Takaのエンタメ街道

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「So kakkoii 宇宙」感想〜この世界の日常には小沢健二がいるじゃないか!〜

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ついにこの時がやってきた。2019年11月13日、小沢健二の実に13年ぶりのアルバム、ボーカル入りとなると17年ぶりのアルバムとなる「So kakkoii 宇宙」が発売された。

自分も大学の授業が終わってすぐさまセブンイレブンで予約してあったタワーレコードの品物を取りに行きました。

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小沢健二にハマったのは2016年。偶然、NHKEテレでやってた「ニッポン戦後サブカルチャー史III 90'sリミックス」を見たときだ(ここに出演してるのが先週、Mステで小沢健二愛を語った風間俊介が出演しているのも偶然)。渋谷系というのを取り上げた際に小沢健二というワードが降りかかった。この時代というのはとても便利ですぐにネット検索。YouTubeでありとあらゆる言葉(歌)を知った。そして、気づいたら自分から小沢健二の曲なぞ離すことは不可能な状態が出来るくらいにハマった。猛烈にハマった。もはや、人生で最高のアーティストだと思うくらいだ。そして、そうやってハマっていくうちに突如として「流動体について」をリリース。もう離れる気なんてなくなった。そして、今に至るわけです。

まあ、こうやって小沢健二との出会いを無駄に書きはしたが、つまり今回のアルバムがリアルタイムで聴く初めてのアルバムなのです!ついにこの時が来てしまったのか…というわけで、今回はせっかくなので、こんな最高に待った最高のアルバムの感想でも書いてみようと思います。

 

 

1.ジャケットや歌詞カードからスゴい…

これまでもそうでしたけど、小沢健二さんはサブスク(ストリーミング)全盛期であってもCD実物を買いたくなるのはジャケットから攻めてるからなんですよね。「流動体について」、「フクロウの声が聞こえる」、「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」とどんどんCDという概念を打破していってきたわけですが、今回はどうなんでしょう?

買ってない人はあまり見ないほうがいいかな…?これは買って体感して欲しいけど、画像は載せるので見たい人はそのままスクロールだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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やってくれましたね…普通のアルバムサイズになったなと思ったら、情報量はシングルと変わらない。つまり密度は濃い。本当に3850円?

そして、マジでカード形式となった歌詞カード。それぞれ銀箔で型押ししたもので、形も丸ではあるものの、統一はされてない。片づける際に収めるのが面倒くさいんですけど、そこがサブスク全盛期時代にCD実物を買って良かったなと思えるんですよね〜(ベタ褒め)。いや、本当に3850円ですか(本当に気になるので2回使わせていただきました)?

そして、ジャケット。表はまさかの息子さん・凛音(Big Gakincho Smile・DJ Riri 6歳)だ。

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「彗星」のMVに出演したりと普通に考えてここまで自分の子供を登場させるというのは異常とも見て取れると思ってしまったが(別に「流動体について」でもりーりーはジャケットやMVに出ていたので変には驚かないけどさ…)、アルバムで自分の子供の成長の一端を収めるという…本来のアルバムの意味を通してる。今回のアルバムは子供が生まれた小沢健二の音楽を聴くことができるのでこのジャケットはすごく正しいんです。

 

2.アルバムを聴いていこう

さて、アルバムの外面、ジャケットは見てきたので、内面、曲を聴いていくことにしよう。

①「彗星」

 

さあ、10年以上のブランクを空けてのアルバムの一曲目は先月に先行配信されたこの曲。1995年から2020年へのトンネルを作り、未来へとぶっ飛ぶかのような、「強い気持ち・強い愛」並みの多幸感を最初に聴いたとき感じた。そして、最後の「あふれる愛がやってくる その謎について考えてる 高まる波 近づいてる 感じる」という歌詞がこれからの9つの小沢健二が想像する宇宙、愛を感じ、さらなる曲が到来することを予感させる。確実に僕の部屋にも届いていますよ。

②「流動体について」

 

こうして1995年から2020年へのトンネルが開かれた曲の次に到来するのはそんな小沢健二自身が羽田空港へと降り立つところから始まる曲である。

やはり、この曲を聴いてふと思い出すのは1997年にリリースされ、1998年、渡米前のラストシングル「春にして君を想う」のラストに収録されたシークレットトラック「ある光」(自分が小沢健二の曲の中で一番好きな曲です)でしょう。

この線路を降りたら赤に青に黄に

願いは放たれるのか?

