバル

AKIRA IMAX版」

ガメラ 大怪獣空中決戦 4K HDR」(ドルビーシネマ)

今年はコロナの関係で新作映画の延期が相次いだことにより、リバイバル上映の規模が大きな作品が多かったのも印象的。そんな中でもこの2作品は特に印象に残ってます。「AKIRA」は何より2020年を舞台にしたことにより現実とリンクさせて鑑賞してしまったこと、「ガメラ〜」はドルビーシネマで鑑賞できることの幸福さを感じました。やはり、映画館で観る映画の興奮ってものは大事にしていきたい…と感じた一年でした。

・ベスト・ソング

「パラサイト 半地下の家族」「Soju One Glass」

「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」「Bitter Sweet Symphony」

「TENET テネット」「The Plan」

「おらおらでひとりいぐも」「賑やかな日々」

「私をくいとめて」「君は天然色

君は天然色

君は天然色

  • 大滝 詠一
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

選びすぎだろうか…いや、これ以上は絞れん。「パラサイト」のエンディングであの音楽で締められるあの感覚、「ジョン〜」のエンディングで流れるザ・ヴァーヴのあの曲でそっと押される清々しさ、「TENET」のトラヴィス・スコット×ルドウィグ・ゴランソンタッグの曲は鬼リピしたし、「おらおら〜」のハナレグミは作品とマッチしてたし、「私をくいとめて」の大瀧詠一の使い方もお見事だった。

・ベスト・サントラ

「パラサイト 半地下の家族」

「TENET テネット」

印象的なサントラはこの2つ。どちらも映画の興奮をさらに上げさせてくれたと思います。思わずライブラリに入れてしまいました。あと、サントラではないけど、「ブックスマート」のSpotifyの公式プレイリストはとても有能だと思いましたね…

・ベスト・オープニング

ジョジョ・ラビット」

レ・ミゼラブル

ジョジョ〜」のビートルズの「抱きしめたい」をBGMに「ハイル、ヒトラー!」というオープニングは良かったし、ラジ・リ監督版のレミゼ(こう説明しないといけないの大変ですけどもしょうがない…)は2018年のワールドカップで優勝し歓喜に沸くフランスを写したこのオープニングも良かった。エンディングを思うとまた色々と感じることがあったり…

・ベスト・シーン

「パラサイト 半地下の家族」パク家の家政婦・ムングァンをなんとかしてパク家から離れさせるシーン、チャパグリ作るシーン

「1917 命をかけた伝令」攻撃中止を告げるためにウィルが戦地を走り抜けていくシーン

ワンダーウーマン 1984」ダイアナが真実の投げ縄を使って人々に説くシーン

「パラサイト」のこの2つのシーンは構図が完璧と言えるし、「1917」は音楽やこれまでのシーンと相まって、ウィルのことを自然と応援している自分がいたことに感動し、「ワンダーウーマン」は2020年にこのシーンを公開できて良かった…と思った。

・ベスト・エンディング

「パラサイト 半地下の家族」

ジョジョ・ラビット」

レ・ミゼラブル

「透明人間」

「mid90s ミッドナインティーズ」

「燃ゆる女の肖像」

「パラサイト」のモールス信号、「ジョジョ〜」の平和の祈念を込めたデヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」をBGMにして踊る2人、レミゼの少年のあの眼差し、透明人間の見事なオチ、「mid90s」の青春タイムカプセル、「燃ゆる女の肖像」のヴィヴァルディの「「四季」協奏曲第2番 ト短調 RV 315「夏」」の猛烈な響き…6作品も選んだけど、どれも良くてだな…絞れません。

・ベスト・フード

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」エッグサンド

今年、本当に美味そうだったの、これ。食べたい(自分で作れ)…「パラサイト」のチャパグリも良いよね。

・ベスト・映画ニュース

「パラサイト 半地下の家族」がアカデミー賞で外国語映画として初の作品賞を受賞!

鬼滅の刃 無限列車編」が「千と千尋の神隠し」の興行収入を超え歴代No.1に!

