今週は「劇場」と「TENET テネット」の上映展開にまつわるニュース、ジブリの再上映を見ながら、劇場とストリーミングサービスとの距離感を考えていきたいと思います。
- 1.先々週末のランキング
- 2.先週末のランキング
- 3.「劇場」と「TENET テネット」から見る映画館とストリーミングサービスとの距離
- 4.スタジオジブリ映画の再上映はコロナ再開後の映画館を救うのか?
- 5.今週の注目作
1.先々週末のランキング
まずは、先々週末のランキングを見てみましょう。
1位は初登場「ドクター・ドリトル」。土日2日間で動員8万1500人、興収1億1300万円をあげ、初日から3日間の累計では動員10万7000人、興収1億4800万円となっている。
2位は「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」。累計では動員10万5000人、興収1億3800万円を突破した。
3位は初登場「水曜日が消えた」。初日から3日間の累計興収は4041万6400円となっている。
4位は「心霊喫茶「エクストラ」の秘密-The Real Exorcist-」。累計興収は5億1400万円を突破。
5位は初登場「エジソンズ・ゲーム」。初日から3日間の累計興収は2336万9860円となっている。
6位は「パラサイト 半地下の家族」。
7位は「天気の子」。
8位は「一度死んでみた」。累計興収は4億4770万円を突破。
9位は「デッド・ドント・ダイ」。累計興収は7700万円を突破。
10位は「AKIRA 4Kリマスター版」。累計興収は1億630万円を突破した。
2.先週末のランキング
つづいて、先週末のランキングを見てみましょう。
1位は初登場「千と千尋の神隠し」。初日から3日間の累計興収は1億1850万円となっている。
2位は初登場「もののけ姫」。初日から3日間の累計興収は1億1020万円となっている。
3位は初登場「風の谷のナウシカ」。初日から3日間の累計興収は1億960万円となっている。
4位は初登場「ランボー ラスト・ブラッド」。初日から3日間の累計興収は1億4500万円となっている。
5位は「ドクター・ドリトル」。累計興収は3億2500万円を突破。
6位は初登場「ソニック・ザ・ムービー」。初日から3日間の累計では動員4万7400人、興収6290万円となっている。
7位は「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」。累計興収は2億690万円を突破。
8位は「水曜日が消えた」。累計興収は9760万円を突破。
9位は初登場「ゲド戦記」。
10位は「心霊喫茶「エクストラ」の秘密-The Real Exorcist-」。
3.「劇場」と「TENET テネット」から見る映画館とストリーミングサービスとの距離
ここ2週間で起きた映画トピックを振り返ると大きなトピックが2つあった。
1つは又吉直樹原作、行定勲監督、山崎賢人、松岡茉優主演の「劇場」が7/17に公開が決まった。しかし、この公開決定は他の公開延期からの公開決定とは一味違う。なんと、配給だった松竹とアニプレックスが降り、代わりに吉本興業が担当して、公開規模を縮小してミニシアターを中心に展開。さらには映画館との公開と同日にAmazon Prime Videoにて全世界同時配信を行うと発表したのだ。
これまで「Fukushima 50」がレンタル配信をするなどの形は取られていたが、全世界をターゲットとした見放題映像サービスに日本の新作の実写映画が劇場公開と同時に参入することは初めてと言えるくらいの衝撃なのだ。コロナ禍での決断とはいえ、これからの日本映画の新たなる公開形式になっていくかもしれない。
もう一つは日本ではなく、アメリカから。全世界が待ち望んでいるクリストファー・ノーラン監督の新作「TENET テネット」の公開延期だ。もともとは7月17日に全米公開だったが、31日に延期し、さらには8月12日に再延期した。また、「ムーラン」に関しても7月24日に延期したものの、8月21日に再延期した。どちらもアメリカの映画館再開が難航したことで1ヶ月近くの延期となった。
しかし、「TENET」に関してはノーラン監督の映画館での体験を守りたいという思いをワーナー側が受け取り、業界の復活に一石投下するべく、先陣を切るといった話があるなど、映画館での公開にこだわっている。
以上の2つのトピックはコロナによって映画館とストリーミングサービスの距離感が近づきつつある中で起きたことに思える。映画館での体験はこれからも廃れることはないと思うが、ストリーミングのあるべき形とは何だろうか。劇場公開とのタイムラグはこれからどうなるのか。劇場公開されずにストリーミング送りされるものがどれだけ生まれるのか。まだまだ読めないところにいる。
4.スタジオジブリ映画の再上映はコロナ再開後の映画館を救うのか?
