Takaのエンタメ街道

一生を映画に捧ぐと決めたTakaが主に映画・テレビ・音楽について書くブログです。

<週刊興行批評>シン・エヴァが1週間で30億、1ヶ月で70億稼ぐのは必然なのか?

f:id:ot20503:20210413061724j:image

またまた1ヶ月も更新途絶えてしまいました。ですが、その分、記事3本同時更新です。

今回は「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の興収について振り返りながら、その興収と過去の宣伝展開から考える15年の軌跡を書いていきます。

 

 

1.3月第2週のランキング

まずは、3月第2週のランキングを見てみましょう。

f:id:ot20503:20210316122529j:image

1位は初登場シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」。土日2日間で動員76万1000人、興収11億7700万円をあげ、初日から7日間の累計では動員219万人、興収33億円を突破。最終興収53億円を記録したシリーズ前作「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」との7日間の比較で動員133.6%、興収145.1%となる大ヒットスタートを切った。

2位は初登場ブレイブ -群青戦記-」。土日2日間で動員11万1000人、興収1億4300万円をあげ、初日からの3日間で動員15万6700人、興収2億300万円をあげた。

3位は「花束みたいな恋をした」。土日2日間で動員8万9000人、興収1億1800万円をあげ、累計で動員220万人、興収29億円を突破。

4位は「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」。累計で動員2800万人、興収386億円を突破。

5位は「名探偵コナン 緋色の不在証明」。累計で動員74万人、興収10億円を突破。

6位は「太陽は動かない」。累計で動員22万4600人、興収3億100万円を突破。

7位は「ラーヤと龍の王国」。累計で動員12万2100人、興収1億5300万円を突破。

8位は「ライアー×ライアー」。累計興収は6億8700万円を突破。

9位は初登場映画 しまじろう しまじろうと そらとぶふね」。

10位は「映画 えんとつ町のプペル」。累計で動員171万人、興収23億6000万円を突破した。

 

2.3月第3週のランキング

まずは、3月第3週のランキングを見てみましょう。

f:id:ot20503:20210418052731j:image

1位は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」。土日2日間で2位以下を大きく引き離す動員42万3000人、興収6億7900万円をあげ、累計では動員322万人、興収49億円を突破した。

2位は初登場奥様は、取り扱い注意」。土日2日間で動員16万6000人、興収2億2000万円をあげ、TVドラマファンの女性を中心に集客し、初日から3日間の累計では動員22万人、興収2億9600万円をあげるヒットスタートを切った。

3位は初登場トムとジェリー」。土日2日間で動員11万9000人、興収1億5100万円をあげ、初日からの3日間で動員15万3400人、興収1億9300万円をあげた。

4位は初登場映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!」。土日2日間で動員9万6000人、興収1億1500万円をあげた。

5位は「ブレイブ -群青戦記-」。累計で動員36万1000人、興収4億6400万円を突破。

6位は「花束みたいな恋をした」。累計で動員240万人、興収32億円を突破。

7位は「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」。累計で動員2812万人、興収387億円を突破。

8位は「名探偵コナン 緋色の不在証明」。累計で動員80万人、興収11億円を突破。

9位は「ラーヤと龍の王国」。累計で動員17万7300人、興収2億2100万円を突破。

10位は初登場ミナリ」。初日からの3日間で動員3万3100人、興収4500万円をあげた。

 

3.興収チェック!「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

f:id:ot20503:20210306044047j:plain

初週末から1位にランクインしたのは「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。2007年から始まった「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ全4部作、ならびに25年に渡って続いた「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの完結編。

前回、初日の成績が観客動員数53万9623人、興収8億277万4200円という平日の月曜日が初日としては異例のメガヒットスタートを切ったことを取り上げたが、そこから初の週末を迎えた土日2日間で動員76万882人、興収11億7744万5400円を記録。初日から7日間の成績は動員219万4533人、興収33億3842万2400円を記録し、前作「Q」と比較して、動員133.6%、興収145.1%となる大ヒットスタートを切った。

全4作、実に13年以上の月日を要した「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの完結に相応しいスタートを切ったのではないだろうか。

次の週末は動員42万3398人、興収6億7939万200円。累計では動員322万2873人、興収49億3499万6800円を記録。これだけでも充分に大ヒットと言える数字ではあるが、近年の50〜100億円クラスのメガヒット作品と比較するとそれらに匹敵出来るかは難しいと読むデータもある。

f:id:ot20503:20210329033035p:plain

こちらは1週目と2週目の累計興収と週末興収の落差を示したものだ。%が高ければ、落差は低いという計算だ。つまり、「シン・エヴァ」は2度目の週末には半分近く下がってるという計算になる。やはり、多くの人が1週目に来たというのも分かるだろう。だが、あくまでもエヴァシリーズの最高興収は「Q」の53億円である。エヴァの大団円を締め括るには申し分ない数字であることは確かで、最終興収も今後、GWの兼ね合いも考えると「シン・ゴジラ」並みの80億円台に収まるというのが個人的見解だ。

4.「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が1週間で30億円、1ヶ月で70億円稼ぐのは必然なのか?