今そんなことばかり考えてる

なぐさめてしまわずに 

 (ある光より)

もしも 間違いに気がつくことがなかったのなら?

並行する世界の僕は

どこらへんで暮らしてるのかな

広げた地下鉄の地図を隅まで見てみるけど 

神の手の中にあるのなら

その時々にできることは

宇宙の中で良いことを決意するくらい

(流動体についてより)

 

摩天楼の雪 融かされる日に

あと15分ばかりでJFKを追い

 

 (ある光より)

羽田沖 街の灯が揺れる

東京に着くことが告げられると

甘美な曲が流れ

僕たちは しばし窓の外を見る

(流動体についてより)

 

うむ。「ある光」でアメリカへ行ってしまった小沢健二がそれから19年ぶりの歳月を経て突如としてリリースしたシングルで東京へ戻り、その東京の美しさを我々・人間や地球、宇宙の美しさと合わせて歌い上げたこの曲。それをアルバムでは「彗星」の次に置いてきた。

数学的 美的に 炸裂する蜃気楼

彗星のように昇り

起きている 君の部屋までも届く

(流動体についてより)

繋がってますね…そういえば……

小沢健二自身も東京にちゃんとカムバックしてるみたいですね。

dot.asahi.com

 

③「フクロウの声が聞こえる (魔法的オリジナル)

さて、続いてやってきたのはチョコレートのスープに散歩に行くという絵本に出てきそうなファンタジミックな歌い出しで始まり、〇〇と△△が一緒にある世界を見事なまでに歌い上げるこの曲。

2017年にリリースされた小沢健二SEKAI NO OWARIとのバージョンではない。2016年に開催された「魔法的 Gターr べasス Dラms キーeyズ」を基にしている。シングル版とはアレンジが変わっているため、見事に味が違っている。さらに、「芽生えることと朽ちること〜」を2回もやるというもはやグッチャグッチャ。でも、その混ざり具合が気持ちいい。

渦を巻く宇宙の力に導かれる6分。6分もあります…シングルとアルバムでここまで違いを見せるとは。僕はセカオワ版も好きですけど、これはこれでありですよ。

 

④「失敗がいっぱい


新アルバム発表の際のティザー映像で流れていたBGMはこれですね。この曲はすごく心に来る…失敗を肯定してくれる見事な曲で落ち込んだ時にこれ聴いたらかなり勇気をもらえそうです……「涙に滅ぼされちゃいけない」見事な言葉選びです。唱和したい。

また、この曲、かなり見事な的を射ていて…

可愛い人たち どうしてでしょう

性格めちゃくちゃに悪いよね

つけ上がらせてる 世の中のせい

 

しちゃいけないこと しちゃうんだよ

鶴の恩返しのネタバレだけど

開けちゃいけない襖って

開けちゃうよね

(「失敗がいっぱい」より) 

突如「鶴の恩返し」のネタバレといってやっちゃだめと言われながらもついついやっちゃうという事例を日本人なら誰もが知ってる物語のネタバレという失敗で歌い上げるって天才か!と震え上がるしかなかったですね…

小沢健二の音楽を聴いて勇気を貰うという感覚を代弁してるような歌詞「感じないを感じちゃうにする 音楽へようこそ!」と歌われたその先は…

 

⑤「いちごが染まる

「音楽へようこそ!」と歌い上げた次に待ち受けていた曲にまたまた震え上がる。「いちごが染まる」ではないか!大正解。見事な繋がりだ。

染み渡る詩と緩急ある曲調。2010年のコンサートツアー「ひふみよ」から約10年の時を経てスタジオ音源化しただけはあるなと思いつつ、この曲が音源化するのであれば、2010年以降にライブで披露した曲たちもぜひとも音源化して繰り返し聴きたいという思いがさらに強くなった。音源化してください。お願いします…

 

⑥「アルペジオ (きっと魔法のトンネルの先)」 


↑ライブ「飛ばせ湾岸 2 nights、guitar bass drums で So kakkoii 宇宙へ」は行っていませんが、このように各々のスマホで様々な視点で撮って、ネットに拡散するって行為、すごく令和って感じがすると勝手に思っています。良いよな…

さて、アルバムも折り返し。続いては岡崎京子原作の「リバーズ・エッジ」の実写映画版の主題歌になった曲。

この曲はまるで手紙を貰ったかのような一曲だなと最初聴いたときから感じるんです。「汚れた川と汚れた僕ら」が手を強く握り、トンネルを抜けた先にあるのは「君と僕の心を愛す人」、「君と僕の言葉を愛す人」。本当の心は 本当の心へと届き、汚れた川は 再生の海へと届く…これまた静かだけど、心の真髄にまで届く多幸感ある歌ですよね。