そして、先週末(6月26日)からは「一生に一度は、映画館でジブリを。」と題して、「千と千尋の神隠し」、「もののけ姫」、「風の谷のナウシカ」、「ゲド戦記」が全国372館で再上映が開始された。
これまでも再上映がされたことはあるが、ここまで全国規模で再上映されるのはジブリとしては初めてのことになるだろう。
そして、さすがは日本一の興行成績を収めているだけある。新作もある中でトップ3を独占。旧作は本来ランクインしない形を取っているが、今回は異例の形となった。そして、3日間で1億円以上を稼ぎだす作品もあった。旧作であるにも関わらずだ。
3.11以降初めて100億円の大台を突破したのは2013年の宮崎駿監督の「風立ちぬ」だった。2016年の「レッドタートル」以降、新作の公開がないにも関わらず、ジブリのブランドが廃れることはなく、集客効果があることを改めて証明したことになる。コロナ再開後の映画館としてはジブリの再上映はありがたいと感じる面もあるだろう。ぜひとも、今後も第2弾と続いても良いのではないのだろうか。コロナ後の映画館を救うのはジブリかもしれない。
5.今週の注目作
「MOTHER マザー」(7月3日公開) (PG12)
「日日是好日」「光」の大森立嗣監督が長澤まさみ、阿部サダヲという実力派キャストを迎え、実際に起きた「少年による祖父母殺害事件」に着想を得て描いたヒューマンドラマ。プロデューサーは、「新聞記者」「宮本から君へ」など現代社会のさまざまなテーマを問いかける作品を立て続けに送り出している河村光庸。
男たちと行きずりの関係をもち、その場しのぎで生きてきたシングルマザーの秋子は、息子の周平に異様に執着し、自分に忠実であることを強いてきた。そんな母からの歪んだ愛に翻弄されながらも、母以外に頼るものがない周平は、秋子の要求になんとか応えようともがく。身内からも絶縁され、社会から孤立した母子の間には絆が生まれ、その絆が、17歳に成長した周平をひとつの殺人事件へと向かわせる。
長澤まさみがシングルマザーの秋子、阿部サダヲが内縁の夫を演じる。息子・周平役はオーディションで抜てきされた新人の奥平大兼。
「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」(7月3日公開) (PG12)
巨匠ウディ・アレン監督が、ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメスら人気若手俳優たちをキャストに迎えメガホンをとったロマンティックコメディ。
大学生のカップル、ギャツビーとアシュレーは、ニューヨークでロマンチックな週末を過ごそうとしていた。そのきっかけとなったのは、アシュレーが学校の課題で有名な映画監督ローランド・ポラードにマンハッタンでインタビューをするチャンスに恵まれたことだった。生粋のニューヨーカーのギャッツビーは、アリゾナ生まれのアシュレーにニューヨークの街を案内するためのさまざまなプランを詰め込む。しかし、その計画は狂い出し、思いもよらないさまざまな出来事が巻き起こってしまう。
「カセットテープ・ダイアリーズ」(7月3日公開)
1980年代のイギリスを舞台に、パキスタン移民の少年がブルース・スプリングスティーンの音楽に影響を受けながら成長していく姿を描いた青春音楽ドラマ。
87年、イギリスの田舎町ルートン。音楽好きなパキスタン系の高校生ジャベドは、閉鎖的な町の中で受ける人種差別や、保守的な親から価値観を押し付けられることに鬱屈とした思いを抱えていた。しかしある日、ブルース・スプリングスティーンの音楽を知ったことをきっかけに、彼の人生は変わり始める。
出演は「キャプテン・アメリカ」シリーズのヘイリー・アトウェル、「1917 命をかけた伝令」のディーン=チャールズ・チャップマン。監督は「ベッカムに恋して」のグリンダ・チャーダ。