ディズニー、「ムーラン」、「ソウルフル・ワールド」の劇場公開見送り

ワーナー、「ワンダーウーマン 1984」以降劇場/配信の並行公開を実施

映画ニュースにも賞を。「パラサイト」のオスカーの快挙も今年なんて随分遠い出来事にも思えてきますが、やはりあの快挙はアメリカ映画の賞で外国映画でも受賞できるんだという希望が明確になったのはとても大きいと思います。 「鬼滅の刃」が歴代1位になる日が来るとは…ある意味、このコロナ禍で劇場の空きを埋めたこと、自粛中に認知を増やしたことがあっての快挙でもあるように思えます。後半の2つのニュースは今後の映画界を見守る上でも重要なトピック。メジャー映画でも自社の配信サービスの手を借りなければならないほどもう映画館を救うにはそれしかない状況にあるってのは堪えますね…

・ベスト・トレイラー

「TENET テネット」

ザ・バットマン

 

モンスターハンター

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

今年公開された予告から5作品。「TENET」のフォートナイトでの予告解禁イベントの斬新さ、「ザ・バットマン」はわずかな撮影ながらもここまで興奮する予告を公開したこと、「モンスターハンター」の「英雄の証」を流すだけで興奮を覚える不思議さは評価したいし、「シン・エヴァ」はもはや楽しみでしかない(事前告知なしで劇場で予告解禁するイベント性はすごく良い)。

・ベスト・パンフレット

「ミッドサマー」

「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」

「TENET テネット」

「ミッドサマー」、「ブックスマート」の他にも「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」、「マティアス&マキシム」と今年は大島依提亜がデザインするパンフレットはどれも良かった。「ブックスマート」がモリーとエイミーで選べる表紙だったり、現代コメディ映画の相関図と各大学を卒業したキャラを網羅したMCU(Movie Campus Universe)は読み物として抜群だった。

「TENET」は物理学視点からの解説は鑑賞後には持ってこいな内容でベスト解説。

・ナイス宣伝賞

「アングスト/不安」犬の安否を伝える宣伝

 

「パラサイト 半地下の家族」 アカデミー賞受賞時のトランプ大統領による発言に対しての配給会社・NEONの対応

今年の素晴らしい宣伝をしたところにも勝手に賞を。まずは日本から「アングスト」。あの「ギャスパー・ノエ監督が60回以上観た」という宣伝文句などでただならぬ狂気を放っていた本作で犬が無事と敢えてネタバレするというのはナイス宣伝。結構犬猫が殺されないか心配する人っているのでそこの声を上手く拾って面白かったです。そして、海外からは「パラサイト」。アカデミー賞の快挙にも関わらず、トランプ大統領韓国映画が受賞したことに怒りを覚え、「『風と共に去りぬ』にしよう。」と発言。これに対してアメリカでの配給を請け負っていたNEONが「そうね。彼は字が読めないから。」と皮肉混じりの引用RTを行ったことは大きな話題となった。その気概にあっぱれということで賞を。

2.次点

さて、ここからはランキング…といきたいところですが、まずは次点を。今年は本当に傑作が多くて…ってなわけで惜しくもトップ10には入らなかったものの、次点として挙げたい作品を10作品。順不同でまずはお届け。リンクは自分のfilmarksのレビューです。宜しければご覧ください。

初恋

三池崇史監督の久々の傑作ではないだろうか。ガンで余命わずかと宣告されたボクサーがある出会いをきっかけにヤクザとの抗争に巻き込まれていく濃密な一夜を描いた作品。人生一度きりならこんな一夜も悪くないと走り抜けていく様、タイトルや俳優、はたまたヤクザ映画として観てもことごとく良い意味で裏切られるこの映画は非常に面白かった。

ジョン・F・ドノヴァンの死と生

グザヴィエ・ドラン監督作。人気俳優、ジョン・F・ドノヴァンと11歳の少年ルパートは手紙で交流しているのだが、ジョンは若くして死んでしまう。そこには何が…?今年は俳優の若くしての訃報が相次いで届き、そのたびにこの映画を思い出していました。映画に関しては誰もが持つ孤独と秘密を文通を通して描かれていき、ラストは2000年代と2010年代の時代の寛容さを現してるように感じた。次作「マティアス&マキシム」を前に私小説的作品を出せたのはなかなか良い。

はちどり

1994年の韓国を舞台にして描かれる14歳の思春期と韓国の社会背景…じっくりと反芻していく展開と1994年と2020年が橋で繋がること。キム・ボラ監督がこれで長編映画初監督作品と聴いて、これからが期待できると感じた一作。

mid90s ミッドナインティーズ

アメリカ・ロサンゼルスの90年代を生きた少年少女たちを描いた作品。90年代が好きってのもあるが、物語が90年代ノスタルジーとしてすごく青春の刹那をうまく捉えてるなと感心しました。本当、今年はスケボーに乗ってみたいと思うことが多かった1年に思えます。

・スパイの妻

黒沢清監督がヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞したことでも話題となった一作。監督のホラー的演出が見事に戦争へと向かう日本の恐ろしさをも描いているという面白さ…蒼井優高橋一生東出昌大の演技が良い。東出昌大の今年の出演作を見てると下手に自粛しろとは個人的に言えなかったかな…

・おらおらでひとりいぐも

 