アルバムでも二階堂ふみ吉沢亮の語りパートは健在です。あそこのリリックは口ずさみたくなる不思議さ…良い。

 

⑦「神秘的」 

「流動体について」のカップリングになってた一曲。初披露は2012年の「東京の街は奏でる」なので7年経過していることになっている。すごく心地いい音色ですよね…

 

⑧「高い塔」 

もし、このアルバムで一番好きな曲はと聞かれたら、この曲になるかもしれない。何せ、詩がとんでもない。あれは一回日本を離れた小沢健二だからこそでき得た一曲のように感じる。東京タワーと東京スカイツリーという日本の高い塔たち。あとはバベルの塔も絡んでたりするのだろうか?絶対、我々はまだ歌詞の真髄に気づいてない気がする。でも、その言葉たちが異国風のイントロとリズミカルに乗せられる…これはとんでもない曲だ。とんでもない…ライブでぜひともやって欲しい一曲。

 

⑨「シナモン (都市と家庭)」

もう今年のハロウィンは終わってしまったが、ハロウィンをテーマにした楽曲。「友愛の修辞法は難しい 恋文よりも高等で」っていう歌詞がすごく好きです。

 

⑩「薫る (労働と学業)」

都市と家庭について歌われた後は労働と学業。このアルバム最後の曲であり、見事な締めとなっている。個人的に聴いていて感じたのが脳内でエンドロールが流れてる状態なんですよね…終わるんだ、小沢健二のアルバム終わるんだと思っても歌詞の中身は「ここまで聴いてくれてありがとう。ここからは日常に帰ってその力を労働や学業で見せつけてよ」という歌手としてここまで具体化するかとも言える歌詞の数々だった。

そして、歌はこう締められてゆく…

君が僕の歌を口ずさむ

僕はひそかに泣いちゃうんだよ

それは

男性の中の女性の

あるいは

女性の中の少年の

あるいは

少年の中の老人の

喜びか?

 

ありがとうよ 友よ いてくれて

So kakkoii 宇宙の中に

暗い路地の壁に 森の木に

僕らがいたこと 標してこう

 

君が僕の歌を口ずさむ

約束するよ そばにいると

それは

軟弱の中の硬脈の

あるいは

繊細の中の大胆の

あるいは

プレイボーイの中の初恋の

輝きか?

 

生み出してゆく

笑う目と目が

形のない

新しいもの

 (「薫る (労働と学業)」より)

 

これほど、このアルバムが現したかったものはないんじゃないかな?「So kakkoii 宇宙の中に 暗い路地の壁に 森の木に 僕らがいたこと 標してこう」とか「君が僕の歌を口ずさむ 約束するよ そばにいると」とか。日常に小沢健二はこれからも居続けるよっていうのをちゃんと歌詞にして届けてアルバムの最後に持ってくるって本当にすごい…

 

3.最後に

ボーカル入りは17年ぶりのアルバム、リアルタイムで体感するのは初めてのアルバムだったわけだが、僕はこれは21世紀の、令和のLIFEを彩る一枚であると思いますね。「LIFE」が20世紀、平成のLIFEを彩ったとするなら、それに並ぶ、いや、時代が違うから比較にはならないと思わせる2010年代の小沢健二の集大成が完成したように思えます。 まだまだこのアルバムで味わえると思いますね…というよりこの味が出てくるのはきっとまだまだ先だったりして。20年くらいどういう味がするだろうか。未知数だが、明らかに言えるのは1998年を最後に日本での音楽活動を休止、その間にたくさんの国を周り、結婚、2人の子供の父となられた小沢健二の音楽というのが今になって詰めれたのはとても面白いことだなと感じます。これまでのキャリアと活動を休止した時に蓄えたエネルギーが宇宙を作り出して、我々に届き、日常に還元される…そんな奇跡の塊があるこの世界の日常で小沢健二が奏でてるのを知ってること。これこそ奇跡である。ありがたき幸せ…

さあ、日常に帰ろう。僕たちにはこの宇宙の現実を見つめながら、多幸感で満ちてくれる"小沢健二"というアーティストがそばにいるのだから。

 

So kakkoii 宇宙

So kakkoii 宇宙