「イップ・マン 完結」(7月3日公開)
「ムーラン」「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」など、ハリウッドでも活躍するドニー・イェンが、ブルース・リーの師匠として知られる詠春拳の達人イップ・マン(葉問)を演じる伝記アクションシリーズ第4作。
1964年、サンフランシスコに渡ったイップ・マンは、弟子であるブルース・リーとの再会や太極拳の達人ワンとの対立などを経て、アメリカという異国の地で生きる同胞たちが直面している厳しい現実を身をもって知る。そんな中、中国武術を敵視する海兵隊軍曹バートンとの戦いでワンが敗北を喫してしまう。香港に残して来た息子にある思いを伝えたイップ・マンは、宣告された病を隠して、人びとの誇りのために最後の戦いへと挑む。
シリーズ最終作となる本作は、香港電影金像奨で監督賞をはじめとする9部門にノミネートされた。監督は「イップ・マン 序章」「イップ・マン 葉問」「イップ・マン 継承」と、シリーズ全作品を手がけたウィルソン・イップ。
「アングスト 不安」(7月3日公開) (R15+)
1980年にオーストリアで実際に起こった殺人鬼ベルナー・クニーセクによる一家惨殺事件を映画化した実録スリラー。83年にオーストリアで製作され、日本では88年に「鮮血と絶叫のメロディ 引き裂かれた夜」のタイトルでレンタル用VHSとして発売された作品を2020年に劇場初公開。
刑務所出所後の殺人鬼が感じる不安、プレッシャーによる異様な行動や心理状態、それらを冷酷非情で凶暴なビジュアル、斬新なカメラワークで表現。陰惨な世界観を「U・ボート」「アンダーワールド」のアーウィン・レダー演じる殺人鬼のモノローグでつづっていく。音楽を元「タンジェリン・ドリーム」のクラウス・シュルツ、撮影をアカデミー短編アニメ賞を獲得した「タンゴ」やジョン・レノン、ミック・ジャガーなどのMVを手がけたズビグニェフ・リプチンスキが担当。監督は本作が唯一の監督作品となるジェラルド・カーグル。
「一度も撃ってません」(7月3日公開)
「半世界」「エルネスト」の阪本順治監督、「野獣死すべし」「探偵物語」の丸山昇一脚本によるハードボイルドコメディ。18年ぶりの映画主演となる石橋蓮司が、冴えない小説家と伝説の殺し屋という2つの顔をもつ主人公を演じる。
ハードボイルドを気取る小説家の市川進。まったく原稿が採用されない時代遅れの作家である市川には伝説の殺し屋・サイレントキラーというもう1つの顔があった。しかし、彼は一度も人を撃ったことがなく、旧友である石田から依頼を受け、標的の行動をリサーチするだけだった。しかし、石田が中国系のヒットマンから命を狙われたことから、市川にも身の危険が迫る。
石橋蓮司のほか、大楠道代、岸部一徳、桃井かおりと日本映画界を支えるベテラン俳優陣が顔をそろえる。
「チア・アップ!」(7月3日公開)
平均年齢72歳のチアリーディングチームの奮闘を描いたダイアン・キートン主演のハートフルドラマ。
のんびりと余生を過ごすためにシニアタウンに越してきたマーサ。「昔、チアリーダーになりたかったの」と、口にしたことから、お節介焼きの隣人シェリルにたき付けられ、チアリーディングクラブを結成することに。オーディションを開催するが、参加したのはチア未経験者どころか、腕が上がらない、膝が痛い、坐骨神経痛持ちの8人。周囲からは絶対に無理とバカにされ、笑われながらも、互いに励ましあいながら練習に打ち込んでいった。特訓を重ねた結果、チア未経験の素人たちが全米チアリーディング大会へのエントリーと進んでいくが……。
主人公マーサ役をダイアン・キートンが演じるほか、「世界にひとつのプレイブック」のジャッキー・ウィーバー、「ジャッキー・ブラウン」のパム・グリアらベテラン女優たちが顔をそろえる。