さて、今回のタイトルにもある通り、初週の1週間で30億円、1ヶ月で70億円という数字を「エヴァ」シリーズとして見たときにこれだけ稼ぐことは何ら不思議ではない、必然だと受け取れる人は何人いるだろうか。個人的には東宝東映という日本の2トップとも言える配給会社が担当に加わり、旧劇とも言える2作品や「序」は20億円前後、「破」でも40億円、「Q」で50億円を稼いだエヴァの完結編を迎えるに当たってはこの数字は熱気を浴びる感覚からしたら驚くことではない。しかし、エヴァらしいと言えばらしいと言える従来の邦画やアニメーションでは挑戦し得ない攻めた(実験的)描写が含まれている点を考えたり、新劇場版が始まった当初のことを考えたら1週間が経過した時点で30億円を稼ぐことはかなりの驚きを持つことも自分としては事実である。

改めて考えると、エヴァは日本のコンテンツを変えた作品でもある。さて、新劇場版では何を変えたのか。個人的には映画館でアニメを観ることがもはやあたりまえが一番にあると考える。

f:id:ot20503:20210409060132p:plain

上の図は青の棒グラフが10億円を稼ぎ出した邦画のうちアニメ映画が占める比率、オレンジの折れ線グラフがその年に公開された60分以上のアニメ映画の本数を新劇場版が始まる前の2年前にあたる2005年から昨年の2020年のグラフである。10億円のアニメ映画の比率こそ年によってまちまちであるが、アニメ映画の本数を見ると15年の間で1.6倍に増えている。もちろん、新海誠監督作やジブリなどもこの間に上映されており、エヴァだけのおかげではない。しかし、この15年の間にアニメのリブートなどを劇場版でやろうとする動きや連作で劇場版をやることの可能性を見せたのはエヴァのおかげであるだろう。

f:id:ot20503:20210413061015j:image

改めて、製作発表当時の庵野総監督による所信表明を見てみよう。「本来アニメーションを支えるファン層であるべき中高生のアニメ離れが加速していく中、彼らに向けた作品が必要だと感じます。現状のアニメーションの役に少しでも立ちたいと考え、再びこのタイトル作品に触れることを決心しました。」と書かれている。新劇場版が作られた15年を振り返ってみると、エヴァというアニメが一般層に普及していく光景を、アニメを観るということがもはや何ら恥ずかしいものではなくなり、経済が動く事例を多々出せるほどのコンテンツ力になったのではなかろうかと感じる。TVシリーズをリアルタイムで見た人たちが立派に経済を動かす側(マーケティングをする側)になったこともあるが、衣食住に対するコラボを展開したことは大きいだろう。

f:id:ot20503:20210413061247j:image

そこには自社のみで制作を展開してきたカラーがしっかりと版権管理していたことが功を奏しているとも思います。エヴァのような制作展開は作品の手法、宣伝手法ともにまだまだ一般化になるレベルには到達してないにはせよ、自社の配給、インディーズの配給会社(クロックワークス)にお手伝いした「序」や「破」の頃から東宝東映という日本の二大配給会社を自社とともに配給にしたこの15年の軌跡というものは日本映画史の中でしっかりと語り継がなければならないことであり、こうした手法がさらに日本で産んでくれないかなという夢を自分は抱いている。だからこそ、この興収はこの軌跡を辿ってきた末においては必然なのである。

さて、「シン・エヴァ」でエヴァンゲリオンシリーズを完結させた庵野秀明監督。監督自身はここで息抜きをしていない。旧劇場版がエロスや実写、アニメの新たなる方向性への探究心から「ラブ&ポップ」、既存の声優の囚われない「彼氏彼女の事情」などを製作したように、新劇場版には彼自身の創作のルーツとも言える特撮愛の還元が始まるのではないだろうか(「シン・エヴァ」も正しくその愛が溢れたシーンがある)。「シン・ゴジラ」を成功させた東宝は同じコンビである樋口真嗣監督による「シン・ウルトラマン」(庵野は脚本を担当)を公開(元々初夏公開だったが、公開延期中)、東映は「シン・仮面ライダー」を2023年公開に向けて監督として庵野を起用し製作を進めている。庵野秀明が日本の映像史に名を刻む監督となることになる瞬間をまだまだ我々は向き合うことになりそうだ。そして、「シン・エヴァ」がどこまで稼ぐのかを見守っていきたいところだ。

 

5.今回の更新

今週は3回分の記事を同時更新しました。ひとつは「モンスターハンター」の日本興収と「ゴジラvsコング」の世界興収、もうひとつは「名探偵コナン 緋色の弾丸」の公開規模について書いております。よろしければご覧ください。 

 

 

というわけで、今回は以上。閲覧ありがとうございました。