歳をとることをこんなにファンタジックに描くこともできる…これまでの生涯の重みもまだ生きていけるその希望もすべてをまとめて今ここ、地球で生きていけるとミニマムだけど、壮大に描かれた面白い一作。田中裕子がもう日本のおばあちゃん代表でいける歳になってきてるのかな…とも(彼女、まだ65歳ですけどね)。

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒

「KUBO」などを生み出しているスタジオライカの新作。ストップモーションアニメとしてのクオリティはもちろんのこと、物語も分かりやすく冒険譚を仕掛けており、本当はもっとたくさんの人が見て欲しいな…なんて思ったりも。

・バクラウ 地図から消された村

カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品。予告からカンヌで…?なんて思っても観ればとても納得する一作。格差を血と暴力で描かれていく怪作…拡大公開するなりしたほうがいいっすよ。

・燃ゆる女の肖像

2人の心の距離が徐々に縮まっていく様はただひたすらに美しい。そしてその美しさがエンディングのヴィヴァルディの「「四季」協奏曲第2番 ト短調 RV 315「夏」」でどう展開していくのか。たまらなかった…

・Mank/マンク

デヴィッド・フィンチャー監督の最新作。父・ジャックの脚本もあって描かれるのは「市民ケーン」が作られていく過程を脚本のハーマン・マンキウィッツの視点を通して作られた作品。1930年代ハリウッドの光影が白黒を通して描かれていく。劇中に現代の世論を作り上げていく過程にも見えたシーンがあったのが現代とのトンネルは続いたままなんだな…と。2010年代がフィンチャーの「ソーシャル・ネットワーク」で始まったとするならば、2020年代は本作を持ってして始まるのかな…と。NETFLIX映画のさらなる加速、映画の宝箱の無限大さ。

 

というわけで、以上、次点の10作品でした。

 

3.2020年映画ベスト10

お待たせしました。いよいよトップ10の発表。果たしてどんな作品をトップにしたのか…

ちなみに過去のトップ10の一覧はご覧の通り…

第10位

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY

DCユニバース最大の収穫、ハーレイ・クインの躍進がヴィラン映画とガールズチーム映画で傑作を生み出した。ジョーカーが病みきった今はハーレイ・クインしか勝たん。ここ数年のアメコミ映画の総括的一本。

第9位

私をくいとめて

のんの一人芝居が光る一作。おひとりさまが何ら不思議ではない現代において、人との距離感をどう掴めばいいのか葛藤する様…今年、人との距離感について色々と考えたこともあり、余計にいい作品だと思えた作品。

第8位

ブックスマート 卒業前夜のスマートデビュー

 

これは青春映画の新時代の到来である。スクールカーストも人種も性別ももうここまで来てるんだと感じるとともに目まぐるしい卒業前夜を駆け巡る2人の青春冒険が最高な映画。この友情があるからこそ、この一夜はより強固なものになっていく…

第7位

シカゴ7裁判

人種差別についてこれまで以上に考えた2020年に放り込まれた一作。あの猿ぐつわに言葉を失い、ラストシーンに目頭が熱くなる。2時間で裁判を描き切るアーロン・ソーキンの脚本力はやはり素晴らしいとしか言えない。

第6位

レ・ミゼラブル

あのレミゼの舞台で描かれる移民と貧困という現代問題…やがて怒りは暴動を生み出し、若者たちは将来そっちのけでその怒りを増幅させ、取り返しのつかない領域に持っていく。誰がそうさせたのか、もはや自業自得や因果応報では済まない正義がこの世にたくさん存在することに絶望感を抱かずにいられない一作。

第5位

透明人間

2020年に透明人間を描くことはこれまで描いていたことは絶対に出来ないという課題がある中でDV、モラハラに襲われる彼女の恐怖と復讐を描くことで現代において恐怖を描くこととは?という課題すらクリアしていくスリラー映画の大傑作。そして、ラストに提示されるのは「The Invisible "Man"」であることへの疑問…お見事。

第4位

1917 命をかけた伝令

映画を鑑賞することで得られる体験の一つに時代を体感することができるというのがある。本作はそれを突き詰めてカットほぼなしで描かれていく。そう、戦争を生き抜くということはリテイクもカットも許されない一度きりの物語だからだ。編集力も見事な一作。

第3位

ジョジョ・ラビット

タイカ・ワイティティ監督がヒトラーをイマジナリーフレンドにすることで描かれる愛と平和への祈念。ユダヤ人少女と出会うことで始まるジョジョの成長。ラストのあのダンスこそが愛であり、平和であり、最強なのだ。