「のぼる小寺さん」(7月3日公開)
ボルダリングに夢中な女子高生を描いた珈琲原作の人気青春漫画を「ロボコン」「ホームレス中学生」の古厩智之監督が実写映画化。「けいおん!」「聲の形」「若おかみは小学生!」などのアニメ作品で知られる吉田玲子が脚本を手がけ、「ルパンレンジャーVSパトレンジャーVSキュウレンジャー」で活躍した元「モーニング娘。」の工藤遥が映画初主演を務めた。
クライミング部に所属する女子高生の小寺は壁を見るとウズウズしてしまうほどボルダリングのことばかり考えていた。卓球部に所属する近藤は、隣で練習する小寺からなぜか目が離せずにいた。小寺としゃべれることがうれしい近藤は、次第に彼女に惹かれていった。しかし、そんな小寺を見つめているのは近藤だけではなく……。
小寺役を工藤遥、近藤役を伊藤健太郎が演じるほか、鈴木仁、吉川愛、小野花梨らが脇を固める。
「Homemade/ホームメード」(6月30日NETFLIXにて配信)
新型コロナウイルスの感染拡大により多くの人が外出自粛を余儀なくされる中、各国の映画監督が自宅にある機材のみで撮影した短編集。
世界的なパンデミックにありながら持続する映像制作の巧みな技やクリエイティブの力を称揚する目的で、イタリアの映画製作者ロレンツォ・ミエリや「NO」で知られる映画監督のパブロ・ララインらが世界中のクリエイターに参加を呼びかけ。「レ・ミゼラブル」のラジ・リ、「グレート・ビューティー/追憶のローマ」のパオロ・ソレンティーノ、「パーフェクト・センス」のデヴィッド・マッケンジー、「存在のない子供たち」のナディーン・ラバキー、「ナチュラルウーマン」のセバスティアン・レリオ、「カセットテープ・ダイアリーズ」のグリンダ・チャーダ、女優のクリステン・スチュワートやマギー・ギレンホール、日本からは河瀬直美ら18人17組が名を連ねた。
「ハミルトン」(7月3日Disney+にて配信)
2015年にオフ・ブロードウェイで初演されるや絶大なる支持を受けてブロードウェイに進出し、「もっともチケットが取れない舞台」といわれる人気を誇り、2016年にはトニー賞の16部門にノミネートされ、最優秀ミュージカル賞を含む11部門を受賞したほか、ピュリッツァー賞の戯曲部門にも輝いたアメリカ合衆国建国の父ともいわれるアレクサンダー・ハミルトンの生涯を、ヒップホップやR&B、ソウルなど多彩な音楽によって綴るミュージカルが映画版として登場する。
映画版は、2016年6月、ブロードウェイのリチャード・ロジャース・シアターにて上演されたオリジナル・キャストによる舞台を撮影・編集した作品となる。出演者は生みの親であるリン=マニュエル・ミランダをはじめ、「ブラインドスポッティング」のダヴィード・ディグス、「オリエント急行殺人事件」のレスリー・オドム・Jr.、「ボクらを見る目」のクリストファー・ジャクソン、「アナと雪の女王」クリストフ役のジョナサン・グロフ、「ルイスと不思議の時計」のレネイ・エリース・ゴールズベリイら、その後の活躍めざましい顔ぶれだ。舞台を演出したトーマス・ケイルが監督を務め、映画のために上演3回分を撮影したほか、無観客での収録も行われている。
本来は2021年10月15日にアメリカで劇場公開の予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ブロードウェイの劇場は2020年3月から閉鎖されており、再開の目処は立っておらず、しばらく「ハミルトン」の実際の上演を観ることはできない状況となっており、公開を大幅に早めて、全世界での配信に踏み切った。なお世界同時配信を実現するため、配信開始のタイミングでは英語音声の映像のみが公開され、日本語字幕版の配信に後日となる。
というわけで、今週は以上。閲覧ありがとうございました。