第2位

TENET テネット

クリストファー・ノーラン監督が仕掛ける時間軸の再解釈。時間を巻き戻す行為にちゃんとその地まで逆行することの過酷さを足した。もはやタイムトラベル映画は下手に作れなくなった。もう、ハリウッドはノーラン監督の脳内に教条(テネット)するしかないのか?コロナ禍でなかなか見られなかったハリウッドメジャー映画であるということも加点ポイント。

第1位

パラサイト 半地下の家族

もう、今年は年明けからこの映画がずっと1位でした。ていうか、自分の中で「パラサイト基準」というのが出来上がっており、どんな映画を観ても、ここのリズムがな…ここの描写は…なんて考えてるうちにパラサイトを上回るものは現れなかった。この映画、格差社会というテーマをここまでのエンターテイメントに落とし込んだ一級品であると同時に無駄のないリズムと描写が展開されていく。この世が解決できない問題があの家の中にずっと蝕むこと…世は残酷でしかない。

 

ということでトップ10はこのようになりました。いかがでしょうか?

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRD OF PREY

⑨私をくいとめて

⑧ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

⑦シカゴ7裁判

レ・ミゼラブル

⑤透明人間

④1917 命をかけた伝令

ジョジョ・ラビット

②TENET テネット

①パラサイト 半地下の家族

 

4.総評と来年の映画

ということで今年のベスト10を出したところで総括を。今年はコロナ禍で4月〜6月あたりはまともに映画を観に行けず仕舞いで、配信映画の躍進にもまだまだ乗り切れてないところもあったり(配信だとこれを観ようと出かける行為がなくなるので後回しになりやすい性格が災いを生んじゃう…)と色々なことがあった1年でしたが、今年を振り返るに当たって、2020年の映画は個人的に2つあったと思うんです。

1つ目は女性の活躍や性・国籍の多様性を描いた映画が多かったこと。ベスト10にも複数、女性が主人公だったり、活躍する映画を入れてますが、これはLGBTだったり、地位向上が映画にも現れてきた証拠でもあるように感じます。もはや、増えたとかそんなこと言わなくても良い時代がすぐそこに来てるのかなとも。これからのクリエイティブに期待したいところ。

2つ目は子供たちが活躍する映画がとても多かったこと。ジョジョ・ラビット、レミゼ、ブックスマートやmid90s、ベストには入れなかったものの「アルプススタンドのはしの方」も子供たち(若者たち)が主人公の映画でしょう。2020年はZ世代という言葉も多く聞かれたように若者たちの力がより強くなってきたのではないか?という一年でした。それは映画でも現されたと思います。

この2つは2020年の映画を観てきたうえでとても感じた一年でした。2019年は時代の変容さにもう明るいだけじゃ生きていけないことについて思った一年だったのですが、まさに2020年がその通りになってしまって。映画は総じて警告を発していたんだなって改めて思いもしましたが、今年に関してはその落ち込みからまだこの世にはやれることはあると闘う希望がたくさんあふれた作品に実は出会えた一年じゃないかなと自分は思っています。

さて、来年の映画は年明けから早々に「新感染半島」が公開、その後は「シン・エヴァ」というビッグイベントが待ち受けており、坂元裕二脚本の「花束みたいな恋をした」や「ノマドランド」も気になるところ。さらにはるろ剣やシン・ウルトラマン細田守監督や湯浅政明監督×野木亜紀子脚本、ウェス・アンダーソン監督の新作、「孤狼の血ll」、「ゴジラVSキングコング」の大型ビッグマッチ、アメコミ映画もMCUはディズニー+にも作品展開を始め、DCもジェームズ・ガン監督のスースクがいよいよ公開。配信勢もNetflixからはゼンデイヤ×ジョン・デヴィッド・ワシントンやザック・スナイダー監督の新作、Amazonからは「あの夜、マイアミで」も楽しみだし、Apple TV+のルッソ兄弟×トムホの新作も楽しみ。あとはHBO Maxが日本に来るのか(ザック版ジャスティスリーグが待機中)とか2020年公開延期勢も控えていたりと現状では空白の2020年を埋めるべく新作が待機している状態だ。そのうちのどれだけが来年に出会えるのかはまだまだ不安な世の中ではあるが、来年の今頃にはこれまでの盛り上がりを映画としては取り戻して欲しいと願うばかりだ。

 

最後に。当ブログは興行を語る「週刊興行批評」を展開しておりましたが、この数ヶ月更新が途絶えてしまったことをお詫びします。なかなか私的に忙しく、書く時間がなかったです。そうしてるうちに鬼滅が歴代トップまで登り詰めてしまい…書くべきだったな。年が開ければ書けるように整えますので来年もよろしくお願いします。ここまで読んでくださってありがとうございました。それでは良いお年をお迎えください。